第四話 戦慄! 瓜二つの蒼き挑戦

「なぁ少年よ」

 銀杏の木前に敷いたゴザの上に座って、その幹に寄りかかって遠くを見ていた大吾が隣の少年に聞いた。

「なんでしょう?」

 体育座りになって図書館で借りてきた戦車操縦教本なる書籍を読んでいた少年が応えた。相変わらずの学生服姿なので本日も土曜日である。

 少年はこの公園へ始めて来てからなんやかんやあって、大吾が銀杏の幹に寄りかかって半分空いたゴザのスペースに座らせてもらえるくらいの仲にはなった。その間には大吾=レッドが全く登場しないエピソードなどもあったが(前回とか)まぁそういうことだ。ちなみにリンカーンもこの公園を定宿にすることに決めたようで、大吾と少年の間で丸くなっている。

 少年の将来の夢は陸上自衛隊の戦車乗りになることだが、元戦車戦隊の大吾に戦車の乗り方を教えてくれる先生になってもらうことは半ば諦めていた。しかし、生きるにおいて大切なことを教えてくれる人生の師匠としては着いていくことにした。だから今週もこの公園へとやって来ている。

 というわけで戦車の乗り方に関しては自己学習にすることにしたのだが、少年が分らないことがあると隣の大吾が教えてくれるようにはなっていた。

 大吾としても、それだけ一生懸命未来を目指そうと頑張っている者を無碍にもできず、少年が読んでいて意味の分らない用語などは教えてあげたりしているのだ。

 戦車戦隊の面々は戦車の操縦に関しては本物の戦車乗りには敵わないだろうが、戦車を取り扱う知識に関しては絶対的なものを持っている。「車内のどのレバーを引けばこうなる」等の知識は豊富にある。

 そんな一応は指導者となってくれた者が、少年へと尋ねた。

「世界は平和になったと思うか?」

 遠くを見ているまま大吾は言う。

「……」

 藪から棒に物凄く重過ぎる質問を少年はされてしまった。

「……大吾さんたち、ダイセンシャーのみなさんが平和にしてくれたんじゃないんですか」

 そう返すのが少年には精一杯であった。

「いや、俺の訊きかたが間違っていたな、もう一度言葉を変えて質問をしよう」

 しかしその少年の言葉は彼にとっての欲しかった解答ではなかったようだ。彼は質問自体を変えた。

「世界は変わったかと思うか?」

 それは先ほどの質問より更に抽象的で、中学生という時間軸で生きている少年には答えるのはほぼ不可能な質問に思えた。

「……わかりません」

 だから少年は、自分の素直な気持ちで答えた。

「そう、わからないんだよ。俺にもわからん」

 しかしそれが一番の解答だったのだろう。わからない、という答え。「平和になったか?」と言う問いに対してもわからないという答えが欲しかったに違いない。

「鉄車帝国デスクロウラーが現れる前の世界と、それが崩壊して消え去った後の世界を比べてみて『どこか変わったのか?』と言われりゃ、ほとんど変わっていない」

「……」

「俺たちが住んでるこの街は全長150kmもある莫迦デカイ舟の上に作られた住処。世界を丸ごと水没させる大災害から逃れるために作られた、言うなれば方舟都市」

 大悟が自分たちが生きる場所を語る。

「空も宇宙そらも飛べないが、いざとなれば水に浮いて水災を凌げる。大地が水に浸かっている間、水上に仮設都市を築いて生き長らえる必要もない。人間は恒久的な防護手段を手に入れた。どこかの誰かが水没の回避手段を思いついて実行しても、ここで生きるならばそれにも気付かず変わらぬ日常をずっと送り続けられる、匣の中に守られたまま」

「……」

「しかし永久に方舟に乗っていて良いものなのだろうか。しかもこの方舟を作ったのは巨大な蠍だ」

「さそり……」

 大悟は戦車戦隊という超常集団に居たからか、この都市の受け皿となる巨大宇宙船を作ったものの正体をある程度知ることになった。蠍の形をした機械が何百年という時間をかけて首都艦を含めた水災回避用の船を数隻作り出し、多くの人々がその甲板上に移住し都市を作りあげた事実を、大悟は過去の戦いの中で知った。

