俺の考えた魔法理論が異世界で使われていた件
キューマン
プロローグ
1. 理論完成
キーボードの音が、暗くなった部屋に響く。
画面の文字列が瞬く間に移り変わっていく。
それをどこか他人事のように捉えながら、俺は手を動かしていた。
最後の一文を書き終え、Enterキーを押す。
「できた…!!」
喜びがじわじわと湧き上がる。
深夜なので抑えたが、すぐにでも叫んで駆け回りたい気持ちだった。
冷静に文書を保存し、クラウドにアップする。
そして、SNSに一言。
「大魔法理論、最後の一冊が完成しました、っと…」
投稿にはすぐにいいねが何件もついて、「おめでとう!!」「待ってました!!!」「無料は懐が広すぎだろ金取れ」と称賛が飛んできた。
それらの文字を見ると、自分はやり遂げたんだという気持ちが広がる。
「おっと、喜んでないでちゃんと公開しなきゃ」
意識するために独り言を口にしながら、俺は文書に公開設定をして、リンクをSNSにアップした。
それと同時に、えげつないくらいの眠気が襲ってくる。
「疲れた…」
5年かけて完成させた、魔法を科学的に考察して作り上げた架空の理論。
それが大魔法理論である。
魔法の発動に関わる粒子から魔法陣の仕組み、魔法発動の地理的条件や生物と魔法の関係性まで、思いつく限り全てをまとめた文書数十冊。
書き上げて公開するたび、インターネット上の創作コミュニティに所属する人々は、自らの創作の設定にそれを盛り込んでくれた。
中には設定の矛盾を目ざとく見つけ、指摘・修正してくれる人もいた。
そのような修正を取り込み続けて、今、ようやく全ての文書が完全な状態で公開された。
最後の方はとにかく一秒でも早く完成させたいという思いから、睡眠時間を削っての作業になっていた。
さすがにそのツケが回ってきたらしく、俺はキーボードの上に倒れ込んだ。
もういい、明日頬にキーボードの痕がついていたって構うものか。
眠気の前には煌々と輝くブルーライトすら無力で、俺の意識は急速に闇へと吸い込まれていった。
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