十和里山伝説「紡ぎの時計」第二幕 栞(しおり)
十和里山伝説「紡ぎの時計」
作者:神崎 小太郎
第二幕 栞(しおり)
※誤字脱字・構文など
>色鮮やかな短冊に願いごとを書いて、自分の思いを牽牛と織姫星に託す日がやってくる。
⇒「牽牛星と織姫星に」か「牽牛と織姫(の星)に」かですね。
> 今朝は母さんがたこ焼きを食べさせてくれた。彼女は関西の農家出身なので、
⇒「母さん」を「彼女」と書くと、ひとりの人物として認識しているようにとらえられます。
馴れ馴れしい感じがなく、やや突き放したような距離感ですね。普通の親子なら「母さんは関西の〜」と書いたほうが程よい関係ですね。また「食べさせてくれた。関西の農家出身なので、」と「彼女は」を省いてもわからなくはありません。ただ、ない場合は「主人公の勇希が関西の農家出身」ととられるおそれも出てきます。
ここは勇希と母の距離感を意識して直すか原文ママかを選択してくださいませ。
> 案の定、今日は久しぶりに夏空が青く澄んでおり、真っ白な入道雲が沸き立って、これまでの憂さ晴らしするようである。
⇒「沸く」は高まる、「湧く」はあふれ出る意なので、どちらかというと「入道雲が湧き立って」ですね。ただ「水があふれ出る」わけではないので、かな書きすることが多いです。
また「これまでの憂さ晴らしするようである。」は「憂さ晴らしをするかのようである。」が標準的な言い回しですね。
>定期検診では異常はなかったが、出血を伴う咳き込むことが心配である。
⇒「伴う」は連体形で、係り受けは「咳き込むこと」になるわけですが、文章として読むとやや違和感があります。ここは「咳き込みが」と名詞形にしたほうが自然です。
>定期検診では異常はなかったが、出血を伴う咳き込みが心配である。
> 今では別の学校に通っている女子大生で、俺より二つ年下の文学部一年生だった。
⇒「文学部一年生だった。」だと過去形で思い出話をしている形になります。あえて当時を思い出していることを強調するのであればこれでかまいません。
単に「文学部一年生だ。」とすると、思い出話でなく話の中で説明しているにすぎません。
このあたりは著者様の意図で選んでくださいませ。
> しかし薫は苦難に耐える強さを持っているのか、他人に弱みを見せることはしていない。
⇒「弱みを見せることはない」が基本形です。「ある」「ない」ですね。
そして「弱みを見せることはしない」が次の形です。「する」の否定形「しない」ですね。
なので「していない」は「している」の否定形になります。
ここでは基本形の「弱みを見せることはない。」が最適ですね。
>大学で医学を学んでおり、将来の夢は小児科のドクターになることだ。
⇒主人公が医学部という設定を脈絡なく書いているのでやや面食らいます。でも回収しないよりもよいのは確かなので、ここででも書かないといけませんね。
「学」の字が三つ出てくるので、ちょっと単調にも見えかねません。「大学」は場所だから直せません。そうなると「医学」「学んで」を工夫できないかです。
たとえば「医術を」にすると「医療」についての学問なのかなとわかります。もちろん「医療を」でもかまいませんね。
「学んで」は「習得」「修得」「修める」あたりになりますが、どれも大学で学んでいる最中であるニュアンスが出ません。ということは「学ぶ」はあきらめるしかないかなと思います。
「学」がふたつであっても「大学で医術を学んでおり、」が最適な表現になります。
ただし「どうせふたつ出てくるのなら、三つあってもいいじゃないか」という発想も当然できます。「二度あることは三度ある」ですね。
そこまで割り切れれば「大学で医学を学んでおり、」の原文ママでもなんとかなるかもしれません。そもそもここの表現ひとつで賞を逃がすとも思えませんしね。
また、なにか言われても「ここは『学』の字でリズムを出しています」で通用します。
寸評
薫との思い出を振り返る第二幕ですね。
彼女と過ごした時間を貴重なものとして丁寧な筆致で描けています。
著者様の筆致は、淡々とした中でも琴線を揺さぶり、鋭いメスのような鮮やかな印象を受けます。
これは長所ですので、さらに磨いていけば有力な武器になります。
逆に言うと、ファンタジーにもリアリティーが出てくるということでもあります。
それを良い方向に活かせば、書籍化も狙えますね。
ただ、リアリティーを突き詰めていったほうが、文学としての完成度も高まります。
単に流行りに流されるよりも、地に足の付いた作品を書くとよいでしょう。
公募に強い筆致だと思いますよ。
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