「蠍と蛙のお伽話を知っているか」

「はい、小さい頃なにかで読みました」

「そうか」

 蠍と蛙。

 川を渡りたいと思った蠍が蛙に「背中に乗せてくれ」と願う。

 蛙は「君は刺すからやだよ」と断る。

 蠍が「そんなことするわけないじゃないか。乗っているときに君を刺したら俺もおぼれるじゃないか」と説明する。

 蛙は「それもそうだな」と蠍を背に乗せて運ぶのを了承する。

 しかしもうすぐ向こう岸に着く、というところで蠍が蛙を刺してしまう。

 蛙が「こんなことをして二人とも死んでしまうだけなのになぜ刺してしまったんだ」と言う。

 蠍は「しかたがないんだ、自分はサソリだから、その性質は変えられない」と答えると、二匹とも川に沈んだ。

 蠍は今の生活を投げ出してまで新天地を求めた。それは一世一代の夢だったのかも知れない。

 蛙は疑いつつも見返りも求めずに蠍を運ぶ事を了承した。以前から友人だったのかも知れない。

 何より蠍に自殺願望など微塵も無かった。それでも蛙を刺してしまった。それが蠍の性だから。

 それが身の破滅に繋がろうとも無防備な蛙の後姿を無視する事が出来なかった。

 夢も友人も自分の命も捨てる結果になっても蠍は蠍である事を選んだ。

 蠍が死守したものは帰属意識か、それともただの悪癖か。一体どちらなのだろうか。

「この街の土台は蠍が作り出した場所、動く工場みたいな機械仕掛けの大蠍がな。そんなこの場所の正体を知るとこう思う時もあるんだよ、鉄車帝国を俺たちが滅ぼしたのは本当に良かったことなのか、と」

 大吾が言う。

「あいつらこそこの腐った世の中を変えて、永遠に平和な世界を作れるヤツらだったんじゃないかって。だから俺たちは取り返しの付かないことをしてしまったんじゃないかって」

 それは誰に向けての言葉なのか。少年に向けての言葉ではないだろう。やはり自分自身に対する自戒なのか。

 なにが正しくてなにが悪いのか。事後になってから問われる意味。

 自分の全てを懸けて戦っていたあの日々はなんだったのか。

「世界を本当に変えたければ、一年に一回ペースで悪の組織が現れて、それに対抗するための正義の戦隊が現れて、その戦いが一年ほど続いて悪の組織は打ち倒されるが、次の年にはまた新しい組織が現れて新しい戦隊もやってくる――そういう繰り返しを延々と続けていくぐらいのことをしなければ変わらないんじゃないか……そんな風に思う」

 新しい侵略組織の創生、それへの対抗組織の育成。しかもそれを年に一回ごと。

 それはとてつもない力が投入され続けることになることだが、世界を揺るがした戦いの中心にいた人物は、それぐらいのことをしなければこの世界は変わらないという。それだけの循環を強いらなければ変わらないもの。

「あの……新しい悪の組織が現れたらまた大吾さんたちが戦えばいいんじゃないんですか? 大吾さんたち凄い強いんですし?」

 だがせめて、正義の対抗組織だけは現状で十分なのではと少年も考える。

「俺たちも強いが、戦うべき敵組織も恐ろしく強かった。毎回の戦いでお互いギリギリのせめぎ合いで力を徐々にすり減らし、最後の戦いではなんとか俺たちが勝てた。それだけだ」

 大吾の言葉。戦いの中心にいた人間だからこその言葉。

「それに次もまた戦おうっていうなら一番の問題がある」

「一番の問題?」

「ロボだ」

 少年の疑問に大吾は即答で返した。

「一年通してダイセンシャオーを使ってきたからな。最終決戦間際ではあちこち相当ガタがきてた。あれを翌年以降も使おうってんなら完全なオーバーホールを施すか、新たに二号機を作った方が良い。そしてロボを丸ごと作り変えるんなら戦隊だって、最初から新ロボの操縦を学ばせた人員で再構成の新しい組織を用意したほうが良いだろうって話だよ」

 戦車戦隊は戦車怪人を制御装置として取り込んで起動する大怪人に対抗するスーパーロボットも含めての組織だ。その円滑な運用を考えれば、新たな侵略組織が現れたのなら、第二の戦隊を用意した方が良いのはわかる。戦艦などの軍艦にしても常に単艦で行動しているわけではなく、ほぼ同じ能力の第二第三の同型艦が必ず存在し、複数の艦によって遊弋・訓練・保養を使い分けている。

 ダイセンシャオーを現状の他の戦闘兵器に例えるならそれは艦艇であろうし、艦艇が修理の名目で入渠した場合は、半年から一年くらいの時間は必要となる。つまりその間、戦えない。

