転職者インタビュー

hamapito

転職者インタビュー

『転職者に聞く!! 私が転職をしたキッカケはこれだ!!』


 ——今日はよろしくお願いいたします。

「はい、よろしくお願いします」

 ——このインタビューの趣旨としましては、これから転職活動をされる方のために経験を語っていただくというものです。こちらの質問に答えてくださるだけで大丈夫ですので、どうかリラックスして答えてくださいね。

「わかりました」

 ——では、早速ですが今の仕事に就いたキッカケは?

「あー、センパイに誘われたからですね。適正があるって。ちょうど前の仕事をやめたかった時で、タイミングが良かったのもありました」

 ——以前のお仕事を辞めた理由をお伺いしても?

「あ、いいですよ。もうやめてますし。よくあるパワハラってやつです。とにかく上司がひどくて。手は出されないですけど、言葉の暴力がもうね、人として扱ってもらっていないというか、まあそんな感じで。精神的に参っちゃって」

 ——そうなんですね。それは大変でしたね。その時にセンパイに出会ったということですか?

「そうです、そうです。その働いていた会社が入っているビルの屋上でお会いしました」

 ——屋上、ですか?

「ええ、そうなんですよ。ちょっと俺もびっくりしたんですけど。でもまあ仕事内容聞いたら納得しました」

 ——そうですか。そんな偶然もあるのですね。

「偶然というか、センパイは俺がそこに行くことが事前に知らされていたというか……まあそんな感じで出会いました」

 ——そ、そうですか。えっと、センパイに誘われてすぐに転職を決意されたんですか?

「いえ、実は仕事内容を説明されても初めはよくわからなくて。どうしようかな、と迷っていたのが正直なところでした」

 ——でも、最終的には決断されたんですよね? それはどういった理由ですか?

「転職する上で何が大切かな、って自分なりに考えたんです。そしたら自分の経験が活かせることが一番かなって思いまして」

 ——なるほど。それは大切なことですよね。

 ブー、ブー……

「あ、すみません。仕事の呼び出しです」

 ——どうぞ、お気になさらず出てください。

「すみません、ありがとうございます。……もしもし。はい、はい、あー駅ですね。十分後ですか? わかりました。向かいます」

 ピッ。

「すみません、仕事入っちゃったので。続きはまた今度でいいですか?」

 ——ええ、大丈夫ですよ。今日はありがとうございました。

「こちらこそありがとうございました。では、失礼しますね」

 そう言って彼は壁に立てかけていた大きな鎌を肩に担いで出て行った。



 後日、彼のセンパイに『適正』について質問した。

「出会った瞬間に直感しましたね。彼ならできるって。普通、どんなに強く決意していても最後の一瞬は誰でも迷うものなんですよ。でも、彼にはそれがなかった。屋上にたどり着いてからほんの数秒でした」

 ——数秒?

「ええ。自分の命を終わらせるまでの時間です」

 ——それが『適正』ですか?

「そうですよ。他人より自分の命を終わらせる方が何倍も難しい。だから彼には適正があったんです」

 ——そういうことでしたか。よくわかりました。


 今回取材させていただきました『死神』職は、中途採用を積極的に行なっているとのことでした。詳しくはこちらまでご連絡ください。


 次回は『天使への転職』を掲載いたします。



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