2ミリの緞帳

久浩香

2ミリの緞帳

それが仕事中ならば、生の肩と肩がぶつかる事だって偶にはある。

でも、それは肩と肩だから触れ合えるの。

アクシデントじゃ、あなたを感じる暇もない。


私とあなたの間には、2ミリの緞帳がある。


首筋にあなたの気配を感じるのに。

緞帳の後ろに、あなたの固い肉体があるのに。


ねぇ。

私の身体に直にのしかかって、触って。

裸体に染み付いた、金の匂いと手垢を消して。


あなたの背中にしがみつきたい。

あなたの中に埋まりたい。


腰なんて使わなくていい。

私とあなた、

ぴったりと重なり合って、嵌り合って、微動だにしないでいたいの。


触れたい。

触れられたい。

あなたの重みも知っているのに、

手を繋ぐ事もできない、現実はいらない。


遣り手婆が、ほくそ笑む。

幻聴が聞こえる。

『金を上手に拾えない、お前のせいさ』

























私は、カルトン。














*************


後書


グー〇ルさんで検索して、『郵便局窓口』の画像を眺めていて、重なりあったカルトンが、中敷きマットのせいで、縁が離れてるのを見て、思い付きました。

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2ミリの緞帳 久浩香 @id1621238

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