「ブルーが死んだ話はおまえにはしたっけか?」

「いえ。……でも、ピンクさんのてももさんが話してくれました、この間」

「そうか、あいつ余計なことを」

 大吾はそう愚痴るが「憎まれ役は俺一人でイイっつうのに」と、小さく囁くのが少年には聞こえた。

「まぁ聞いているなら話は早い」

 隣で丸くなっているリンカーンの頭を軽くなでながら大吾が言う。

「ブルーが死んだ時、一番喜んだのは誰だと思う?」

 ブルーセンシャーが戦死していた事実。それは今まで少年が聞いていた話の中では一番のショッキングな出来事だった。

 そしてそれを一番喜ばしいと思う者。

 誰だろう。生き残りのデスクロウラー戦闘員だろうか。しかし今まで三回遭遇してきた元戦闘員達の戦いぶりから見ていると、どうもそんな雰囲気は感じられない。

 彼らもまた一般兵であろうけれど戦士であろうし、例え敵であったとしても同じ戦士が死んだとして、弔う気持ちはあろうけど、嬉しさを出す気持ちがあるだろうかと少年える。

 少年がそんな考えに至るのは少年が未熟ながらも戦士として目覚め始めているからだろう。何しろ戦車に乗って故郷を守る陸兵の一人になろうと夢見ているのだ。

 しかし大吾はそんな未来の戦士候補に向けて、辛辣な言葉を告げる。

「この国の政府だよ」

「……え?」

 少年の体がその言葉を受けて硬直する。

「俺たちは、現有戦力じゃこの国の軍隊じゃとても敵わない強さの鉄車帝国と代わりに戦ってやってたんだ、本来はこの国が保有する戦力で戦うべき相手と。そして、鉄車帝国という戦うべき相手が消えてしまった時、後にはとんでもないぐらいの戦力が残ってしまう。しかも個人戦力という形で」

 遠くを見ながら大吾が言う。

「俺たちは強い力を持ったまま、心も体も疲弊してしまった。他人から見たら一番取り扱うのに困る状態だ」

 その視線の先には整地作業がいまだに続く最終決戦の地、火力発電所跡がある。

「まぁ自国民を守るという大前提があるわけだからな、政府には。それもわからんでもないけど」

「……」

「やっと見つけたわよ」

「――む?」

 大吾と少年が話し込んでいると、それを遮るように女性の声が聞こえた。二人が声のした方に顔を向けると、三人の人物が立っている。覆面に全身タイツと言う怪しすぎる格好の男二名と、その間に女性が一人。

 その女性は露出の激しいバトルスーツに身を包み、身体の各部に機械内臓のプロテクターや怪しい動力パイプの繋がった部分鎧などを身に着けている。左半身にはマントを羽織っていて、右手には当たると良い感じに痛そうな鞭を持っている。

 その姿は正に悪の組織の女性幹部そのものの格好であり、両脇に従えるのもデスクロウラーのはぐれ戦闘員であった。

(え? 新しい鉄車帝国の幹部!?)

 その女性の姿を見た少年が驚愕の表情になるが、隣の大吾は落ち着き払った声を出した。

「――おまえは、疾風弾」

「え!? しっぷうだん!?」

 その名前を聞いて少年が更に驚く。

「疾風弾って、ブルーセンシャーの疾風弾火雪しっぷうだんひゆきさん!?」

 疾風弾火雪。ブルーセンシャーとして戦った戦車戦隊の一人。そして最後の戦いで少女を守るため消えてしまった戦士の名。

「でもブルーセンシャーって男の人だったと思いますが!?」

 しかし少年は戦死したはずの人間が現れた事実よりも、そっちの方に違和感を覚えてしまった。一般人の動画撮影によって残された記録には、ブルーは男性隊員の一人として映っている、が?

「ふふふふふ、あはははは! やっと気づいたか、我が名は疾風弾雪火しっぷうだんせつか! 火雪の双子の姉さ!」

「お姉ちゃんいたんですか!? しかも双子って!?」

 相手の発した事実に少年は驚愕する。それにしても気づいたというよりも、雪火の方が説明してあげたような気もするが。

「……というか前から思ってたんですけど、疾風弾ってこの国の財閥の中にも同じような名前があるような気もするんですけど、双子のお二人はそこの関係者かなんかなんですか」

