番外編7話 姫専用武器は世界を救う?

 本当にどうすれば、いいのかな?

 現状の火力ではあの鱗を貫けるかも怪しい状況だから、倒せそうにないし。


「ええ、そうです。どうやら、そのようでして……あぁ、それでお願いしたいですね。はい。お願いします」


 ん?

 ヴォルフが誰かと喋っているようだけど一体、誰と喋ってるんだろ。

 えっと、この状況で会話する相手って、もしかして、サポートなの?


「サポートの方でこちらの状況、把握しているそうだよ。それでね。あのドラゴンを倒せる武器を送ってくれるってさ」

「そうなの? 待ってれば、いいの?」

「よし、それまで何とか、頑張ろう!」


 そっかぁ、サポートが何とかしてくれそうなんだぁ。

 よかった……どうにか、なりそうだね。


「あぁ、それでね。その武器を使えるのがリナなんだって」

「はぁ!? 何であたし?」

「『プリンセスがいますね。分っかりました! 大至急、専用の武器を送ります』って、言われたんだけど?」


 プリンセス専用武器って、何?

 月に代わって、何とかするステッキみたいなの?

 魔法少女みたいなステッキ?

 ステッキから、離れられないあたしの思考回路がちょっと、やばい気がしてくるわ。

 今、気付いた……自分やばい。


「『それでプリンセスのユーザーさんは結婚されてますね。旦那さんもそこにおられるようですから、是非お二人で倒してください』だってさ。これは運営も乗っかる気とみたよ」

「ランスとあたしでその武器を使って、倒すって何なの!」

「ふぅーん、なるほど。経営者として分からないでもないわね。あのドラゴンは運営のミス。逆にそれを利用して、リナとランスに倒してもらうことで一大イベントにしようとしているのよ」

「え? どういうこと? 良く分からないんだけど」


 フランの言ってることをあたしが理解出来なくて、小首を傾げて、考えても……良く分からない。


「そういうことですね。ランスはいま、売り出し中の若手ストライカー。そして、リナはモデル活動もしているでしょう? こんなに宣伝に適したいい宣材はないと思いません?」


 エステルが説明してくれて、ようやく理解した。

 つまり、この突発的に起きてしまったイベントを私とランスを使って、大々的にゲームの宣伝しようってことなの?

 うーん、でも、あたしは『そういうことは事務所を通してくれないと困ります』なんて、言わない。

 むしろ、あたしはこの機会に恩返しが出来るんじゃないかなって、ポジティブに考えてる。

 ずっと素直でなくて、勇気がなかったあたしがタケルと結ばれたのはこのゲームのお陰もあるんだよね。

 だから、いい機会じゃない?


「分かったわ。洗剤だか、宣材だか、知らないけどやってみるわ」

「おや。例の武器、来たみたいだよ」


 ヴォルフが遠眼鏡で空を指差すとキランと光を放ちながら、あたしたちのすぐそばに突き刺さった。

 えっと……あれがそうなの?

 これ、本当にエヴォドラ倒せるの?


「これ、結婚式のケーキ入刀のナイフだよね?」

「うん、どう見てもそうとしか思えないね。ドラゴン入刀なのかな……これは許されるのかな、リナ次第よね」

「あとで正式に抗議させてもらおうかしら? 足利グループの名前でね!」


 ヴォルフとエステルはいつも通りとして、フランが激おこだね……。

 あたしは怒るというよりは通り越して、一周回って呆れてる。

 なるほどねぇ、二人で倒せって、そういうことなんだぁ。


「そういえば、あたしたち結婚式してなかったね」

「そうだね、忙しくて出来なかったままだね」


 ランスと見つめ合うだけで話し合う必要すらない。

 やることは決まっているんだから。


「今はこんな結婚式でごめんね」

「ううん、いいの。どんな形でもあたしはあなたと一緒なら、大丈夫」


 地面に突き刺さったままの入刀ナイフを二人で手を携えて、抜いた。

 何だか、良く分からないスゴイ力が身体に流れてくるのを感じる。

 ランスも同じなんだと思う。

 二人で見つめ合って、頷く。


「「いっけー!」」


 天高く振り上げた入刀ナイフをエヴォドラへと大きく、振り下ろした。

 『ケーキ入刀じゃなくて、ドラゴン入刀だね』って声が聞こえたけど、多分、ヴォルフだ。

 そのまんまだから、捻りも何もないっていうか、本当にこんなので宣伝になるのかな?


「ちょっ、そういうのダメだろー、インチキだー」


 エヴォドラが何か、叫んでいるようだった。

 負け竜の遠吠えね。

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