第12話『決着』

 



 「       」

 




 ――人間もドラゴンも等しく静かだった。

 












 だが、そんな時でも止まってしまった光景も。

 打ち破るのは何時だって理不尽側の仕事である。

 

 「――フ、ふふふふ。そうか。『プレイヤーの遺産』か、ビックリしたぞ。少しな」


 そんな声が静寂を破る。

 衝撃波も無くなり視界が良好になった。

 見たくなくても見えてしまった。

 決定的に事実を突きつけられた。


 「っう駄目だったか……」 

 「お兄様……」


 攻撃を放った側の二人の前に映るのは、まったくダメージを受けた様子がない虹の竜王であった。

 そして虹の竜王は、ギョロリと二人の騎士を目で取らえる。


 「ソうか。お前たち、プレイヤーの関係者か……なら」

 

 もはや最初で最後の一撃に賭けていた二人に逃走の余力はない。

 後は、このドラゴンロードの慈悲ぐらいしか期待できない。

 

 「殺すしかないナ」


 慈悲は皆無。


 この場にいる人間は、一人も生き残れないことが確定した。

 してしまった。


 竜は咆哮する。

 目の前の人間たちを蹂躙する合図を放った。


 「皆殺しだあああああああああア!!!」


 その悪夢の光景をただ見るしかない。見るしかなかったのだ。

 己が命を食い千切れるまで――。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る