 少年が隣の大吾に訊くと

「疾風弾財団の前総帥の実の子だ」

 と、さらりと言ってのける。

「……前の総帥の子ってことは、今は……」

 少年は物凄い怖い考えになって口ごもってしまったが、大吾がその先を代わって告げた。

「あいつが疾風弾財団の現総帥だ」

「……なんか株主総会的な映像で見たことあるような気もします、あの女性ひと

 今から思うとその映像の真ん中に「戦車戦隊のブルーに良く似た人がいるなー」とも思っていたが、双子の姉だったわけだ。

「というか一番偉い人がそんな格好してて良いんですか」

「うるさいわね! 悪の幹部っていったらこうでしょ!」

 少年の口から思わず出た言葉に雪火が強く反論する。両脇のデスクロウラー戦闘員が賛成するようにうんうんと頷いている。デスクロウラー総帥も一般の目からしたらかなり奇抜な格好をしていたので、悪の組織にとってはこういう格好が正装なのかもしれない。なんだかプロレスラーみたいですね。

「雪火さんは火雪さんの双子のお姉さんなんですよね。じゃあなんでそんな戦闘服でこの場所に?」

 穏やかな雰囲気での登場とはとても思えない雪火に対して少年が訊く。

「我が目的は戦車戦隊の完全壊滅」

「完全壊滅……」

 少年がその言葉に思わず息を呑む。

「我が弟をむざむざ戦死させた弱き組織など、もはやこの世界には不要。我が手で痕跡残さず消し去ってくれる」

 それは戦死した弟の怨みを晴らす私怨によるものなのだろうかと少年は思ったが、何か少し違うようにも思う。第一、まずは怨むべきは直接手を下した鉄車帝国であろうし、しかも雪火はそこに属した元戦闘員と徒党を組んでここに現れている。

「このデスクロウラー戦闘員は?」

「外人部隊として招いているのよ」

 雪火の言葉に元戦闘員が「クロウラー」と答えている。目的は同じなので共闘も容易いのかもしれないが、なんだか他の目的もあるような気も少年にはしてきた。

「……」

 そんな第三勢力として現れた雪火と少年の掛け合いの間、大吾は静かにしていたのだが、その大吾がなんだか自分のこと(特に体)を注視しているのに、雪火は気づいた。

「なによジロジロ見て。あたしがあまりにもセクシーすぎて見惚れちゃうのかしら?」

「いや、あんたが美形でスゲェ良いプロポーションなのも認めるんだが」

「なによ、おだてても容赦しないわよ?」

 といいつつも、そんな風にいわれて悪い気はしない雪火だが

「でもなんかイケメンが女装してるみたいでなんか変だな、おっぱいデカイけど」

 大吾が今までずっと見ていた感想を述べると雪火はふらっとよろめき、四つんばいになって倒れてしまった。「クロウラー!?」と両脇の戦闘員が心配になって声をかける。

 ダイセンシャーのブルーといえば、当時からかなりのイケメンであると噂されており実際にもイケメンである。その双子の姉なのだからやっぱりイケメンである。そんじょそこらの男よりよっぽど男前だ。

「ええそうよ……自分だってわかってるわよ。いっくら化粧しても似合わないから今日だってスッピンよ!」

 俯いたまま怨み節のように、呪いの言葉が地面から上ってくる。コスチュームから半分ぐらいはみ出している形の良いお尻が、怒りでぷるぷる震えている。

「中高と2月14日には最低百個はチョコレートもらってたわよ毎年! こんちくしょう!」

 多分彼女の場合、学生時代はその立場上お嬢様学校に行っていたはずであり、そんな閉鎖空間にいる女子たちにとってはこんな男性っぽい顔の美人がいれば、歪んだ恋愛対象とされても仕方の無い処である。

「いいじゃんモテモテで」

「同姓にいくらモテたって嬉しくないわ! って、そうじゃない!」

 雪火はその叫ぶ勢いのまま再び立ち上がった。

「もう容赦しないわ、絶対あなたは倒す! デスクロウラー戦闘員よ、このウスラトンカチに鉄槌を下してやりなさい!」

「クロウラー!」

 雪火の言葉に二人の元戦闘員が待ってましたとばかりに声を合わせて、前に出る。

「やれやれ、本日もバトルの時間か」

 大吾が立ち上がりながらゴザを出て前に進む。少年もリンカーンを頭の上に載せながら大吾に続いた。

「少年、おまえは下がってろ」

「でも相手は二人、ブルーのお姉さんを入れたら三人ですよ、応援を呼んだ方が」

「なめるな」

 イエローなりピンクなり呼んだ方が良いのではと思って言った少年の言葉を、大吾が多少の怒気を孕んだ声で切った。その迫力に少年の動きが全て止まる。

「俺はこれでも、レッドセンシャーだ」

 数々の修羅場をくぐり抜けてきた正に一人の修羅が、その背中で応えた。

「す、すみませんでした!」

「わかったら早く後ろに下がれ、邪魔だ」

「はい!」

 少年が後ろに下がるのと同時に大吾がポケットから変身道具を出す。

「変身!」

「クロウラー!」

 そして戦闘員も二人同時に変身を行った。

 二人とも懐中電灯型秘密道具を出すと、揃って発電所後の現場へと照射する。本日は蟹型アウトリガークレーンと双腕型解体機が犠牲になった。秘密道具に粒子となって吸い込まれた履帯式重機車両の力を取り込んで二人が変身するが、二人が前後に連なるように移動するとまとめて大きな光に包まれた。そして

