54時限目「因縁の対決【アイランド・クイズ】(その1)」
ビーチのクイズチャレンジ。
五人編成のチームに分かれ、その名の通り、クイズ王を目指して頭脳勝負を繰り広げるイベントである。
「……夏場のビーチで頭脳対決って」
今年初めての目論見。ガッカリとした表情でアカサは肩を落としている。
「ビーチっつたら、ビーチフラッグとかビーチバレーとかそういうスポーツとかじゃねえのか……あわよくばポロリとか」
「そうそう~。そのギリギリを楽しむ悩殺イベントとかだったら盛り上がると思うんだけどねぇ~」
夏場。水着の女性たちを前、男ならばそういう妄想をするに決まっている。
もしかしなくても、ソルダとアカサは勉強が苦手だ。
こんな不利なイベントに何故参加しなくてはならんのだ。今後のサークルの立場的にも接待参加はした方がいいかもしれないが、ここに来てまで勉強しなくてはいけないことに疲れがたまる。
「体を動かすのは苦手なのでね。こういうイベントは助かる」
その真逆、ロシェロは最早“勝ち誇ったような表情”で目を光らせている。
彼女は学園の中でも一二を争う天才の一人だ。負ける要素がないとでも思っているようである。
「僕も、こっちの方が助かります」
クロードもスポーツが得意な方ではない。頭を使うだけのイベントならば、疲れることもないと胸をなでおろす。
「「ガリ勉共はいつも通りだねぇ……」」
クロードとロシェロの反応に二人は呆れるばかりであった。
……五人編成。集まった一同はそれぞれチームに分かれた。
シャドウ・サークルは二チームに分かれている。クロードはアカサ・ソルダ・ロシェロ・ブルーナの四人といつも通りの五人チームで。
ソルダの舎弟である不良達も五人そろってチームを組んでいた。結果的に人数は足りていたようである。
ジーン・ロックウォーカーは、誘った四人と共にチームを組んでいる。
モカニ・フランネル。ゴォー・リャン。マティーニ・フィナコラダにエキーラの四人……ラグナール学園でもそれなりに有名人の連中が集まったオールスターチームだ。
『それでは参りましょう! まずは●×クイズのお時間だ!』
司会からオープニングステージの発表だ。
『五人の力で正解を見つけよう! 合計ポイントは次のステージに影響するぜー!!』
司会の話によれば、この後にも3つほどクイズ企画が控えているようだ。
どのようなクイズイベントが控えているのか……まずはクイズの代名詞の一つである●×クイズ。一同は深呼吸をする。
『第一問!』
早速、最初の問題が出題される。
『近代にて使用されているハンター御用達の布の収納袋。その素材に使われているのは……“ドラゴンの肺”である! ●か×か!?』
((わっからねぇええッ……!!))
出題される問題はもしかしなくても、学園で習っていないような内容である。
まだ学園の一年生であるアカサは勿論の事、万年馬鹿であるソルダが分かるはずもない。一問目からアカサとソルダは白目で固まるばかりである。
「●だな」「●ですね」「●だ」
……一方、残りの三人は何の迷いもなく●のゾーンへと歩いていく。
((ガリ勉どもめ……!!))
何の迷いもなく●へと進んでいく三人の元へと歩いていくアカサ達。さすがは秀才達、学園で学んでいないことも、ある程度頭に入っているという事か。
___それからというものの。
___秀才三人組の活躍により、難問の●×クイズを次々と正解していく。
現在、六問中六問正解。ここまで全問正解ということもあって、あっという間にトップ候補へと躍り出ることになる。
(いやぁ、秀才達のおかげで楽できます)
(チーム戦で助かったぜ……)
途中から、アカサとソルダの二人はクロード達におんぶにだっこを選ぶことにした。
勉強が苦手なこの二人も、チームメイトが天才なのなら考える必要もない。対して頭を使う事もなく、ポイントを稼いでいく。
(そういえば、先輩方のチームは?)
