趣味で瞑想してたら異世界にワープしちゃって帰ってこれません…
仲蔵
バイト帰り
コンビニの制服をロッカーにしまった百々子は俯き加減でそそくさと帰り支度を始めた。特に話し相手のいないこの職場では、百々子はドライな人間として振る舞うことに決めていた。仕事の話以外は一切口を開かず、仕事が終わったらすぐに帰る。
私は決して陰キャではない! そう自分に言い聞かせながら裏口から外に出ると、夜風が心地よかった。少し深呼吸をしたら、ふらっと目眩がした。
――疲れが溜まってるな……。
百々子は帰り道、普段は寄らない本屋に入っていった。目的は本ではなく、併設された文房具コーナーだ。授業で使うルーズリーフがもうすぐ無くなるので、そろそろ買っておかないといけない。職場でも買うことができたが、こっちの方が安い。
ふらふらと、生気の無い顔で本棚の間を通り過ぎ、文房具コーナーを徘徊する。一番安いルーズリーフを迷わず手に取ると、無心でレジに向かった。
レジ前に、話題の新刊コーナーが作られていて目に止まったのは、瞑想の本だった。横に手書きのポップで、『疲れているアナタに是非読んで欲しい!』と書かれていた。
「瞑想……」
そう呟いて、吸い寄せられるようにして、その本を手に取った。パラパラと立ち読みを始めると、レジの店員と目があった。
買うの? 買わないの?
そう問いただすような視線を感じ、百々子は若干気まずくなって、あんなに見られていたらもうこの本を売場に戻すのも申し訳ない気もするし、正直この本に興味もあるし、1000円くらいだったらもう買ってしまおうと意を決してレジに向かった。
「袋にいれますか?」
「はい」
「袋代、2円いただきます」
「え、ああ……はいお願いします」
本屋でも袋は有料化、そりゃそうか。普段本屋になど来ないから、少し違和感があった。
それでも少し瞑想に興味というか救いというか、そういった気持ちが湧き始めていた百々子は、はやく帰って本を読みたいと急ぎ足で家路につくのだった。
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