「……なんだこいつは?」

 先にレッドセンシャーへの変身を完了していた大吾が、現れ出でた戦車怪人を前にして思わずうめいた。

 トレーラーヘッドと呼ばれる大型トラックの前半部分が走っているような輸送車が、後部にキャリアーを牽引している通常運用形態をセミトレーラーという。これは町中でも良く見かける輸送車両であり、戦車的にはタンクトランスポーターがそのものズバリな形状をしている。

 戦闘員二名が同時変身した怪人は、大型戦車サイズ二台の車両を前後に連結してそのセミトレーラーのような状態にした長大な車両が立ち上がった形をしていた。砲塔を搭載している後部車両の背面だった場所に足首が付き、前部車両のキャタピラ両サイドから腕が生えていて前面に頭部が付いている。そして二台が連結している部分から前部車両が前に折れ曲がり、蛇が鎌首をもたげるような体勢になっている。横から見ると数字の7のようなそんな形だ。

『怪奇、150トンセミトレーラー戦車男』

「長ぇ!」

 渋い声の説明に思わず大吾が突っ込んだ。体も長けりゃ名前も長かった。

『説明しよう! 彼は米軍が第二次世界大戦終了後に計画した牽引式戦車の怪人なのだが、設計図面から全く出てこない計画車両なので形式番号も無ければ車体愛称も無い。だからその計画名のままの150トンセミトレーラー戦車男なのだ。しかして間の「セミ」を取って「セミ男」でも良かったのだが、それでは別の怪人になってしまうので今回は略称は無しだ!』

 渋い声が今回も長文で説明してくれた。いつもありがとう。しかし本当に誰の声なんだろう?

「セミセミー!」

 その150トンセミトレーラー戦車男自身はそれでは長いので、今回は見送られた略称っぽい叫び声を上げている。

「さぁやっておしまい150トンセミトレーラー戦車男!」

「セミセミー!」

 一回も噛みもしないで澱みなく怪人名を言った雪火に送られて、150トンセミトレーラー戦車男がレッド=大吾へと迫る。

「セミセミー!」

 怪人が雄叫びを上げながら、前に向かってドウ! と倒れた。いきなりなんだ? とレッドは訝るが、それは人が四つんばいになったような状態であり、いつも腕立て伏せをしているようなワニでいえば今まさに獲物に飛び掛らんばかりの姿勢である。そして戦車的にいえば、これが正位置であり後部車両に搭載された主砲がそのままレッドへと向けられる体勢だ。

「!?」

「セミセミー!」

 レッドが驚くまもなく、熾烈な砲撃が始まった。凄まじい弾量の砲弾が、本当に雨のように降り注ぐ。

「うわぁあっ!?」

 圧倒的な爆炎の中、思わずレッドも逃げ惑う。

 150トンセミトレーラー戦車男は現用では一般的な自動装填式戦車を遥かに上回る連射能力を発揮してレッドセンシャーを追い詰める。その主砲口径は15cm。

 トレーラーで牽引する方式の車両であれば、もっと巨大な火砲を積むこともできたであろうが、本車は当時の重戦車としては少し無理をした程度の15cm砲である。事実この車両が計画された後には、ロシアが40センチ砲やら42センチ砲搭載の自走砲を実際に作っている。

 この車両が搭載砲を比較的小口径に抑えたのはそのトレーラー式の大型車体を直接的破壊力に利用するのではなく、装弾方法に転用しようと考えたからである。

 ここで陸から海の方に一端目を向けると、水上艦艇の方には巡洋艦の攻撃力増大を目的としてその主砲を自動装填式にしたものが当時は開発された。巡洋艦用であるから重巡用の20センチ自動装填砲と軽巡用の15センチ自動装填砲がある。

