04

 彼と媾合う日が被らないように。


 喫茶店で、会うようになった。


 錏瑚あこは、あの日以来コーヒーを飲まず。ココアばかり頼んでいる。


 萌莉吾めりあは。いつも、ブラックコーヒー。


「奥に、されるとき」


 日付の確認を終わらせた後。唐突に、めりあが話し始めた。


「痛く、ないですか?」


「え?」


 あこ。きょとんとしている。


「動かれるとき、ですか?」


「いいえ。ブラックコーヒーを出されるとき」


 二人の間で。それは、ブラックコーヒーという隠語になった。陰は、ティーカップで。媾合は、ティータイム。昼の喫茶店で、精だの陰だの言うのも、なんか違うなという認識で一致していた。


「痛い、ですか」


「はい。ティーカップの奥に、じわって」


「いえ。何も感じないです」


「あれ。そうなんだ。私だけなのかな」


 あこ。この前検索したやつを、履歴から引っ張ってきてめりあに見せる。


「奥に、感覚器官はないって」


「へえ。じゃあ、この痛いのは、なんなんだろう」


 めりあも、検索してみる。


「あ。これかもしれない。スポット」


 検索結果を見せる。


「痛いっていうのは、気持ちいいんですか?」


「いや、痛いだけですね」


「え、なんかやだなあ。ティータイムの最後が痛いのは」


「まあ、気持ちよくさせてもらってるので、最後ちょっとくらい痛いのは仕方ないかなって思ってます」


 コーヒーを飲んで。


「じゃあ、どうやって、終わってるんですか。ティータイム」


「終わらないです」


「え」


「終わらないです。わたしが満足して眠るまで」


「なんか、そっちのが痛そう」


「気持ちいいので、痛くはない、ですね」

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