第17話 繁みから ◆オンライン◆


 ユーノと共にやって来たのはディニスの西にあるハフネの森。

 この辺りは、レベル10~12程度のプレイヤーに最適なフィールドとなっている。



 丁度、レベル10のユーノには、適切な狩り場と言えるが、レベル7の俺にとっては少々ハードモードな場所だ。



 しかし、レベルの割にはステータスが異常に高い俺は、推奨レベルに到達していなくてもモンスターを楽勝で狩ることが出来ていた。



「ヘルファイア!」

「ウギュァァァァッ……」



 俺の放った火炎魔法によって、五匹のキラーラビットが一撃で消し炭になる。



 ちなみにキラーラビットというのは名前の通りウサギ型のモンスターだが、見た目はウサギのように可愛くなく、悪魔のような形相をしている。

 鋭い牙と、骨をも砕く後ろ足の攻撃が特徴で、体長も人間くらいデカイ。



 そいつを全体魔法で一まとめに倒すと――、



[60ptの経験値を獲得しました]



「よっしゃあ」



 まとまった経験値が入ってきて結構美味しい。



 本来なら一匹でも苦戦するモンスターなのに、俺のぶっ壊れステータスのお陰でサクサク狩れる。



 クエストの目的地に向かう道中で、ついでだからと狩りをしながら進んでいたけど、これが結構良い感じの経験値稼ぎになっていた。



『パラッパッパッパー』



 そんな時、すかさずレベルアップファンファーレ。

 これはパーティを組んでいるユーノのものだ。



「わー! レベルが上がったよ!」

「おめー」

「ありー」



 彼女は早速ステータス画面を開いて、内容を確認していた。



「わーい、速射スキルが増えてる」



 速射スキルか。

 確か射撃系の攻撃速度を上昇させるスキルだったと思う。

 手数が多くなる分、目標を以前よりも素早く倒すことが出来るはずだ。



「こんなにも早くレベルアップ出来るなんて、全部ユウトのお陰だよ」

「どのみち俺もレベ上げしなくちゃならないんだ、一人でやろうが二人でやろうが一緒だしな」

「でも……ユウトには私以外の人とパーティ組んで欲しくないな……」



 彼女は急にモジモジしながらそう言った。



「え? 何それ? 俺と組むと効率良くレベ上げ出来るから独占したいってこと?」

「む……そういう意味じゃなくて!」



 彼女は唇を尖らせて、ムッとした表情を見せた。

 そういう仕草にちょっと可愛いな、とか思ってしまう。



「それはそうと、クエストのついでとはいえ結構狩れたから、お金も良い感じに貯まってきたな」

「だね。私なんか十万Gもあるよ」

「おお、いいね。俺もそれくらい貯まってる」



 このゲームを始めて以来、初めてまとまったお金が得られた気がする。



「どうだろう? その金で、そろそろ装備一式揃えてみないか?」



 現在の俺は初期配布装備のまま。

 それはユーノも同じだった。



 レベル的にも、初心者を抜け出した所って感じだし、この辺りで装備を一新したいところ。



「賛成、私もそろそろ新しい装備を着てみたかったんだー」

「じゃあ決まりだな。エルダーゴブリンを倒したら、どのみち報告の為に町へ帰らなきゃだし、その時についでに買おう」

「うん、だね」



「そうと決まったら、サクッと倒してササッと帰ろう」

「おーっ」



 目的がもう一つ決まって、洞窟へと向けた俺達の足取りも軽くなった時だった。



 周囲の繁みから三人の男が現れたのだ。

 彼らは俺達を取り囲むと下卑た笑みを浮かべる。



「ふふふ……」

「うしし……」

「くくく……」



 何だ? こいつら……。



 種族は全員、人間。

 だが、身に付けている装備からしてNPCではない。

 プレイヤーだ。



 一人は銀のフルプレートアーマーを身につけ、もう一人は呪符を張り付けたような装飾の黒いローブをまとっている。

 そして最後の一人は、やたらデカいナックルグローブを嵌めている。



 ステータスを覗き見てみると、彼らのジョブの内訳は騎士ナイト呪術士シャーマン、そして僧兵モンクだった。



 ――二次職か……。



 それらはクラスチェンジしないと就けない職業だ。



 クラスチェンジはレベル15に到達しないと出来ない。

 ということは、彼らは一次職をそこまで上げたということになる。



 サービスを開始してまだそんなに経っていないというのに、そこまでということは、それなりにやり込んでいるプレイヤー達だ。



 そんな彼らが俺達のような初心者組を取り囲む理由は何か――?



 それは深く考えずともすぐに分かった。



 ――初心者狩りか!


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る