 つまり150トンセミトレーラー戦車とは、その二種の内、軽量である方をそのまま陸上運用できるようにした恐るべき計画なのだ。本来なら敵巡洋艦を沈めるために撃ち放たれる砲弾が、地上兵器に向けて放たれる。食らうことになる敵にとっては悪夢でしかない。150トンセミトレーラー戦車男は元の150トンセミトレーラー戦車よりは縮んでいるのでその分口径も小さくなってはいるが、火力自体は大差ない(何しろ怪人なので)

「れ、レッドさん!?」

 ようやく砲撃が止んで爆煙が晴れてくると、レッドの姿が見えてきた。ダメージを負ったのか右腕を押さえている。

「レッドさん怪我を!?」

「こんなもんかすり傷だ。しっかしなんつー攻撃力だ。計画車両とか反則だろう?」

「あら、あなたたちのラーテだって計画車両でしょ? 正義の味方がまず反則してるじゃない」

 レッドの突っ込みに雪火が突っ込み返した。

「ウルセェ! 俺が作ったわけじゃねえや、しゃらくせい!」

「早く戦車召喚で対抗したらどう? こんなに簡単にやっつけられちゃったら面白くないわ」

「言われなくともやってやらぁ!」

 雪火の挑発にレッドが叫び返す。

「出でよ我が鋼鉄の戦友!」

 戦車召喚用のポーズを取りながらレッドが言う。時空が歪んでできた裂け目から一台の履帯車両が出現する。

「……――?」

 その戦車の登場に少年の目がやはりというかなんというか点になる

 レッドが召喚したその戦車。

「ケッテンクラート!?」

 ケッテンクラートとは、独軍が作った半装軌車両の一種である。

 二本の無限軌道で駆動し、一輪の前輪で操舵する構成が特徴で、操縦席の他に二つの座席がエンジンルーム後方に後向きに備わっているが非常に狭い(普通に肩がぶつかる)

 本来はグライダーで空挺降下させ、無反動砲などの牽引を目的とした降下猟兵向け車輌として開発されたが、東部戦線の泥濘の中で従来のオートバイやサイドカーが使用できなくなった局面が発生したことから、陸軍や武装SSでも使用されることになる。

 つまり元々が空軍車両なのである。本車のもっとも効果的な運用方法として、航空機の牽引車としての使用が上げられるが、多分そうである。

 良くこの車両はそのハンドル式の前輪は必要なのかと言われるが、とりあえずハーフトラックのバイクVerを作りたかった訳であるから、その運用や配置には成功しているのだろう、多分。

「というか一応レッドさん前は戦車を出していたのに、なんでここに来てレッドさんまで戦車じゃないのを出すんですか!?」

 しかして少年は、よもや一号戦車より弱い履帯車両が出てくるとは夢にも思わなかったのだが。

 もうここまで来ると戦車戦隊ではなく履帯戦隊とか装軌戦隊などへの改名の必要がありそうだ。しかし装軌戦隊と書くとなんだか蕎麦の戦隊みたいだ(ご当地ヒーローにいそうだ)

「俺がただ無目的なままこいつ(ケッテンクラート)を出したと思うか?」

 戦車はもとより装甲車ですらない履帯車両を出したレッド=大吾が不敵に言う。

「……え?」

「まぁ黙って見てろ、さっそくだが戦車変身!」

 光から出てきたケッテンクラートがいくらもしないうちに再び光に包まれる。番組2クール以降のバンクシーンのような感じだがそういうことなのかもしれない。そして光が再度収まると

「変身完了 シュプリンガー!」

 そこには、ケッテンクラートからその前輪を外しただけにしか見えない小型の履帯車両があった。

 当時の独軍は障害物や抵抗拠点を破壊するためのリモコン爆薬運搬車――要は自爆戦車の開発に熱心であった。

 最も有名なのはゴリアテであるが、実際には信頼性が低く満足な活躍はできなかったとされる。このシュプリンガーはその後継として開発されものだ。

 足回りにはケッテンクラートのパーツを使用しエンジンはオペル・オリンピアの物へと換装。敵の近くまでは乗り込んだドライバーが操縦し、その後は無人で遠隔操作されて目標へと体当たりを敢行する。

 ちなみにシュプリンガーとして設計しなおされた時に、特徴的だった前輪は外されており「結局無くても走れるじゃん!」ということを証明してしまった罪深きバリエーションでもある。

「とう!」

 レッドはジャンプするとシュプリンガーへと飛び乗った。体当たり自爆を目的とした車両に乗り込むのも何だが、実際の独軍での運用でも目的地直前までは操作員が乗って移動させていたのだ。ちょっとコワイ。

