30. 依頼選び #2
杖を抱え、掲示板の前で唸る。
今まではシェロイ集めとウサギ狩りくらいしかやっていなかったから、何をやればいいのかわからない。
どうせならこの杖を活かせる依頼がいい。多少戦闘系の依頼はあるが、どれがいいだろうか。
「ヒロキ、何やってんの?」
「もう戻ってきたんだ。早いな」
「別にうちから武器持ってくるだけだしね」
剣と盾を装備したリーサの服装は別にさっきと変わっていないが、なんだか様になっているように見えた。
やっぱり普段から使ってると自然と似合うものなんだろう。
「ところで、わたしは5級受けないよ」
「え、俺5級しか受けられないけど…まだ1ヶ月経ってないし」
「大丈夫。わたしとパーティーを組めば上も受けられるようになるから。自己責任ではあるけど」
「パーティー?」
「あれ、知らない?ガルゼと組んでたんじゃなかった?」
「いや、特に組んでないが…というかパーティーって何だ?」
異世界で冒険者でパーティーと来たらもうわかったようなものであるが、念の為訊いておく。
「パーティーは、冒険者同士が一つの集団を組んで一緒に依頼をこなすもの。3級以上の依頼には強い動物とか魔物とかが相手になるものもあるからね」
「あー、なんか辞書に載ってた気がする」
「載ってたね。読んだ覚えあるよ」
リーサは依頼を探してか視線を彷徨わせている。
かと思うと、おもむろにある4級依頼を指した。
「問題です。この依頼はどういう依頼でしょう?」
「えーっと…」
依頼の概要部分を記したであろう箇所に目を通す。
「魔物化したアルスレージカの討伐かな?1体あたり990ガットの報酬で、2人以上のパーティー推奨」
「おぉ…正解。辞書読んだだけで、よくそこまでできるね…」
「勉強は嫌いじゃないしな」
そもそも、勉強が嫌いだったら、大魔法理論を作るために物理やら何やらを勉強することはできなかっただろう。
「で、それを受けるのか?」
「うん。今まではわたし1人でやってたから、ああいうのは受けられなかったんだよね。ガルゼたちを邪魔するのも悪いし」
「こういうのって1日にどれくらい稼げるものなんだ?」
「今までは3000ガットくらいかな。毎週末に6000ガット稼いでる」
「となると…」
この世界の暦は30日×12ヶ月=360日。週末はだいたい100日くらいだろう。
他の休みを一切考慮しないで単純に考えれば…
「年収30万くらい?」
「計算はっや…だいたい正解。年に28万ガットくらい稼いでる。でも、どんなに節約しても食費が11万くらいはかかるし、今年は入学金に5万取られたし、勉強するための道具とかも揃えてたら2万くらいは吹っ飛んだ。…貯金もしなきゃいけないから、ホント、ギリギリだよ」
「じゃあ、その分稼がなきゃな…2人だから、最低6体か」
「その辺にいてくれると助かるけど…」
「ちょっと心配だし、シェロイ集めとアルスレーウサギ討伐もやるか」
そう決めて、俺たちはギルドをあとにした。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます