第8話

一歩踏み出した。派遣先は、介護ばかりだった。しかし四の五のいっていられない。私は登録をすませ、派遣された現場で働くことになった。メモをとれと言われた。慣れない力仕事、汚物の処理、嫌であった。だが、日菜子をおもえば我慢できた。日菜子は毎晩ギターをかかえ、いつもの公園で歌っていた。私はいつも500円をチップにわたし、そのあと、牛丼やらカレーやらトンカツやら定食屋へいき奢るのが日課になった。もちろん身体の関係はない。日菜子の歌は少しずつ丸みをおびてきたように思う。出会った当初のトンがった世間を敵に回した歌いかたが変化していた。

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