「ゆくぞ、150トンセミトレーラー戦車男!」

「セミセミー!」

 レッドの咆哮に150トンセミトレーラー戦車男が雄叫びで返す。

 レッドが操作するシュプリンガーへと15cm砲弾が放たれるが、巧みな操作によりあさっての位置に着弾する。

 そして先ほどよりも弾量が減っていた。

 元々が資材と建造設備があればいくらでも大きく作れる大鑑巨砲の恩恵を受けられる艦艇用装備を、搭載スペースに限界のある(何しろ地上を移動するのだから)陸上兵器に転用しているのである。景気良く撃っていれば直ぐに弾切れにはなり、実際に運用するのならば弾薬運搬車の随伴は基本である。

「ふん、おまえみてえなヤツは、懐に入り込んじまえば楽勝だな」

 更には150トンセミトレーラー戦車男は長大な体をくねらせ後部車両の砲塔をレッドへと向けようとするが、二両連結の車体は明らかに接近戦には不向きである。対要塞戦、もしくは自軍の拠点防御兵器として使われるのが主な運用法であろうから仕方ない。

 相手を翻弄するように縦横無尽に動き回ったシュプリンガーが150トンセミトレーラー戦車男の横腹へと迫った。

「くらえ、スーパーデストラクト!」

 直訳すれば超自爆というあんまりな必殺技名をいいながらレッドがシュプリンガーに乗ったまま150トンセミトレーラー戦車男の連結部分に体当たりをかまし、辺りは大爆発に包まれた。レッドごと。

「レッドさーん!?」

「鉄車帝国に栄光あれー! クロウラー!」

 少年の絶叫と二人の戦闘員の断末魔の叫びが重なる。

「れ、レッドさんなんで脱出しない……って、あ!?」

 爆煙が晴れてくると、その爆心地にレッドが立っていた。両脇には戦闘員(腰周り以外全身タイツボロボロ、頭アフロ)を抱えている。そしてレッドのスーツ自体もあちこち破けていた。

「レッドさん無事だったんですね!? でもなんで脱出しなかったんですか」

 シュプリンガーも前段階のゴリアテも、本来なら遠くから遠隔操縦して敵に体当たりを行うものであり、人間が乗ったままの体当たり攻撃が前提なのは某国(今まさに戦っている場所)くらいである。

「こいつらを爆発の中から回収する必要もあったからな」

 どさりと二人の戦闘員を地面に下ろしながらレッドが言う。二人同時変身という特殊な状況で、更にその強敵を体当たり攻撃で倒そうとしたのだから、その大爆発でいつものように戦闘員が自動的に解放されるかどうかわからなかったからだろう。しかし戦車怪人自体が爆発しているのにその中から助けるってどうなんだろう?

「ふぅ、やれやれだぜ」

 レッドがそういいながら変身を解除した時

「隙あり!」

 ヒュンッと空気を切り裂きながら何かが飛んできた。それは願いたがわず大吾が持っていた変身道具に先端を絡ませると、一瞬にしてその手から奪い去った。

「!?」

 大吾と少年が振り向くと、そこには雪火がいた。左手に持ったレッドセンシャーへの変身道具を掲げている。右手に持っている鞭で巻き取って奪ったのだろう。凄い鞭捌きだ。

「フハハハ! 確かにこの道具、いただいたわ!」

 妖艶な笑みを浮かべる雪火。イケメンフェイスな美人がそんな表情で笑うとなんだか凄い迫力だ。彼女が今までまったく戦闘に介入しなかったのはこの隙をうかがっていたからだろう。

「待て! 大吾さんの変身道具をどうするつもりだ!」

 少年が声を上げる。

「フフフ、知れたこと、新たなる怪人を生み出すのに使わせてもらうのよ! さらば!」

 雪火はそういうと、倒れたままの戦闘員を二人とも抱え、そのまま連続跳躍を続けて跳び去って行ってしまった。凄い力だが、あのバトルコスチュームには疾風弾財団の技術の粋が詰っているのだろうと思われる。

「助かった」

 そんな跳び退る雪火の背中(と、お尻)を見ていた大吾が、ぼそりと言った。

「なんで助かったなんですか!?」

 大吾の言葉に少年が思わず突っ込む。

「いや、だって今日は戦闘員二人だろ。二人分の支度金渡したら金が無くなるんだよ、こっちは!」

「その助かったなんですか!?」

 少年の突っ込みが示すようにその助かったは、倒した戦闘員を雪火がまとめて回収してくれたことに対する助かったであった。悪の組織の上官や総帥は何気に部下に対して慈愛を持った接し方をしている者も多いが、彼女もそうなのだろう。悪の幹部も大変である。

