25. 夕食

 5日間、朝からガルゼと共に5級依頼を受け、放課後帰ってきたリーサと言語を勉強する日々が続いた。

 冒険者業のほうは、シェロイを集めつつウサギを狩っていたら1日1000ガット前後は稼げるようになり、少しずつお金が貯まってきた。

 食費とかも計算に入れると、自由にできるお金は7000ガット程度ある。とりあえず、お金に困るということはなくなるはずだ。リーサやガルゼに何か奢れるかもしれない。

 言語の勉強のほうは、リーサに無理を言って辞書を片っ端から何度も音読してもらい、言語――大陸共通語の語彙はなんとなくわかるようにはなった。

 文法も完全とまでは言えないが、もう何度か復習すればある程度は身にはつくだろう。



 レストランで、俺とリーサとガルゼの3人で夕食を食べる。

 たった数日だが、なんだか見慣れた光景だ。

 そんな感慨に浸っていると、リーサが口を開いた。


「そうだヒロキ、明日わたしと依頼受けに行かない?」

「俺は別にいいけど。ガルゼは?」

「俺はあいつらと依頼受けに行ってくる。最近やってなかったしな」

「決まりね」

「しかし、突然だな」

「別に突然じゃなくて、毎週末行ってるのに誘っただけ」

「毎週末?」

「わたしもね、安いとはいえ学費稼がないといけないから…」

「あー…」


 遠い目をしたリーサに、俺はどう反応していいかわからなくなった。


「ガルゼから話は聞いてる。とりあえず、ヒロキがわたしの足手まといになることはない。それは確実」

「信頼してくれてんな」

「でも、本格的に戦闘するとなると、そろそろ魔道具がいると思う」

「魔道具なぁ…」


 この間教えてもらったところ、やはり魔道具は俺の考えたMCDATと同じようなもので、魔法の行使を簡単にするための道具らしい。

 その仕組みは単純なもので、本や杖といった道具に魔法陣が刻み込まれているだけだ。

 人によってはそこに詠唱や魔法手型を加えるらしい。


「どんな魔道具があるのかわからないし、いくらくらいするのかもわからないな」

「じゃあ明日一緒に見に行く?」

「いいのか?」

「どうせ、身分証を書き換えるために市役所行かないといけなかったし。ついでにお店見るくらいはいいでしょ」

「助かる」

「別に。ヒロキにはいろいろと恩があるしね」

「ヒロキ…たった一週間で女の子に恩を売りまくったってのか…」


 ガルゼが白い目で見てくるが、事実なので言い返せない。

 でもその原因の一端はそっち側にあるのだから、と思いつつ抗議の視線を返した。


「助けてもらった以上は、可能な限り恩は返すつもり」

「律儀だねぇ…」

「俺もヒロキにしっかり恩を返さないとな。騎士団に突き出されたくねぇし」

「ぶっちゃけ俺は騎士団が何かすらわかってねえけどな」


 3人で笑いあうアンバランスなメンツの食事は、のんびりと進んでいった。

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