混夢裸帰り

@kyudo

第1話 祖父からの罰

 こんな夢を見た。

 夕方だろうか、我が家の応接間だ。

 死んだ祖父が目の前にいる。

 俺は神棚の方…上座に座らされ、祖父の話を聞いている。


 祖父の目は普通じゃない、晩年、認知が入っていたときの ここではない何処か を見ているような目をして…『言語』を発している。


 どうやら俺を遠方からのお客様と勘違いしているようで、地元つまり我が家がある地域の自慢と自分自身の苦労話をしている。


 祖父の発している言語は、察するに昔の敬語なのだろう。

 お茶と羊羹が目の前にある。それを勧められた。


 ウンザリしていた。

 この妙な芝居の相手をしなければいけないことに。

 まったくやる気が無かったが、自分の祖父だ、適当に生返事をして相槌を打っていた。

……母に呼ばれた……

 応接間から長い廊下を通って母のいる台所まで一本道。


 本来ならば客になりきって目の前にいる祖父に一言断りを入れてから席を立つのが礼儀…というか理想だろうが……


 祖父は目を閉じ手懐かしそうに昔話なのだろう『言語』を発している。


 めんどくせえ


 母のところに行くか、なんの用事だろう。

 俺は祖父をそのままに席を立ち、廊下に出た。祖父には何も、一言も告げずに。

 

 認知入ってんだからベツに一人でしゃべらせといたってかまわないだろう。


 日頃の仕事で、年寄りとその年寄りの世迷い言を聞くのに疲れていた。

 身内には別にお愛想を振りまくことなんてない……

 廊下を歩いているとき、なんだか見えないものに後襟首を引っ張られるような感覚がしてきた。

 ヤバい

 そう思った。


 振り返った。

 祖父が腰を曲げたまま突っ込んできた。

 俺に体当たりしてきた。

 吹き飛ばされた。


 目が覚め、しばらく震えが止まらなかった……おじいちゃん、本当にごめんなさい。

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