第2話 〇〇がないと1ページ目でブラウザバック

1ページ目を開くなりブラウザバックされてしまう小説があります。


内容は一切関係ありません。


それは余白のない小説です。


例えばこんな感じです。


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例)

「もうじきこの家は取り壊される。その前に、すみずみまで映しておきたい。私はかじかむ手にデジタルビデオをかかげ、冷え切った二階の端から端まで歩き回っていた。東南の八畳間に足を入れる。赤ん坊の頃から家を出るまでの十八年間、私の部屋だった和室だ。土壁の中にぽつんとアルミサッシの窓枠が空白を作っていた。窓ガラスをこすって霜をおとすと、ちらちらと白いものが舞っている。粉雪だ。小さな白い粒達が、灰色の空をスケートリンクにして五回転やトリプルアクセルを繰り返している。一階から妻と妹の歓声がした。階段の音を鳴らしながら降りていく。彼女達の手元には厚紙の表紙つきの写真があった。桃色に桜模様の背景に、小さな人が白い着物に紫の袴を穿いて、ちんまりと立っている。」


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webで面白そうな小説を見つけて、1ページ目を開けたところこれだと、読む前に、たくさんの文字に圧倒されて「もう結構」と思ってしまいませんか? 


こういう投稿のしかたをしている人は結構多くて「もったいないな」といつも思います。


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こういう小説の投稿のしかたをしている人は、縦書きの小説にとらわれているのだと思います。


たしかに、余白一切なしでも縦書きだとまったく問題なく読めます。


谷崎潤一郎の『春琴抄』という余白が一切ない、句読点すらろくにない小説がありますが、難しい言葉をたくさん使っているのに、とても読みやすくて、さすが文豪の作品です。


でも私が読んで感動したのは、縦書きで読んだからです。


横書きだとおそらく非常に読みにくくて、途中で挫折してしまったでしょう。


また私は以前、縦書きがメインのサイトで読んだ小説に非常に感動したのですが、同じ小説を別のサイトで横書きで読んだとき「えっ! 全然面白くない! こんなんだったっけ?」と思ったことがあります。


小説、とくに描写たっぷり装飾が多めな文学性の高い小説は、とことん横書きに向きません。


ためしに青空文庫で、好きな小説を横書きのまま読んでみてください。


おそらく縦書きで読んだときの感動はどこへやら? 読みにくすぎて、すぐに嫌になってしまう、ということになると思いますよ。


私は小説投稿サイトは縦書きメインにするべきだと思っているぐらいなのですが、webの世界は横書きがメインなので、小説投稿サイトが縦書きメインになるのはおそらく難しいでしょう。


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ではどうしたらよいでしょう。


①方法1 句点(「。」)ごとに改行。1行あける。


例)

「もうじきこの家は取り壊される。


その前に、すみずみまで映しておきたい。


私はかじかむ手にデジタルビデオをかかげ、冷え切った二階の端から端まで歩き回っていた。


東南の八畳間に足を入れる。


赤ん坊の頃から家を出るまでの十八年間、私の部屋だった和室だ。」


少し読みやすくなったかな?


でも3行目は文が長いためか読みにくくありませんか?


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②方法2 句読点ごとに改行。句点(「。」)ごとに1行あける。


実は私は、投稿するときは句点(「。」)だけではなく、読点(「、」)でも改行しています。


(ちなみに「、」まで9文字以下の場合は改行しません。「、」まで9文字を超えた場合のみ改行しています。これはあるインターネットビジネスの成功者のメルマガの書き方を参考にしています)


さらに「。」では改行して一行あけています。


こういうことですね。


句点「。」・・・・・・・・・・改行して一行開ける。

読点「、」・・・・・・・・・・改行するが一行開けない。


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読点でも改行バージョンの例)

「もうじきこの家は取り壊される。


その前に、すみずみまで映しておきたい。


私はかじかむ手にデジタルビデオをかかげ、

冷え切った二階の端から端まで歩き回っていた。


東南の八畳間に足を入れる。


赤ん坊の頃から家を出るまでの十八年間、

私の部屋だった和室だ。」


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文字が多すぎて読むのがなんかダルイ、というのが解消されたと思いません?


でもちょっとやりすぎかもしれませんね。


あるサイトではこの句読点ごと改行を「こんなのはバカの文章の書き方」と罵倒している人がいました。


けれども私の文章はかなり純文学よりで固いので、これぐらいしないとラノベがメインの投稿サイトでは受け入れられないと思っています。


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かつては私も改行一切なし、余白一切なしで投稿していました。


でもあるときランキング1位の作品と自分の作品を見比べて「同じ小説なのに、全く別物に思える。この小説が1位のこのサイトで、私の小説が読まれるわけがない」と思いたって、この句読点ごと改行スタイルに変えたのでした。


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ちなみにこのエッセイでは読点ごとの改行はしないで、句点ごとの改行にしています。


こういう実用的な文書は横書きと相性がいいので、そこまで余白を開ける必要がないからです。


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