第28話 スペルマスター(2)
(1)
『闇よ――』
凍馬の詠唱に、“銀のブレスレット”が呼応して強い光を放つ。それは、そこらじゅうから闇魔法分子を集めては、主である凍馬の下に帰属させる。これにより急激に闇魔法分子の集約率を落としたエリオは攻撃呪文の詠唱を中断し、ここで初めて結界呪文(バリアー)を張り、凍馬の様子を観察するように眺めていた。時折、閃光が周囲のユーザー達を挑発するように宙を走る。
「……。」
しかし、兄の詠唱を目の当たりにしたイェルドは、ぞっとするような寒気を感じ、自分の詠唱をためらってしまっていた。
「(駄目だ。これでは違いすぎる!)」
何者かにそう諭された訳でもないのに、強いコンプレックスを感じていた。
「(私では、あのようなチカラを引き出せない)」
凍馬の腕に強く光る“銀のブレスレット”。それが彼の詠唱を助けているのだろう。ただでさえ世界屈指のユーザーと評されている兄が、“ブレスレット”のチカラにより、更にその魔法キャパシティーを高めてしまったのだ。イェルドには、今の兄がやたら化け物じみて見える。
「イェルド?」
ランが不安そうに声をかけてきた。彼女も、イェルドと同じ不安を感じていたのだ。ただ、『勇者』への“期待”が、此処での唯一の打開策である以上、イェルドもやらないわけにはいかなかった。
「……やってみます。」
何時かのように明護神使が現れて、“光のチカラ”を導いてくれれば、と淡い期待を込めてイェルドも詠唱を開始した。
しかし、実際にイェルドが詠唱の途中に思い起こしたのは、明護神使ではなく、
“救いの光は自らが創り出すものだ。まして、『光の勇者』ならば”
そう言ったきり姿を眩ました、何時ぞやの老婆の言葉だった。
『光よ、その掃滅のチカラを経て、此処に降臨せよ!』
――その瞬間、息の詰まるほどの重苦しい静寂が、この場にいた全員の胸を突き抜けた。イェルドの詠唱により発現した光魔法分子が、蜘蛛の子を散らすように凍馬の闇魔法分子に染み渡ってゆく。
「うっ!」
強い痛みを感じて、イェルドは自分の両手首を確認した。いつの間にか、白いサープリスの袖が真っ赤に染まるほど出血していた。驚くままに双子達が顔を見合わせた瞬間、結合した“光と闇”の結晶が過反応し始め、爆音爆風と熱を放ち始めた。
漸進的に負のエネルギーを放出しながらも、魔法分子結晶自体は収縮していく。
「(竜巻?)」
体重の軽いランはこの爆風に耐え切れず、吹き飛ばされながら、一時、後方に避難する。
「止めておけ!」
そう言ったつもりだったが、爆音と爆風に声がかき消されてしまった為、凍馬は首を横に振って弟に合図を出した。
イェルドの手首の出血があまりにも酷い。これ以上弟に詠唱を続けさせると、失血により絶命する危険さえありそうだと凍馬は判断した。イェルドは素直に詠唱を解除する。その僅かなタイミングで、
『冥府の覇王に血の杯を(デアプルート)!』
凍馬が魔法分子結晶をエリオに向かってねじ込んだ。合成失敗とはいえ、まだこの呪文によって捻出された負のエネルギーが残っている。この膨大な量のエネルギーを無駄にする手はないのだ。せめて、その負のチカラが完全消失する前にエリオに届きさえすれば、幾らかのダメージを彼に与えてくれるだろうという計算である。
「(それにしても――)」
凍馬は、弟の安否を確認する。合成呪文の解除・凍馬の攻撃呪文の詠唱終了と同時に、イェルドはとてつもなく大きなチカラ(或いは竜巻の風だっただろうか)に弾き飛ばされ、バルコニーの隣にある部屋の壁に叩きつけられたのだ。
「イェルド?!」
駆け寄った兄の声に、イェルドはすぐに反応した。そこで“大丈夫”と言えれば良かったのだが、血まみれの法衣の袖と関節を無視して折れ曲がった4本の指を見られてしまっては、何の説得力も無いだろう。
