「ざまぁ」異世界侵略VR~『メンヘラ・ヤンデレヒロイン』と『最強魔王ロール主人公』の修羅場劇

メンヘラ教

第一章『無自覚な異世界転移』

第一話『最後のギルメン卒業! 結果→やべえ女たちとの出会いを果たすことに!?』



 「じゃあ。今日でお別れだねゴールド君」

 「うん。お元気でエンドさん」


 会話が行われている場所は、現実離れした豪華絢爛さを持つ洋風の城であった。


 「ゴールド君も今年の世界大会頑張ってね。去年は何位だったけ?」

 「ジュニア大会では一位で、年齢無制限のオープントーナメントでは、50位だったよ」


 会話を続ける二人も現実離れした異形だった。


 エンドと呼ばれる者の姿は、二足歩行のカブトムシのような人型をしている。



 もう一人のゴールドと呼ばれる存在の姿は、もっと特殊だった。


 アニメに出てくるスーパーロボットのような金色に輝く、頭から足まで体全体を覆う全身騎士甲冑を身にまとい、背中に黄金の天使の翼をもった見た目をしていた。


 「そう。そう。凄いよな。中身は小学五年生でその戦歴! オマケに天才美少年テニスプレイヤー! 天は二物も三物も与えたか! ゲーム実況動画も人気なのでしょ?」


 エンドの並べたてられた称賛にゴールドはわざとらしく偉そうにしながら答えた。

 

 「ふ。お褒め預かりありがとう。聞きなれていますよ、特にあなたからは、まあリアル彼女からは、ネトゲの受け大分悪いけど、ね」


 ゴールドは最後の方はおどける様にしながら答える。

 直後二人は顔を見合わせ笑いあった。


 「「ははぁ!」」


 一通り笑うとカブトムシ人間のエンドが口を開く。


 「お約束のセリフだね」

 「はい。お約束です」


 エンドに答えたゴールドの声は、穏やかながらも寂しさを僅かに含んでいた。


 そんなゴールドを見てエンドは、思い出に浸るように口を開く。

 まるで最後の思い出を作るように。


 「――君と、このフルダイブ型オンラインネットゲーム『ジェネシス』で出会ってからもう五年。月日が経つのは早いな」


 「はい。俺がまだ弱くてPKされそうになっている所を、エンドさん達が正義の味方みたいに駆けつけてくれたのが出会いだった」




 「そうそう。でも俺たち悪役ロールの『PK上等ギルド』だったのだけどね!」 


 「ええ。驚きましたよ。まあ、その縁もあって俺もギルド『サタンパーティ』に入って散々に他プレイヤーや他ギルドに対してPKしまくりの魔王蹂躙プレイをしまくった。楽しかった……」




 「うん。めっちゃ楽しかった! 一時期はギルド世界ランキング10位まで上がったよね! 72人の少数ギルドなのに! プレイ人数3億人がプレイする世界一のネットゲームでだよ! 俺たちは、凄かった! 輝いていた! サタンパーティは!」


 その声は、僅かに震えが混じっていた。

 しかし聞いているゴールドは、それを指摘したりせず、あえて明るく答えた。


 「はい。本当に幸せな時間を過ごせましたね。ありがとうエンドさん」


 「ああ! そうだよ! 俺たちは幸せだった! だからこそすまない! ゴールド君! 君を最後の一人にしてしまう!」


 エンドが頭を下げながら謝罪する。

 それは、心が籠った確かな物だった。


 「仕方ないよエンドさん。元々このサタンパーティは、加入条件が『学生限定』のギルド。いずれ卒業することは、前提条件だよ。それよりも。……いえ何よりも大学受験を頑張ってお医者さんになる夢を叶えてください!」


 「……うん。ありがとうゴールド君」


 話の内容から分かるように今日はエンドのネットゲーム卒業日。


 今、彼はリアルでは高校二年生。


 そろそろ本格的な受験勉強に突入する。

 そのため今日は、別れの挨拶のためログインを行ったのだ。


 「……それとアイテムは、全部君に託すよ。好きに使ってくれゴールド君」


 「あ、そのことだけど、本当にいいの? ギルドの引退したメンバー71人分の装備品。俺が全部所有しちゃっても? これリアルマネートレードすれば、現金三千万以上は、最低でもなる」



 「いいと思うよ。ギルドマスターはゴールド君だし。俺たちの装備品をリアルマネーにしても使っても。それで世界大会とかで活躍してくれたら元ギルドメンバーのみんなも嬉しいと思うよ! 俺は嬉しい!」


 「分かった。世界大会頑張るよエンドさん」



 「うん! 頑張れゴールド君」


 その後も二人は思い出話をしながら和やかに別れの儀式は、終わった。




 「……本当に最後の一人になったな」


 別れの挨拶が終わり、エンドがログアウトした後も、ゴールドはギルド拠点に一人残っていた。


 「さて、これからの方針だけど、まず世界大会までに備えて訓練は必須として、それ以外はどうする?」


 そう言いながらゴールドは、思案に暮れる。そしてある事に気付いた。


 「あ! 今日これからメンテナンスだった?」


 それに気づき彼は、ゲームコンソールを表示し確かめる。


 「ああやっぱり。しかも直ぐだ。あと二分もない。エンドさんとのお別れ会が思いのほか長かったからか。……ほんと楽しかった」


 彼との別れを思い出しながら、ゴールドは感慨に耽る。


 「――まあ、いいかな。メンテナンスだから強制ログアウトになる、操作するの面倒だしこのままでいい……今は何もしたくない」


 そしてメンテナス時間になると辺りが光り輝き視界を白く染めた。


 「ログアウトか――」


 その言葉を残しゴールドもその輝きに包まれた。

 これが、異世界の旅立ちの光だと気づかないまま。


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