第7話 致命的なエラーが発生しました

「名前はリナリアで決定と……え、えっと何これ? クラスって、んっ? クラスって何?」


 やばい、名前決めたら、クラスとかよく分からないこと聞いてきたんだけど。

 何なの、これ?

 クラスって、学校のクラスとは意味違うよね?

 カンパニーが会社だけじゃなくて、仲間の意味があるのと同じで違う意味があるはず……何だろう。


「戦士、魔法使い、神官……あっ、なるほど。職業みたいね。ふぅーん、どれ選べばいいんだろ? スミカは何も言ってなかったけど」


 このゲーム、見た目がスキャニングされて反映されてるだけじゃないらしい。

 頭の中身や運動能力まで影響するって、リアル過ぎない?

 幸い、あたしは運動が不得意な訳じゃないし、頭だって、そこまでは悪くないと思う。

 賢くはないけどね。

 偉そうに言うことじゃないけど!


「でも、戦士はないかな。武器使ったり、殴りかかるのなんて無理無理無理。魔法使いね。魔法使いはちょっと良さそうかな? 魔法は使ってみたいかも。神官も何か、使えるのかな……って、どれにすればいいのよっ」


 こんなことなら、タケルがゲームやってる時にもっと注意深く見ていれば、よかったわ。

 タケルがゲームやって楽しそうにしてる姿見てるだけで幸せだったから、画面とか見てなかったのよね。

 タケルの横顔見てるだけで幸せだったし。

 彼はゲームに夢中であたしが見つめているのに気付いてなかったんだよね。

 はぁ、後悔してももう遅いけど、どれ選んだらいいんだろ?

 あっーもう! 迷い始めると永遠に迷子になるパターンじゃない、これ!


「あぁ、もうめんどいから、これでいいわ」


 あたしはクラスをどれにするか、迷って決められないので『ランダム』を選んで決定した。

 こうなったら、神頼み? 運頼み?

 もしかしたら、自動的に最適なのを選んでくれたりしないかな。

 くじ運はそんなに悪くないと思うの。

 金なら一枚のも銀くらいなら、結構引いてるし、眉毛のあるコアラもいたし。

 きっと大丈夫!


「これでOKと」

――ERROR! ERROR! ERROR!


 あたしがキャラ作成のOKボタンを押した途端、ブッーブッーと耳障りな電子音とともにあたしの周りが赤く激しく光ったり、消えたりと点滅し始めて、どう見てもやばい雰囲気がしてくる。


「な、なによ、これ」


――致命的なエラーが発生しました

――緊急座標転送を開始します


 空に浮いていたあたしの身体から、不意に浮遊力が失われた。


「えっ!? エラーって? ち、ちょっと落ちるぅー落ちてるぅー」


 急速に落ちていくあたしの身体。

 焦っても空飛べる訳じゃない。

 だからって、冷静でいられるかっていうとそんなこともない。

 あたふたと考えているうちに気持ち悪くなるくらいの強い負荷がかかってきて。

 あたしの意識はあっという間に刈り取られた。


 🌳 🌳 🌳


「あいたたたって、生きてる? あたし、生きてる?」


 どれくらい時間が経ったのかな?

 あたしは深い森の中で意識を取り戻した。

 森なのかも正確には分からない。

 周囲に木々が見えて、森っぽいなぁというだけで判断材料が少なすぎる。

 それにしても不思議なのはあれだけの高さから落ちたってのにどこも怪我していないことよ。


「どこなのよ、ここ……誰か、いますか?」


 呼びかけても返事なんて、返ってきやしない。

 聞こえるのは得体の知れない動物の鳴き声や虫の声とざわざわと風に応える木々のざわめきだけ。

 その時、ガサッという薮をかき分けるような音が背後でした。


「な、なに?」


 襲ってくる恐怖感に押しつぶされそうになりながらも振り返るとガサガサと薮を揺らしながら、ソレがあたしの前に姿を現した。

 ワニ……じゃないよね。

 ワニにしては足が長いし、ワニってこんなに首長くなかった。

 ま、まさか、ドラゴン!?

 なんでそんなのがいきなり出てくるのよ。


「ひっ」


 あたしを値踏みするように睨んでくる黄金色の瞳は獲物を狙う狩猟者のそれだ。

 逃げられない。

 本能的に感じてしまった。


「や、やだぁ……タケル助けて」


 あたしは目の前に迫ってくる怪物相手に腰が抜けてしまい、逃げることも出来ずに蹲ったまま、ただ恐怖に怯えるしかなかった。

 その鋭い爪があたしの身体を引き裂こうと襲い掛かってきたけど、あたしにはどうすることも出来ない。

 死んじゃうのかな……ゲームだけどいきなり、死んじゃうなんて運がなさすぎじゃない。

 ビギナーズラックすらないって、どういうこと!?


「あ、あれ? 死んでない?」


 思わず目を瞑ってしまったあたしの耳にドサッという何かが地面に落ちる音が聞こえた。

 ゆっくりと目を開くとあたしに襲い掛かろうとしてた怪物の右腕が地面に転がっている。

 一体、何が起きたの?

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