「!」
同じく、イェルドを心配して駆け寄ってきたランの目が、絶望的な光景を捉えていた。
「野郎、効いてねェな」
ランと同じ光景を見た凍馬も、一つ溜息をついた。
「随分と、古代的な魔法だが、」
僅かに残った辻風が土煙を巻き起こして視界を遮っている。強い照明の光が彼の陰だけを不気味に照らしていた。
「純粋すぎて、危険な魔法だ」
エリオの殺気が高まっていく。今のうちに、凍馬はイェルドに回復呪文(ヒール)を促す。
舞い上がった埃塵が落ち着き、エリオの姿が露になった。
先の凍馬の攻撃呪文は、結界呪文(バリア)では防ぎきれなかったのだろう、エリオの右半身に幾らかの損傷があった。
「正直、畏れを感じた――お前達は厄介だ」
“絶対元素”を支配する術者。そんな存在(もの)が敵に回ってしまっては、できる仕事もできなくなってしまう。彼等が与えられた“チカラ”を使いこなせない今のうちに、潰しておく必要がありそうだ。フロアは、再び強烈な殺気にさらされた。一つは、勿論、エリオのものである。もう一つは……
「やってやろうじゃない!」
ランは剣を取った。そう、ここで負ける訳にはいかないのだ。これまで祖父と『勇者』が構築した秩序体系に守護されてきた光の民の世界を、同じ闇の民の恣意的な権力で奪って良い筈が無い! そして、何よりも、
「他人ん家のモン、パクったコソドロに、偉そうに“スペルマスター”名乗られて黙ってられるか!」
ヴェラッシェンド帝国の第一皇女は、自力救済も辞さない構えだ。
「その“他人ん家のモン、パクったコソドロ”に『勇者』を名乗らせてるお前は何なんだ?」
凍馬はこっそり突っ込みを入れておく。
「兄さん、……」
小さく、イェルドが声をかけた。
「分かってる。お前は早く指を繋げておけ」
凍馬はイェルドを庇うように前へ出て、呪文の詠唱を開始した。弟が言わんとしている事など、よく分かっている。彼の治療の間は、例え嫌でも必然的に凍馬に回ってくる仕事があるのだ。
『瞬速呪文(クイック)!』
凍馬の声と同時に、ランは走り出した――そう、ヴェラッシェンド帝国第一皇女であるランの攻撃補助と守護。これを怠れば世界的な損失を出すことになるのだ。
「(この姫なら、自分で自分の身くらい守れるだろうに)」
凍馬は何度となくそう思っているのだが、それを生業として給料をもらっている立場の弟(他、ヴェラッシェンド帝国の官憲達)に悪い気がして、切り出さないことにしている。
「くっ!」
ランの瞬発力と凍馬のクイックの詠唱の効果で、エリオの呪文を切り出すタイミングが遅れた。
エリオは“スペルマスター”というだけあって、世界的なハイユーザーの中でも頂点に君臨する魔法キャパシティーを持っている。その分、非魔法攻撃に対しては免疫力が少ない。彼に隙があるとすれば、もうそこだけしかない。
先刻同様、圧縮した魔法分子で両腕をプロテクトしながら攻撃防御するエリオだったが、ランの剣の刃はそのプロテクトすらも切り裂き始めていた。戦いながら、彼女はこの強度で圧縮された魔法分子の切断方法を編み出していたのだ。皮膚を捕らえ始めたランの刃を見たエリオは、その切っ先に『炎』属性の負の魔法分子が圧縮されていることに気付いた。
「(この女……オレの真似を!)」
エリオは簡易魔法球を打ち、何とかランとの間合いを作った。腕に焦げ付いた傷口を見た彼は、一度冷や汗を拭った。
「クソッ!」
ランは溜息をついた。これでは埒が明かない。治療しながら戦いを見守っていたイェルドも、それにはとうに気付いていた。
