第11話 部下の居ぬ間にワンポイントリリーフ
「おもしれえ、ただの通り魔殺人かと思いきや、とんだ百鬼夜行になってきやがった」
俺とリードの報告を聞き終えたレッドは、小鼻を膨らませるとコーヒーの入っていた紙コップを握りつぶした。
「さてと、それじゃあたしは『ファイヤーボール』についての噂を拾いに低層階まで言って来やしょうかね」
ヤサがどことなく楽し気な口調で言うと、レッドが「じゃあ俺は犯行前のガイシャの足取りと、目撃情報の聞き込みに行ってくるぜ」と言った。
「僕は『知亜』の友達だという情報提供者の妹さんに会ってみるよ。……ゼロ、君も行くかい?」
「そうですね、俺もスケッチの少女に関するもう少し突っ込んだ話を聞いてみたいです」
俺がリードの誘いに応じかけた。その時だった。
「ちょっと待って。ゼロ、あなたは私と一緒に来て」
「ボスと?どこへですか?」
「実は第四医務室に元『イモ―タルソサエティ』のメンバーだった知り合いがいるの。休学中だけど、薬剤師を目指しているまともな子よ」
「……わかりました。でもボスがここを空にしたら、極龍組の連中に乗っ取られやしませんか?どうも奴らのヘッドはボスに遺恨があるようですが」
俺はこの前のいざこざを思い返し、咲に尋ねた。あの憎々し気な態度は、壱係に何か個人的に恨みがあるとしか思えなかった。
「ああ、あいつね。一年の時、私に振られたのがよっぽど腹に据えかねてるみたい。あんな小さい男、いちいち相手にするほど暇じゃないわ」
「でも、誰かが留守を預かってないと……」
俺が懸念を口にした瞬間、教壇の奥にある戸が開いて小柄な年配男性がひょっこり姿を現した。
「私が留守を預かってやるから、安心して行ってきなさい、新人君」
男性はよれよれの白衣に度のきつそうな眼鏡という、いかにも名物教師然とした風貌の持ち主だった。
「あなたは……」
「私の名は
男性はそう言うと、投球フォームを真似た動きを披露してみせた。
「野球をされてたんですか。それは素晴らしい。俺はスポーツマンと聞くと、どんな人でも点数が甘くなるんです。今後もどうかご指導、よろしくお願いします、先生」
俺がおどけて見えないキャップを脱ぐ仕草をしてみせると、伴は眼鏡の奥の目を細めた。
「いいねえ、捜査は礼儀に始まり、礼儀に終わる。……では諸君、プレイボール!」
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