(全問不正解だとよ)
一方、ソルダの舎弟達のチームは全問不正解のようである。
分からなかったとしても、直感で正解することはある。正解率五十パーセントをこうも連続で外すのは運が悪いとしか言いようがなかった。
(んで……優勝賞品はなんて言ったっけ?)
ソルダは再度、アカサに確認する。
(ジーン先輩とあの豪華船で世界の珍味を食べまくれるらしいですよ?)
(いいねぇ……)
(こんだけ楽やって、豪華ディナーにありつけるとか……今日は本当にラッキーですねぇ。いっひっひ)
最早、小悪党のような表情を浮かべる二人組。
この三人がいれば優勝は決まったようなもの。余程の難しい問題が出ない限りは脱落することもないだろう。勝った気でいる二人は大笑いするばかりだった。
「……あの二人、さっきから黙って着いてきてばかりのような気が」
もしかしなくても、それに感づいている人物はいた。クロードである。
「仕方がない。出題される問題は教科書にも載っていない」
そっと、別のチームにブルーナは視線を向けている。
「我々くらい、独学をしていないと解けない問題ばかりだ」
そのチームは……クロード達と同様に、今のところ“全問正解”を続けているチーム。
ジーン・ロックウォーカーのチームだ。
あのチームにも、学園で一二を争う天才がいる。ジーン本人とモカニ・フランネル。
「我々でどうにかしてあげようじゃないか。あの迷える子羊をどうにかしてあげようじゃないか」
「……なんか、良いように使われてる気がするんですよね」
優秀な先輩として頼られているというよりは……便利な頭脳として利用されている気がするだけ。クロードは何処か複雑な表情を浮かべながら、次の問題に控えることにした。
『第七問!』
解答者全員が再び身構えた。
「「「……ッ!!」」」
どのような問題が来ようと答えてみせる。クロード、ロシェロ、ブルーナの三人も一斉に身構えた。
『出題者である私の今日の朝ご飯は目玉焼きだった。●か、×か』
(((分かるか、ボケェエーーーッ!)))
ここに来て立ち往生。クロード、ロシェロ、ブルーナの三人は心の中で発狂した。
((知るかぁあああああッ!!))
同様、ジーンとモカニの二人も同時に白目で発狂していた。
何という事か。ここに来てまさかの“運試し問題”である。
頭脳も何も関係ない。まさかの直感クイズに固まることしか出来なかった。
「……多数決を取りましょう」
緊急会議だ。
クロードはチームメイトである四人を集めた。
「考察ですが、あの人はこのイベントのスタッフとして、リハーサルなど忙しかったはずです。目玉焼きなんて焼いてる暇あると思いますか?」
「待て、彼は実家暮らしの可能性もある。朝飯を作っているのは母親という可能性も」
「時刻は今12時少し過ぎ。会場の準備など考えて朝からここにいると思われる。軽い食事で終わらせていると読む」
「いや、母親もスタッフというオチで、現場にて調理したという可能性も」
「弁当という線はないんですか。いや、でも弁当に目玉焼きって聞いたことは……」
「「だぁああああッ! 面倒くさい!」」
アカサとソルダは頭を掻きまわしながら“●”へと移動する。
「こんなの元より運試しなだけのクイズでしょうが!」
「勘でいいんだよ! 勘で!!」
考えるのも面倒くさい。頭を痛めるよりも先に、二人は勝手に●へと前進した。
「……それもそうか」
「ですね」
元より、これはタダのクイズイベント。そんなにガチに考える必要もない。クロードとブルーナは変にヤケになっていたことを認め、冷静になって二人の元へ向かう。
「待て。じっくりと考えるのだ。私は負けるわけには」
「いいから、コッチ!!」
いまだに頑固なロシェロに関しては四人がかりで連れていく。
小柄なインドア少女相手なら腕力で勝てる。全員、●に移動した。
『正解は●でーす! お見事!』
……ホッと胸をなでおろす。
こんな直感クイズがまた来るとでもいうのか。一同は少しばかり、頭を悩ませるばかりだった。
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