剣では殆ど大したダメージを与えることはできないが、エリオに致死レヴェルの攻撃呪文を使われずに済む。逆に、こちらが魔法を使用すれば、エリオにも隙を与えてしまう。彼に“スペルマスター”としての能力を遺憾なく発揮されてしまえば、こちらはひとたまりも無いだろう。
「……?」
ふと、イェルドは自分のもたれている壁から聞こえてくる水の音に気が付いた。
「(水道……か)」
(2)
部屋に戻ってきたネハネは、アイスティーの入ったグラスが自分のデスクに置いてあるのに気が付いた。部屋を見渡すまでもなく、
「お、か、え、り」
と、明るい声を掛けられたので、そのアイスティーを入れた者が誰なのか、彼女はすぐに分かった。
「一体、どういう風の吹き回しかしら?」
ネハネは、横目でその青年に一瞥をくれた。
「今回、オレ何にもしてないから、せめて徹夜で仕事してるネハネさんの雑用でもしようかなぁって」
黒いクセっ毛の髪を掻いて、アユミがニッと笑った。ネハネは、「そう、」と言っただけの素っ気無い御礼の言葉を返し、デスクに置いてあったグラスを手に取り、そのまま作成中の資料に眼を通し始めた。
この基地は非常事態真っ只中ではあるが、その彼女の態度は全くいつもの通りなので、アユミもそのまま話を続けた。
「連中どうだった? 何とかなりそう?」
このアユミの質問にも、ネハネは資料を見つめたまま、
「何とかならなくても、何とかしなきゃどうしようもないでしょう?」
と、素っ気無く答えただけである。これでは流石のアユミも、「それはそうだ」と苦笑いするしかなくなってしまった。
そのまま暫くは沈黙が続いた。ソファーに寝転ぶアユミの耳にも、階下からの爆発音がよく聞こえてきた。
これは誰かの魔法球が壁にぶつかった音。
これは誰かと誰かの魔法球が相殺し合った音。
此処からでは何も判りはしないのだが、大概予想は当たっている――不利はどちらかも、勝者は誰かも。
「気になるの?」
ふと、ネハネが訊いてきた。彼女の手には、まだ一口も口を付けていないアイスティーのグラスが握られたまま。
「……分かってるクセに」
今度は、アユミが言ってやった。いわゆる“秘書官”という仕事についてはよく知らないが、彼女は、こちらの方が驚いてしまうくらい自分のことを全て見透かしてくれている。
ただ、彼女達“秘書”お得意の「気配り」などと言うものは、自分のような工作員の「計算高さ」とはほぼ異なる、「思いやり」に由来しているのだろう。標的(ターゲット)の組織内部に潜り込み、敵を組織ごと壊滅に追い込むという仕事をしてきたアユミには、彼女が自分とはまるで対極にいる気がしてならなかった。
「ええ、分かっているわよ。貴方の考え付きそうな事くらいは」
カラン、と氷と氷がぶつかる音がして、ネハネの手の中にあるグラスが傾いた。
――アイスティーは一気に飲み干された。
「ネハネさん……」
アユミはソファーから飛び起きた。ヒールの音がソファーに近づいてくる。
「間違いなく、順調に行けば、侵入者は全員死ぬわ」
ネハネは、アユミと対峙するように、ソファーに座った。
「助けに行きたいんでしょう? 凍馬達を」
「ネハネさん、オレは……」
自分が何処に居るべきなのか――それは、正直、アユミにも分からなかった。しかし、どうしても、彼女には解って欲しくて、アユミは言ったのだ。
「貴女やエリオさんのこと、裏切るつもりは無い」
階下では、闇魔法分子が負のチカラを引き寄せて爆発している。此処に居る二人には判りはしないのだが、大概それは当たっているのだ。ましてや、顔をつき合わせてこの部屋に居るお互いの事など。
「何だか、少し眠くなってきたわ」
ネハネはソファーに横になった。
「早速だけど、貴方に雑用を頼もうかしら」
