決戦に生き残り


 敵艦隊の直衛駆逐艦は8隻だけ、巡洋艦はいないようです。


 増援部隊と会合して、艦隊陣形を整えたネマ船長は、三式指揮連絡機に100キロ『オクタニトロキュバン』爆弾を積み、300キロの遠方から航空攻撃を命じました。

 頭上の通信衛星からの誘導がありますので、陸軍機の三式指揮連絡機でも難なく海洋を飛べるのです。


 「とにかく波状攻撃をしてくれ、直衛駆逐艦が全滅したら戦艦の測距儀などを破壊してくれ」


 ネマ船長の命令で波状攻撃をした結果、直衛駆逐艦は全滅、四隻の戦艦の測距儀は破壊、水平装甲板以外の艦首部分は穴だらけ、煙突なども壊された船もあります。

 とくにドレッドノートの速力はぐっと落ち、12ノットほどしか出ていないようです。

 三式指揮連絡機部隊は爆弾をすべて消費して、この結果を出してくれたのです。


 特設巡洋艦6隻は単縦陣で敵の戦艦に立ち向かいました。

 距離は三万メートル、まず命中する距離です。


「右舷水雷戦用意!」

「目標、第一部隊は敵の一番艦、第二部隊は敵の二番艦、撃て!」

 12発の魚雷が二隻の戦艦に命中、いわゆる轟沈したのです。


「回頭、左舷水雷戦用意!」

「目標、第一部隊は敵の三番艦、第二部隊は敵の四番艦、撃て!」


 敵の四隻の戦艦は海の藻屑となったようです。


「右舷に雷跡2!」

「なに!」

「回避運動はできるか!」

「まにあいません!」

「命中します!」


「右舷に被雷!」

「左舷に注水!」


 “ほうこくまる”は速力が半減、大量の浸水でやっと浮いている状態です。


「“ごこくまる”が被雷!傾いています!」

「敵の位置はわかるか!」

「わかります!」


「全艦艇に位置を知らせよ!」

「対潜誘導魚雷をありったけ叩き込め!」


「敵潜、圧壊しました!」


「やれやれ……被害状況を報告せよ!」

「浸水がとまりません!」

「排水に全力を上げろ、とにかく全速でマハラバードへ向かう!」

「対潜警戒を怠るな!」


 度重なる被雷で隔壁が緩んだそうで、浸水が止まらない“ほうこくまる”です。

 それでも応急注排水装置の、排水能力のおかげでマハラバード港まで、なんとか戻ってきたのです。


 緊急にドックに入ったときには、応急注排水装置も壊れ、満身創痍の“ほうこくまる”でした。  


 “ほうこくまる”の修理は困難を極めたのですが、義勇艦隊の武勲艦として、何とか修理を終わったときは、執政官府の戦争は終わっていたのです。


 『栄光のほうこくまる』、義勇艦隊の誇り。

 この船はこの後、どんなに旧式となっても、義勇艦隊旗艦として現役にとどまりました。


 そしてネマ船長はのちに義勇艦隊司令官になり、最後は側女にまでなったのです。


 FIN

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