そうして僕らは解を見つける
天塚春夏
プロローグ:夕日の輝く教室で
「少し仮定をしよう。」
彼女はそう僕に切り出した。
「もし世界の人々が、同じ考え方しか持ってなかったとすると、そこに進化はあっただろうか?」
僕に問いかけるような口調でそう話す彼女だったが、果たしてその言葉の中に返答を願う意が含まれているかと言えば、否であった。彼女は僕と話しているわけではなく語っているのだ。
「私は、そこに進化は求められないと思うのだよ。みな同じ考え方と言うことは、争いはなく、平和だろうが、考え方に変化をもたらしてくれる人もないと言う訳だ。・・・つまりこの世界の人間が、みな違う考え方を持っているのは自然なのだよ。ただ一つこうなってくると納得ができないことが出てくるんだ。ずっと考えても分からないことなんだが・・・。」
彼女はそこで言葉を切る。天才と言われる彼女、その人が分からないと思うことなど、この理不尽な世界に対してなど数えられないほど在るのではないだろうか?きっと僕の考えなど及ばない疑問に違いない。そう思ってのだが、彼女の口から出てきたその言葉はすんなりと僕の頭の中に入ってきて、なじんだ。しかしシンプルでありながらも、おそらくは誰にも分からないであろう。というような難解な問題でもあった。
「何で人と言うのは普通を定義するんだろうね?一人一人考え方も行動も違うっていうのに。」
ニュアンスから察するに彼女は僕に今度は質問としてその言葉を投げかけたのだろう。だが、残念ながら僕にそれを答えるだけの能力も知識も経験も無かったため僕は、こう答えるしかなかった。
「分からない。」
僕はただそう言うしかなかった。
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