デスクの上にある封筒に入っている資料をシュレッダーに掛けておけ、とネハネは命じ、アユミはそれを承諾した。
「アユミ、」
重たい瞼を何とかこじ開け、アユミの眼をちゃんと見て、ネハネは言った。
「アリガトウ」
「え?」
驚いた表情を向けたアユミに、
「マズイお茶だったわ」
少しだけ笑って見せた彼女は、そのまま力を失い、ソファーに沈み込んだ。
「……。」
頼まれた封筒を抱えるついでに、デスクにポツリと佇んでいたグラスの底に僅かにあったアイスティーを、アユミは左手の食指ですくって舐めてみた。
「苦っ!」
それはそれは笑えるくらいの苦味を感じた。
アユミは懐から手紙を取り出し、何やらペンで走り書きを加え、それをネハネの右手にそっと握らせた。
「ごめんね、ネハネさん」
彼はそう呟くと、部屋を出て、扉を閉めた。
(3)
「許せ……」
ビルフォードは顔見知りの躯を借りて現れたアンデッド達に一つ詫びを入れると、構えていた剣を大きく振り上げ、アンデッド達に叩き付けた。
「(これが、光の民の剣術)」
結界内でヒール(回復呪文)の詠唱を唱えるイオナは、ビルフォードの剣の勢いに言葉を失う。
彼の周りに群がっていたアンデッド達が一斉に散ったかと思いきや、彼等の殆どが、もうその時点で剣圧によって粉砕されているのだ。“アンデッドの攻略法なら、トーマから聞いている”と、彼は言っていたが、それにしても、彼の剣は、まるでイェルドの巨大鎌のように、あっさりとアンデッド達を木っ端微塵にしていく。
「(光の民は魔法に頼らなくても良いのね)」
“光の民は魔法を使えない”というのは、どうやら重大な偏見であったようだ。
「さて……」
ウィッチ(魔女)2体が魔法を打つタイミングで、イオナの作る結界の中に戻ってきたビルフォードは、その結界に魔法球が吸い込まれていくのを興味深そうに眺めながら、此処の打開策を練っていた。
「ウィッチには、殆どの魔法が効かないわ。有効なのは、大地属性魔法か物理的な攻撃よ」
勿論、前者を扱う者など此処にはいないので、必然的に後者を手段とするしかない。
「物理的攻撃……剣では近付けなさそうだな」
ウィッチ達が魔法を打つ間隔はかなり短い。間合いを詰める間に、魔法攻撃を受ける事になるだろう。これについては、ウィッチを適所に配置したネハネの思惑通りになってしまった。
「遠方から物理的手段で攻撃する為の武器が必要ね」
「イェルドからそのような武器を預かってくれば良かったな」
ウィッチ達の攻撃は止んだが、イオナとビルフォードも動きをぴたりと止めてしまった。イオナが張っておいた強力な結界に、弾かれても弾かれても押し寄せてくるアンデッド達の不毛な攻撃を観察するのもそれはそれで勉強にはなったが、二人の耳に、階下からの爆発音が聞こえてきたので、のんびりと考えていられなくなってしまった。
「一か八か、やってみなきゃね」
イオナが決断を下した。怪訝そうな顔をして見せたビルフォードに、「貴方だけに良い格好させてられないのよ」と前置きして、彼女は次のように説明した。
「バハムートという竜を召喚してみるわ。ちゃんと攻撃してくれるかどうかは分からないケド、ウィッチ(魔女)達の詠唱の邪魔くらいはしてくれるんじゃないかしら」
「ウィッチ達の注意が逸れたところを、仕留めれば良いワケか」
ビルフォードはすぐに理解してくれた。イオナとしては頼もしい限りだ。
「召喚呪文の詠唱を始めて、およそカウント20でこの結界が消えるわ。覚悟は良いかしら?」
「勿論」
――敵の数、アンデッド十数体。ウィッチ2体。
二人は一斉に結界から出た。
『天空ヲ統ベシ我等ガ神ヨ、我ガ祷リニ応エ給エ……』
