プロローグ
「……社長、もう一回言ってもらってもいいですか?」
「俺の家に週末来いと言ったんだ。もう言わないぞ」
突如、不機嫌な内線によって呼び出された
「……冗談ですよね?」
「これが、冗談を言う人間の顔に見えるか?」
芽生の目の前に座る社長は、涼し気な瞳で芽生を射抜いた。
「見えませんけど……」
冗談じゃない。そう思ったのだが、芽生の複雑怪奇な表情をいとも簡単に見なかったことにして、勤め先の市原商事の社長である
芽生はただただ訳が分からなくて、痛み出した頭をかしげると、眉根を寄せて眉間に皺を深く刻んだ。
「で、やるのか、やらないのか? 俺はぐずぐずしてるやつが嫌いなのは、お前も知ってるだろ?」
「――やります!」
鬼社長と呼ばれる涼音に、たてつくことは事はよろしくないことだと、いくら鈍感な芽生でも分かる話だった。
「じゃあ、契約の印だ」
そう言ってスカーフと腕を掴まれて、あっという間に柔らかい何かに唇を塞がれた。それが、涼音の唇だと気がついた時にはすでに遅く、鬼社長の手中に見事に芽生は捕まえられてしまっていた。
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