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臨海22世紀
作者 長宗我部 芳親
夢見るガイノイド編
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構文と誤字脱字など
> それは紛れもなく、ミオンとセーラの首に吊るされた海中時計に搭載された”システム"の警告音だった。
⇒確認なんですけど、「懐中時計」ではなく「海中時計」で合っていますか?
SFですから「海中時計」があっても不思議ではないのですが、それがために書き間違いか正しいのかが判別しにくいので。
> そしてついに、男の口から悲鳴ともつかぬ叫び声が上がり、意識が事切れた。
⇒「意識が事切れた。」と書くと語り手の意識が途絶えた印象を受けます。「意識が事切れたようだった。」と推測の形にすると、語り手はこの男ではなくなるので違和感が減ります。
> 鮮やかな翡翠色に輝く瞳。そこには既に人間の理性など残ってはいなかった。
⇒「残ってはいなかった。」と断定すると、先ほどの「意識が事切れた」と同様に男の頭の中を覗いているような印象を与えてしまいます。
ここもたとえば「そこにはすでに人間の理性は垣間見えなかった。」として外から窺っている書き方をしてみましょう。
> 二人に影を落として男が着地したのは、ミオンのすぐ背後であった。
⇒ここはこのままでもよいのですが、提案として。
「二人に影を落とした男が着地したのは、〜」とすると、着地する前に影を落としていたことになります。ここが「落として」になっていると、着地したときにも影を落としているように感じられます。それでよければ原文ママでもよいのですが、ここはミオンの背後に回り込んだのですから、影を落としたのも跳び上がっているときだけかな、と思います。
振り向いたが最後、ミオンの瞳に映るは迫り来る男の脚。
⇒「〜したが最後、」という表現は「進退窮まって結果負ける」ときに用います。この事典では負けるわけではないので、ちょっと大げさですね。
アストラモスは生きた身体に寄生し、その肉体の精神を完全に殺すことで宿主に成り代わることもできてしまうのだ。
⇒「その肉体本来の精神を完全に殺すことで〜」とするとわかりやすいかなと。本当は「その肉体に宿る精神を」としたかったのですが、すぐ後ろに「宿主」という語があったため、回避しました。
※構成と展開について
バトルシーンが今回の見せ場でしたので、丁寧に書けていますね。
ちょっと奇をてらった表現を目指して使い慣れない表現がいくつかあるようで、そこに違和感が湧いてくるのが少し惜しいですね。
ある程度は使い慣れた表現を用いて、「ここぞ」というところで奇をてらった表現に挑戦する。そのくらいの割り切りでもじゅうぶんに新鮮さを出せますよ。
作者様の伸びしろを考えると、今はあまり表現に苦心するよりも、物語そのものを面白くすることに注力したほうがいいですね。
物語そのものが面白くなると、小説賞やコンテストに近づけます。文章のうまさは面白さよりも評価が劣るので、追い求めるならまずは「物語の面白さ」のほうです。
これは数を書いて読み手の反応を見ながら変えていく部分でもあるので、「次にどのような展開にするか」をきっちりと決めたあとで、それをどのように提示していくかに腐心してください。
※寸評
バトルシーンの分量についてです。
本作はバトルシーンが物語の華ですから、当然バトルシーンを長めにとるのが正解です。
日常回とバトル回を交互に展開させるくらいでもよいでしょうね。
ただそれだけでなく、伏線を入れたり回収したり、急激な状況変化も入れたり。
緩急を心がければ、バトルシーンが主体でも、人間模様は描けるはずです。
そしてここ11まで、きちんとバランスがとれていますし、謎という伏線を入れておいてここで回収を始めているので、中だるみもなくてよいですね。
問題があるとすれば、「なぜミオンたちはアストラモスと戦っているのか」という根本が語られていないように感じるところでしょうか。
アストラモスを全滅させて地球を取り戻すのが目的なのか。アストラモスと共存するために脅威を少しでも減らすのが目的なのか。
なんのためにミオンたち海中保安庁が戦っているのかがわからない。
小説賞・コンテストだとそこが弱点になるかもしれません。
アストラモスによる地球の天変地異を語ったあとにでも、なぜ人類とアンドロイドはアストラモスと戦っているのか、についてネタバレしない範囲で言及しておくとよいでしょう。
たとえばアストラモスが人類を滅ぼそうとしている(ように感じられる)から、生き残りをかけて人類&アンドロイドが戦っている。
それならアストラモスと戦わないといけませんよね。
これは私が読み落としている可能性もあるので、もしきちんと書いてあったら的外れになるのですが、少なくとも私の記憶では明確な理由は書いていなかったと思います。
この点については後日読み返してみますね。
そこさえクリアすれば、公募の一次選考は楽に通過するレベルは確保できています。
表現であまり奇をてらわず「物語の面白さ」を追求していけば二次選考も通過できるはずです。
本作はバトルSFとしての面白さが存分に楽しめますから、アニメ化したときに躍動感のある映像が楽しめそうですよね。
こういった映像化したときに魅力が出てくる小説は、マルチメディア戦略を主導するKADOKAWAの小説賞やコンテストでは有利になります。
映像化で考えた場合、本作はアストラモスの炭化などである程度色彩が出ているのですが、もう少し積極的に色を書いていったほうが映像化しやすくなって、さらに映像化が捗ると思います。
最初からアニメを目指すのが難しい場合は、小説賞を獲って書籍になったときの表紙や挿絵が書きやすい表現を加えていくとよいですね。
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