イオナに襲い掛かるアンデッド達を片付けるビルフォードの耳にも、彼女の詠唱は聞こえてくるのだが、その詠唱は彼には全く理解できない古代語で綴られていた。
20を数えるうちに、結界が消える。
そのタイミングを計ったようにウィッチ達から放たれた魔法球を、ビルフォードは左腕のプレートアーマーと若干の忍耐で受け止めると、イオナと2体のウィッチを結んでいる魔法軌道から、一度逃れた。
『召喚・バハムート!』
イオナの詠唱が終結したと同時に、六芒星が宙に発現し、そこから体長10メートルはあると思われる、大きな竜が現れたのだ。防火扉で囲まれたこのセルは、巨体の彼にとっては、かなり窮屈なのであろう、首を下げて尾を丸めていた。
「……ダメね」
イオナの懸念通り、折角召喚したバハムートであったが、ウィッチ達を攻撃する様子は全く見せなかった。
「いや、充分だ」
ビルフォードからそんな声が聞こえたと思ったら、次の瞬間にはもう、ウィッチ達の断末魔が聞こえてきた。
「流石だわ!」
イオナはレッドキャッスル帝国軍元帥に拍手と賛辞を送った。ビルフォードは、バハムートの陰を利用して予め間合いを詰めていたようだ。突然のバハムートの出現で動揺したウィッチ達の攻撃が止まったところで、彼は素早く止めを刺してくれていた。
「まあ、お互い様だ」
ビルフォードは、窮屈そうに屈んでいるバハムートの足元を指差した……二人の周りを取り囲んでいたアンデッド達の残骸が、バハムートの足の裏と床にへばりついている。
「此処はこれで終了だ」
ビルフォードは剣を収めた。
――しかし、問題は解決したわけではない。
「どうやって、地下5階に行けば良いかしら」
二人の周りは、防火扉と壁に囲まれてしまっている。勿論、ラン達がエリオと戦っている場所も、此処と同じような場所だろう。
「壁をぶち破りながら進むわけか?」
「3日はかかりそうね」
そう、二人は攻撃呪文を全く使うことができない。
「参ったな……」
ビルフォードはとりあえず、そこらじゅうの壁や扉に開きそうなものがないかをチェックする。イオナは、バハムートの召喚呪文を解除した。
「?」
踊り場横の小ホールの壁を探っていたビルフォードが、向こう側から聞こえてくる微弱音に気が付いた。
「水の音……水道だな」
サルラ山脈M・A(マウント・アッバス)を流れる川は細く、急である。
地下18階建てという巨大プラントを維持するために必要な水量を確保するには、この施設内に充分な貯水設備を置かなければならなかった筈だ。
「貯水設備か」
「普通に考えれば、それは最上階にある筈よ」
水は上から下に流れる――此処に水道があるとすれば、それは上階から下階に流れていると考えられる。
「地下5階までは落ちてくれてるわよね、きっと」
思わぬ抜け道を見つけた。が、それにしても、分厚い壁に行く手を阻まれている。
「バハムートをもう一度召喚して、手当たり次第に暴れてもらうしかないかしら」
イオナが再びバハムートを召喚しようとした時だった。
「……!」
上の階から爆発音が聞こえてきた。上の階――まさか、ネハネが再び此処に降りてきたのだろうかと思った二人は、来るべき攻撃に備えて身構えた。しかし、二人が次に聞いたのは、男声の詠唱だった。
『紅き雪の蒼き殺意(マゼンタ)!』
詠唱の終結と同時に水魔法分子の気配を感じた。そう思ったら、防犯扉が粉々に砕け散り、間も無く、大きな帽子を被った青年が、ひょっこり顔を覗かせた。
「?」
「あ!」
黒髪のクセっ毛のその青年とは初めて顔を合わせたビルフォードの代わりに、イオナが彼の名を口にした。
「貴方は、アユちゃん!?」
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