街を旅する
春嵐
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目を閉じて。
街の景色。
駅前。
新幹線のホームを出る。段差がなくて、降りやすい改札。広めのエスカレーター。
目を閉じたまま。歩いていく。
迷わずまっすぐ進むと。バスターミナル。中央が吹き抜けになってて、なんか身を隠したり相手の射線を切ったりできそうな柱がいくつもあって。なんかわくわくする構造。
それを抜けていくと、駅前の分かれ道。
片方は、公園に繋がっていて。
もう片方は、病院に繋がっている。
どちらの通路を使っても、駅前の交差点に出ることに変わりない。
コンビニのところを曲がって、少し行くと。
大きな通りに出る。
そこからは、商店街とか居酒屋とか。そっちの方に行かず、回れ右をして少し横にそれると。
ビル街。オフィスビル。綺麗にビルが傾斜していて。その計算された傾斜に沿って、夕陽が沈み、朝陽が昇る。雨の日には地下の大規模雨水槽が活躍して、地面に水たまりのできることもない。張ってあるアスファルトは、水を瞬時に吸着してしまう構造をしている。
これが。
わたしの大好きな、街。
目を閉じれば。いつでも思い出せる。わたしの街。
目を開いた。
看護師さんがいる。
「お加減はどうですか?」
「いいかんじです。わたし。街を旅してました」
心がこわれて。運ばれて。病室にいても。
考えるのは、街のことばかり。
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