おすそ分け

 またいつもの定食屋さんに行った時のこと。

 食べていると不意に私のお皿に何かが入ってきて、私は驚いた。それは彼が食べてるホルモン焼きのお肉だった。

「美味しいから食べてみ?」

 彼の言葉に私は再度驚いた。

 彼と食べている時、白米の量が多すぎたり、唐揚げが多すぎたりして、彼に、

「もらってくれる?」

 と私から彼に分ける時は多い。

 ケーキを食べるときも、私が、

「半分ずつ食べたい」

 とねだって半分ずつ食べる時はある。

 でも、彼が自分の食べているものを私に自分から分けることはあまりないのだ。

 よっぽど美味しかったのかな?

「ありがとう」

 私はなんだか嬉しくなって、そのお肉をゆっくり味わった。濃いめの味噌味のホルモンは確かに美味しかった。

 でも、その味より彼の心が美味しかった。

「美味しいね」

「やろ?」

 私と彼はにっこりと笑い合った。

 いつもより心が満たされた食事だった。


 そうそう。彼が美味しいと言った味噌汁の味噌が知りたくて、お金を払う際に訊いてみた。

「うち、自家製の味噌なんですよ〜」

 なるほど。美味しいわけだ。ちょっぴり残念。


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