第34話 デートの日 ◇オフライン◇
ここのところ毎日遅くまでノインヴェルトをやっているせいで寝不足気味。
なので今日は早めにログアウトした俺。
だが、眠りに入る前に確認しておかなければ……。
そう、財布のことだ。
普段使っているリュックの中から自分の財布を恐る恐る引っ張り出す。
「うお……」
持っただけで分かる、ズシリと来る重さ。
そっと中身を広げてみると……。
「やば……」
そこには万札が束になってビッチリと詰まっていた。
さっき装備購入に10万G近く使ったから、恐らくここには90万くらい入っているはず。
今の状態で、辛うじて財布に収まってはいるが……これ以上稼いだ場合、どうなるんだろうか?
財布が破裂? それとも入りきれない量は稼げない?
その辺も検証が必要だな。
しかし、この金……どうしよう?
銀行に預けるか? 今後、こんな感じで稼ぎ続けていたらタンス預金も不安になってくるし……。
「とりあえず、そうしておくか」
日曜日に必要なデート資金だけ手元に残して、銀行に預金することにした。
◇
日曜日。
予てから約束していた名雪さんとのデートの日だ。
とは言っても人生初のデートな訳で、一体、何をしたらいいのか分からない。
特に何もプランは立ててこなかったが大丈夫なのか?
俺は待ち合わせ場所である駅前の広場へと向かった。
到着すると、事前に落ち合う場所として決めておいたモニュメントの前に彼女の姿を発見する。
だいぶ余裕を持って家を出てきたつもりだが、彼女の方が早かったらしい。
向こうも俺の姿に気付いたようで、はにかんでいた。
直後、俺のスマホが震える。
ユーノ『ごめん、待った?』
「それは俺の台詞だ」
「……」
名雪さんは恥ずかしそうに俯いた。
誘っておきながら、彼女も緊張しているらしい。
「それにしても……」
改めて彼女の姿を見つめる。
白いワンピースに身を包んだ彼女は、俺の目にとても可愛く映った。
その視線に彼女も気付いたようで……。
ユーノ『変……?』
「いや、そういうわけでは……。普段、制服姿しか見たことなかったから新鮮で……」
「……」
彼女はまたもやモジモジとしてしまう。
「それで、これからどこに行こうか? 映画とか?」
デートプランとして一般的で無難そうなもの伝えると、彼女はスマホをポチポチと弄り始めた。
ユーノ『大丈夫、私が考えてあるから』
「そ、そうなのか……」
それは助かるが、こういうのは任せてもいいものなのか?
だが、考えてくれているというのなら、それに従うのが最良だろう。
ユーノ『こっち』
行き先を伝えずに彼女から歩き始めた。
なので隣に並んで付いていく。
一体、どこへ行くのだろう?
そう思っている内に辺りの景色はホテル街へ。
なんだが、気まずい空気が流れてきたような気がするが……それを感じているのは俺だけか?
少し不安になってきた俺は尋ねてみた。
「どこへ向かってるんだ?」
聞いた直後、名雪さんはあるホテルの目の前で立ち止まる。
ユーノ『ここ』
「ここ……って、俺の見間違いじゃなければ、これはラブホテルと呼ばれるものじゃないか?」
ユーノ『そう、私達は今日ここで結ばれるんだよ』
「……」
彼女は言った傍から顔を真っ赤にしてプルプル震えていた。
「だから、無理すんなって……」
なんでそう背伸びしたがるかな……。
自分でハードル上げて行くスタイル?
ユーノ『こっち……』
「……」
そう言うと彼女は、そそくさと歩き始めた。
どうやら通り道にホテルがあって、ただ言ってみたかっただけらしい。
紛らわしいぞ……。
そうこうしている内に、周囲の景色から高い建物が減り、住宅街らしき場所へと移り変わる。
本格的にどこへ向かってるのか分からなくなってきたぞ……。
そろそろちゃんと聞いておきたい所。
そう思っていた時だった。
彼女の足が再び止まった。
ユーノ『ここ』
「え……ここ?」
彼女が指し示したのは、ちょっと鄙びた感じのアパートだった。
二階建てで全部で六室。
一人暮らしの大学生に需要がありそうな感じの見た目だ。
一応、デートという話。
どうあっても今の俺達に用事がありそうな場所には思えないが……。
「……どういうこと?」
さすがに意味が分からないので率直に尋ねた。
すると、名雪さんはこう答える。
ユーノ『ここ、私の家』
「え……」
デート初日。
俺はいきなり、彼女の自宅にお呼ばれすることになった……。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます