この世界で生きるということ
僕一人がいなくなったところで、世界は何一つ変わることなんてない。
だってほら、考えてごらんよ。
あんなにも心を痛めていたニュースをあなたはもう忘れているじゃないか。
人の記憶は脆いんだ
だから、僕一人がいなくなったところで、
こんな世界は終わったりしない
人は人の死を乗り越えて強くなる
そんなことをいうけれど、そんなの強さじゃない
強さと言ってはいけない
それはただ忘れていっているだけだ
悲しみも、怒りも、後悔も、何もかも全て
だって、感情にも賞味期限はあるんだから
永遠なんて存在しないんだから
どこかの誰かが言っていた
人の死は、その人の命の灯火が切れる時じゃない
この世界の誰もの記憶の中から消え失せてしまう時だ、と
そんな綺麗事を、とは思うものの、やっぱり私もどこかで納得していた
だから、忘れることは強いことなのでは無い
だって、あなた自身が大切な人を殺してしまうことになるのだから
僕達に与えられる情報なんてほんの僅かで、それすら嘘の塊だ
どこもかしこも権力に媚びを売ったような綺麗事しか言わない
きっと裏では、金のやり取りがされていて、
彼らの不都合は隠蔽されているんだろう
世の中、所詮金と権力
「法のもとに平等」
そう歌っているくせして
結局は生まれ落ちた家で決まる
庶民が罪を犯したら罰を与えるくせして、
権力者が同じ罪を犯しても法は制裁を加えない
初めは単なる違和感だった
だんだんとそれは疑念に変わり、
そしてついには、信用という言葉自体を疑う羽目になってしまった
世界は虚構で出来ていて、真実なんてどこにもないんだろうなと思う
いつからだろう
こんなに濁った目で世界を見るようになったのは
純粋だった瞳に光が灯らなくなったのは
世界は広い
そうだね、同感だ
子供には分からない
子供だから分かることもあるんだよ
大人の言うことを聞け
ろくなことを言わない、嘘にまみれた言葉を?
歳だけ重ねた、視野の狭い言葉を?
そんなひねくれたことを言うな
これをひねくれたことと思うの?
ひねくれているのは僕ではなく、あなたの方ではないの?
大人は愚かだ
大人は無知だ
大人は単純だ
歳だけ食ったような大人が
教養の備わっていない大人が
この世になんの生産性も持たない大人が
どれほど多いことか
子供に比べて早く生まれたと言うだけで
どうして無条件に尊敬してもらえると思っているのだろう
最近の子供は大人をバカにしていると最近の大人たちは言うけれど
そのバカにされるような大人になったのはあなたたちの責任でもある
大人になんてなりたくないと思うようになったのは、
きっと僕が碌でもない大人がいることを知ってしまったからだろう
きっと僕がそんな大人になりかけてしまっているからだろう
子供の頃は、世界の何もかもが輝いて見えた
虫も、草花も、ガラクタも
何もかもが輝いて見えた
世界の輝きが見えなくなったのは、ただ、私が大人に近づいてしまったからなのだろう
ああ、こんなことなら、早く大人になりたいなんて願うんじゃなかった
鏡を見ると濁った瞳をした僕
写真を見ると綺麗な瞳をした僕
何処で手放してしまったのだろう。あの輝きを
もう一度、あの輝く世界を見たい
そんなことを流れ星に祈る
でも、きっと僕はあの景色を二度とは見ることが出来ないだろう
こんなにも冷めた目で自分を見ている僕には
夜空に浮かぶ星々のように、輝く人生を送りたかった
かつては僕も同じように輝いていたはずなのに
気がついた時にはもう手遅れで
既に希望の輝きは消え失せてしまった後だった
ああ、夜空に輝くアンタレス
僕も君のように輝いていたかった
この生命が燃え尽きるその時まで
その美しさを纏っていたかった
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます