19. 依頼選び

「ほら、ここが最下級…5級依頼の掲示板だ。こっちはギルド常設依頼、こっちは普通の依頼」

「なるほど」


 全然読めねえ。

 依頼の報酬とかが書いてあるのは、数字があるから何となく分かるけど。5級の報酬、多くても200ガットとかそんなもんか…


「ん?これ、報酬が高くないか?」

「え?読めるのか?読めないって聞いてたが」

「数字だけはちょっと先に学んでたんだよ」


 指差した先にあった依頼の報酬は380ガット。

 これだけ2倍近い値段だ。


「珍しいな、これ4級・5級どっちにも出されてるぞ。どれどれ…『魔物化したアルスレーウサギ討伐…1体380ガット』だとよ。場所は兄ちゃんが拾われてきた森の中っぽいな。どうやら、普通のアルスレーウサギの持ってる木を齧る習性が魔物化したことで激化したらしい。それもわりと高級な木ばっか食うから業者が困ってるんだと。で、少しでも数を減らすために倒してほしいということらしい」

「魔物か…」


 魔物。

 生物が自然に存在する高濃度の魔素にさらされたとき、生物は魔物へと変質することがある。そして生物が繁殖するとその形質は子へと受け継がれる。

 魔物化して現れる性質は様々だが、一般的なのは身体能力の向上である。俺の設定では、ざっくり言えば体内の魔素の流れが筋肉に作用するということになっている。

 人間には身体能力向上の性質は現れず、かわりに魔子循環の効率向上や思考と魔法の直結という性質が現れる。

 脳内魔法陣の展開は後者の性質があったからできたことだ。

 …それはさておき。


「ウサギ狩りはそんなに難しいのか?」

「難しいわけじゃなさそうだが…もともとこのウサギはアルスレー地方全体に散らばっているらしい。マジで被害がひどいのはもっと別の所で、エルディラット周辺にはそこまでいないらしい。ただ、被害が出てるのも事実ではあるから報酬を上げて人を釣ってる…って感じだろ」

「となると、コイツ狙いで行くのはやめたほうがいいのか?」

「だろうな。一発当てて大儲けってほどの金額でもねえし」

「うーん…なんかおすすめある?」

「魔道具も持ってないような奴ができるのは…これか」


 ガルゼは常設依頼の一つを指差した。

 花のイラストが描かれている。


「シェロイという花の採集依頼だな。花びらに薬効があって、大学の薬類研究室が欲しいってさ。報酬は花1本…7ガッドだってさ。まあ数があるから大丈夫だろ」

「それやるよ」

「よしきた」


 俺とガルゼはカウンターで依頼を受ける旨を伝え、カードに記録してもらった。

 そんなICカードみたいな技術があるのかと驚いたが、前文明の発掘品をコピーしたものと知るとなんだか納得に達した。

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