番外編15話 想いの結晶実って

 首位のチームをアウェイで奇跡的とも言える勝利をもぎ取ったシュトルゥム・リンツのモチベーションは最高の状態に仕上がった。

 まさに破竹の勢いを再現出来るくらいのモチベーションらしい。

 そこからは一回も負けることがなかった。

 アウェイでの不利な状況でもドローに持ち込むのに成功したのだ。

 リーグ戦が終わって、二位で終わることの出来たシュトルゥム・リンツは晴れて、二部エアステリーガへの昇格が決まった。

 ついでにあたしの身体に新たな命が宿ってたりする。

 仕込まれたのはやっぱり、あの日だった。

 首位チームとの決戦前に激しく愛されたあの日。

 いつもよりも濃いし、多いの注がれてるって思っていたら、ビンゴ。


「おめでとう、あなた」

「ありがとう、アリス。動いても大丈夫? 座ってないと駄目じゃないかな」


 昇格おめでとうって、話なのにそれよりもあたしとお腹の子の心配が優先らしい。

 一日に何回も『動いて平気?』『動いて大丈夫?』って、聞いてくるもん。

 もう過保護すぎるくらいに過保護なのよ。

 そりゃ、安定期に入らないと心配なのは分かるし、心配されるのって、嬉しいんだけど……もう顔がにやけちゃうくらい嬉しいんだけどね。

 家事をやろうとすると『僕がやるから、座ってて」って、何もさせてもらえない感じ。

 悪阻つわりで気分悪くて、食べてないからいいようなもんだけど、太っちゃいそうで怖い……。


「大丈夫だって。心配し過ぎじゃない?」

「そう言うけどアリスが心配しなすぎってやつだよ?」

「でも、あまり動かないでいるとあたし……太っちゃうよ」

「太っても僕がアリスのことを嫌いになったりしないから、心配しないで」


 真っ直ぐ見つめられて、そんなこと言われると結婚して、もう数え切れないくらい愛を交わし合っているのにすごく照れ臭いものがある。

 これも惚れた者の弱みってものなのかしら?

 でも、それはタケルも一緒だよね、うーん。


「バ、バカぁ。そこは太っても僕は好きだからにしてよ」

「な、なるほど……さあ、アリス。おとなしく、しておこうか」


 恥ずかしすぎて、顔が火照っちゃって、染めたみたいに赤いあたしを横抱きに抱え上げるとベッドまで連れて行ってくれるのだ。

 介護されてる気分がしてくるけど、悪阻つわりが辛いだけで具合悪くないんだけどね。

 いつもだとお姫様抱っこからのベッドは朝までコース。

 うん、それは今は出来ない。

 だから、あたしをベッドに優しく寝かせてくれると何度もキスを交わしてから、隣で添い寝をしてくれるのだ。

 あたしが安心して寝られるようにって、寝るまでずっと頭を優しく撫でてくれる。


  でも、タケルにしてもらうばかりだから、申し訳なくって、『口でしようか?』もNO!

 『じゃあ、胸ならいいじゃない? タケルも好きじゃない。いつもしてって言ってたし』も却下!

 平気だからって言ってるのに頑なに受け付けないのよね。

 『それなら、手ならいいでしょ?』って、言ってもNOなんだよ。

 大事にされ過ぎて、辛いってのは贅沢な悩みだと思うけど、あたしの性格上、されてばっかより、してあげたくなるのだから、どうしようもないよね、これは!


 それでタケルったら、結局、自分で処理するって言うんだよ。

 意味が分からなくない?

 それで対象があたしじゃなきゃ、嫌だって、言うのよね。

 あたしは産まれたままの姿になって、ベッドの上でおとなしく仰向けに寝てないといけないの。

 タケルが自分で処理してて、呼吸が荒くなってきてもあたしは何もしてあげられない。

 辛いのに彼はそれでもいいって、我慢してる。

 達しそうになったら、あたしにちょっとのしかかるようになってきて、『ごめんね』と言いながら、その熱いのを顔や胸にかけるのだ。

 まるでそうすることであたしがタケルのものだって、マーキングでもするように……。

 そんなことしなくてもあたしは永遠にあなたのものだって、知ってるでしょ?


 あと一ヶ月くらいで安定期に入るから、彼が何と言おうと絶対にしてあげるって決めた。

 子供に影響出るようなことはさすがにしてあげられないけど、あたしもあなたのことをこんなにも愛しているんだって、伝えたいし、刻みたいのだ。

 だから、覚えてなさいよ、タケル!

 倍にして、返してあげるからね。 

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