幕間『王国に悲報が響き渡る』
――慌ただしく、とある兵士が、ピースメーカー王国の象徴である王城を力いっぱい駆けていた。
「は、はああは、はあ」
本来ならば許されない所業であり、この兵士を見た城にいる人間に見咎められる事だろうが、不思議とその様なことは、起きなかった。
何故ならば、その兵士の顔色が余りにもマイナスに振り切っていたからだろう。
顔だけではない。
肉体全体であらゆるマイナスを表現しているような醜態をさらしながらも駆ける速度は力強いのだ。
その相反する様子が、尋常ではないと周囲の人間も察し、声をかけることをしなかったのだろう。
そしてようやく、その兵士のゴールにたどり着いた。
場所は、ピースメーカー王国の玉座の間。
重々しい扉を開き、その兵士は声を上げた。
「ほ、報告します! 地方城塞都市ヘキチダナは、陥落! 防衛にあたっていた第一王子殿下、第一王女殿下を始めとする守備軍は全滅! 軍事上の三割全滅では無く文字通りの全滅!
扉を開けた直後に矢継ぎ早に重大な情報を報告する兵士。
いや、矢継ぎ早にでもしなければ躊躇ってしまうような悲惨な情報のオンパレードなのだから仕方ないのかもしれない。
「「―――――― 」」
その兵士の報告を聞いていた王を始め、国の重鎮たちも余りの悲惨な情報に声を上げることもできなかった。
しかし何時までも停滞しているわけにもいかないのか、王国軍の将軍がその兵士に声をかけた。
「そう、か。報告ご苦労。して、第一王子殿下と第一王女殿下は、どうなった?」
先程の報告で文字通り全滅と言っていたが、再度確認しなければならないと将軍は思ったのだろう。
誰かが嫌な役目をやらなければならないのならば、率先してそれをやる。
それが、このピースメーカー王国で将軍と呼ばれる男の性質であった。
「は! 先の戦いで報告の為、早期に離脱させていた生き残った魔法使いの言によると、第一王子殿下及び第一王女殿下は、
応えた兵士も、その質問が来ることを予め分かっていたのか、淀みなく答えていく。
「そうか。分かった。……国王陛下。残念ですが」
気遣いながらも会議を進めなくてはならない。
そう言った声色を出しながら将軍は放心していた王に声をかけた。
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