あなたはいない。

第1話 その報せは突然に。

　音子はいつも通り真志に奉仕し調教を受け愛情を受ける。

　それは真志がかつて隣人であり幼馴染であり恋人であった福江光恵に裏切られてからずっと続いていた日常。

　傷心で放心状態の兄・真志を癒す名目と、これまで墓まで持っていこうと想っていた気持ちが爆発した結果であった。

　初体験を自慰の延長のように済ませた音子は、正気に戻った真志により深い愛情を受ける事になった。

　それがたとえ世間では許されない行為だとしても、感情は、心は押し殺せなかった。

　裏切った元恋人や元親友への復讐を果たし、そこに至るまでに増えた奴隷、かつての元恋人光恵や音子のクラスメイトである山川苺。

　ご主人様と奴隷という関係ではあるが彼らは充分倖せを得ていた。

　苺は完全に音子に心酔しているので共同奴隷というよりはほぼ音子の奴隷ではあったが。

　真志と音子の関係が両親にバレた時、両親は二人の覚悟を説いた。

　その結果、世間に何を言われようとも思われようとも結婚出来なくても一緒にいると。

　アダルトグッズメーカーに勤める父と看護師をしている母。

　日本という国家の中において親としての意見は反対、ただし一人の人間としては応援すると回答した。

　世間的に結婚は出来ないので家族の間でだけ結婚式もどきを家で挙げた。

　この時既に音子のお腹の中には子供がいた。

　卒業前のクリスマスの時のが着床したものと推定される。

　聖夜は性夜となっていた。

　６月９日、二人は法律上は兄妹であるが、二人の間でだけは夫婦兼主と奴隷になった。

　日付の理由は少し性に興味がある人ならなんとなく察してくれるものだと想定する。

　ジューンブライドなんてのは雨期ではないヨーロッパだからこそなのだが、何でも欧米様欧米様な日本はそういった形だけ名前だけいただくのがお好きだ。

　日本の６月なんてのは梅雨真っただ中なため、結婚式なんて向いていない。

　その後産まれたのが双子の兄妹。

　兄は真優（まゆ）、妹は真音（まのん）

　あまりＤＱＮ（ドキューンネーム）にはしたくなかったのが、音子が最初の子は２人の名前の漢字を使ったものにしたいとの事でこのように命名された。

　兄は優しくあれと意味をこめて優の字を。

　妹は２人の漢字をドーンとくっつけたらこうなった。

　両親は真志と音子に触発され、関係がバレた後に３人目が欲しいとなりハッスルし、翌年３人目が生まれている。

　年の離れた弟が誕生していた。

　さらに４人目が現在母のお腹の中におり冬には出産する予定である。

　どうやら両親は結婚前に子供は何人欲しい？という父の問いに対して母が答えた、野球チーム出来るくらい？を今更ながらに実践しようとしているのだろうか。

　両親は幼馴染で従兄妹で同級生、看護学校在学中に出産しているため親が２０歳の時に真志は生を受けている。

　つまり関係がバレた時両親はまだ３７歳。

　３８歳で３人目の出産、４０歳で４人目の出産予定である。

　検査の結果、女の子だと言われている。

　第二の真志・音子にならないか気にはなっていた。

　そんな両親だからこそ、真志と音子を応援するなんて言ったのだろう。

　たとえ日本が許さなくても他の誰も許さなくても、私達は赦すと。

　その後の自称夫婦・主従関係はうまくいっており、子供たちは元気に成長していった。

　初めて喋った言葉が「ばぁ～ぃぶ」という事を覗けば。

　パパとばぁばがごっちゃになったのだろうと納得する事にしていた。

　真優と真音がもうすぐ２歳となり、現在新たに新しい命が宿っており再び真志と音子は喜んだ。もうすぐ出産である。

　それが１本の電話で崩れ去る。

　真志が―――を庇い暴漢に刃物で刺された、そして運ばれてた時にはもう微かに喋る事しか出来なかったという看護師である母からの電話だった。