日本で生まれたのに見た目はファンタジーな私!日本語しか喋れないんだけど、何か悪いの?~ピンク髪のヒロインはVRゲームの中で恋愛する~

黒幸

本編

第1話 変な笑い方やめなよ

 あたしはキタバタケ・アリス。

 高校二年生の多分、どこにでもいる女の子。

 え? ピンク色の髪の女子高生なんて、いないって?

 ここにいるから、いいんだってば。


 それでね。

 漢字だと北畠亜莉子って、書くの。

 ものすごーく日本の人ぽいでしょ?

 でも、あたしの中に流れている日本の血は四分の一だけ。

 パパはドイツと日本のハーフ。

 ママはノルウェー人。

 だから、四分の一なんだよね。


 だけど、あたしは日本生まれの日本育ちなのだ。

 メンタルは完全にザ・日本人。

 そう、メンタルはね。

 ところが見た目が日本人に見えないみたい。

 髪はピンクがかった金髪、ストロベリーブロンドだったかな?

 瞳の色は『瑠璃色みたいだね』って言われるちょっと変わった青色だもん。

 初対面の人に日本語で話しかけると『日本語お上手ですね』と驚かれるのがいつものこと過ぎて、慣れてしまった。

 いや、逆なんだけど。

 ドイツ語は片言だけ! ノルウェー語は無理!

 はい、ほぼ日本語Onlyなんだけど、全ては見た目が悪いんだよ?


 その見た目のせいであたしは小さい頃から、いじめられた。

 朱に交われば赤くなる? ちょっと違う気がするわ。

 出る杭は打たれる? こっちぽいかな?

 だって、ピンクの髪だもん……小さい頃って、今よりも濃い髪色だったのよね。

 そりゃ、もう浮いちゃってしょうがなかったわ。

 でも、小学校に上がる頃だったかな。

 周りの目が変わってきたんだよね。

 目立ち過ぎる外見のせいなんだろうけど、芸能事務所やモデル事務所にスカウトされた。

 それで気付いたんだ。

 あたしの容姿はかなり、整っている方だってことをね。

 今まで自分がかわいいとか、全然思っていなかった訳で……。

 やけに告白してくる男子が多いなぁとは思っていたよ?

 どうせ、見た目が珍しいから、からかってるんだと思ってたんだよね。


「タケル! とっとと起きなさいってば。遅刻するよ?」

 

 腐れ縁って言うのかな。

 生まれた時からの幼馴染・楠木武くすのき たけるを毎朝、起こしてあげるのがあたしの日課の一つだ。

 彼の寝顔を見られるのは幼馴染の特権。

 折角、ある権利なのに使わないなんて、勿体ないと思わない?


「お、起きてるよ……あと十秒……十秒だけ寝かせて」

「だーからっ、寝ちゃ駄目だって。さっさと起きてっ」


 左手で寝かけている武の耳を引っ張り、右手で全身を覆っているシーツを容赦なく、剥がしてあげるのだ。

 うん、案の定、身体の一部は朝だから、元気みたい。


「さ、先に行ってるからね」


 さすがにあたしも成長したと思う。

 初めて見た時は男の子が朝にそうなるって知らなかったから、思い切りビンタしちゃったんだよね。

 だって、びっくりするでしょ?

 あたしは悪くない! というか、今は冷静に対処してるんだから、許して欲しいわ。

 誰にだって、過ちはあるものじゃない。

 あたしの場合、それがちょっと多い気がするけど女は愛嬌だから、多分許される……よね?


 それから、いつもの朝のようにタケルに作ったお弁当を渡して、家の前でもう一人の腐れ縁な幼馴染・新田薫にった かおると合流した。

 彼女は日本人形そのものの容姿。

 ザ・大和撫子の称号を贈りたいわね。

 あたしとは対極の存在って、言ってもいいんじゃない?

 性格も動のあたしに比べるといつも冷静で静だしね。


「カオルは知ってる? 今日、転校生が来るんでしょ。男の子かな? 女の子かな?」

「知らない。興味ないもの。どうして? 何か意味があるの?」


 あっ……そうだった。

 この子、タケルにしか興味がないの一点張りなクールビューティーだったわ。

 おまけにカオルの母親はタケルの母親と双子の姉妹だから、二人はいとこなのよね。

 さらにお家も隣っておまけ付きだもん。

 これだけだとあたしに勝ち目なさそうでしょ?

 でも、そうじゃないの。

 あたしはタケルと同じ屋根の下に住んでいるっ!

 つまり、同棲してるのっ!!

 同棲ってことは恋人以上の存在だもん。

 ふふふふっ、あっーはははっ!


「アリス、変な笑い方やめなよ?」

「えっ!? あたし、笑ってたの……嘘でしょ!?」


 無自覚で高笑いとか、重症じゃない?


「うん、笑っていたよ。すごく不気味に豪快に」


 遅れて家を出てきたタケルに変なとこ見られちゃった。

 これはマイナスじゃない?

 でも、今までプラス稼いでるから、平気かな?


「それと母さんが今日は遅くなるから、夕食は二人でするようにって」

「そ、そう、分かったわ」


 はい、同棲じゃありません。

 見栄を張っちゃいました。

 あたしのパパとママは今、ドイツのレバークーゼンにいるの。

 ホントはあたしも行かなきゃいけなかったんだけど、どうしてもタケルと離れたくないって、我が儘言って……それでママの親友だったタケルママが「それなら私の家にいていいわよ」って。


「二人とも遅刻したいの?」

「そうよっ、遅刻したら、どうするのよっ」

「僕のせいなの!?」


 いつものように三人で仲良く、登校する朝がこれで最後だなんて、この時のあたしは知らなかった。

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