「というか変身道具奪われちゃいましたけど!?」

「そうだな」

「そうだなって、そんな呑気に!? このままじゃレッドセンシャーに変身できませんよ!?」

「まぁいざとなったら元戦闘員くらいなら戦車怪人に変身する前に抑えりゃなんとかなるよ」

「変身しなけりゃダイセンシャオーも動かせないんじゃ!?」

「最近は大怪人も出てこないからだいじょうぶだよ。それにあれは四人じゃ動かん」

「……ていうかブルーのお姉さんは新たなる怪人を、っていってましたけど、もしかしてその変身アイテムを使って変身できる偽ダイセンシャーを作ろうとしているんじゃ……」

 偽のダイセンシャーに変身できる怪人――それは相当な脅威であろうと少年は震える。

「それはないな」

 しかし大吾は、それは全くありえないと簡単に切って捨てた。

「おまえの頭の上に乗ってるリンカーンが死に物狂いで俺たち五人を探し出したんだ。そう簡単に第六の人間が見つかるとは思えん。ピンクかイエローのどっちかが彼女作って駆け落ち失踪でもすれば別だろうが」

「……女性で彼女?」

「いや、内部事情の話だ」

「はあ? ……でも、奪っていったのはブルーの双子のお姉さんですよ!? もしかして雪火さん自身が変身できちゃうんじゃ」

「あんだけそっくりでも二卵性双生児だからな、男女の違い以外にも結構違うんだよ体の構造が。だからあいつがあの変身道具をあのまま使って変身できる可能性はほとんどない」

 大吾はそういうといつものゴザまで戻り、ごろりと横になった。

「今日は疲れた。寝る」

「本当に取り返しに行かなくて良いんですか、変身道具?」

「あぁ、まぁ……そのうち行くよ。時間だけはあるからな。虱潰しにアジトを見つけるよ」

 大吾はそこまでいうと静かになった。いくらもしないうちにぐーぐーと寝息が聞こえてくる。

「……」

 少年はまだ何か言いたげだったが、今はそのまま黙った。二人分の怪人を倒したのだ。いつもの二倍疲労していてもおかしくはない。静かにさせておこう。

 とりあえず少年は頭の上のリンカーンと共に戦士の休息を静かに見守った。


 その夜。

「――起きてる、大吾?」

 深夜の公園。いつもの場所でゴザの上で寝ていた大吾を、静かに起こす者がいる。

「ん……んぁ、……今起きた」

 夢も見ないほどに大吾はぐっすりと眠っていたが、その呼び声にすぐに起きた。この辺りはダイセンシャーとして一年間戦ってきた戦士の体が、自動的に反応するのだろう。

 大吾が上体を起こすと、其処には仕立ての良いパンツスーツに身を包んだ女性が立っていた。手には衣服と同じだけ高級そうなバッグを手にしている。

「なんか露出の多い戦闘服で来られるより、そう言う格好の方がちゃんと女に見えるよな」

「それって褒め言葉なの?」

「さぁ? 事実を述べただけだが」

 大吾がゴザの上で胡坐になると、それで半分開いたスペースにスーツの女性は腰を下ろした。

「はい、これ。返すから」

 女性が持っていたバッグから何かを取り出した。それはダイセンシャーへと変身するための小型機械のように見える。

「もう良いのか」

 女性が差し出した機械を大吾は受け取った。そしてろくに確認もせずにポケットに突っ込む。

「ええ。データは全部取らせてもらったから。でも、構造的には結局こっちの推測と殆ど同じだったから検証に使わせてもらったくらいね、実のところ」

「これを返してもらうのは良いんだが、どうやって俺のところに帰ってきたことにするんだ?」

「あんたが謎の第三勢力の秘密研究施設に単身突入して奪い返してきたってことにすれば。レッドセンシャー大鉄輪大吾がそういえば信じない者はいないでしょ」

「……やっぱりそれが一番無難か」

「でもこんな面倒くさいことをして貸してもらうなんてして、申し訳なかったわね」

「まぁ本来ならほいほい貸して良いようなシロモノでもないしな。奪われたとかいう態にでもしとかないと。というか財団の総帥が仕事もしないでほっつき歩いてて良いのか?」

「総帥っていったって、会食とか面倒くさいのを除けば、仕事なんて申請書に目を通してハンコ押すくらいよ」

「その申請書に謀反の許可申請とか入ってたらどうするんだ?」

「そういうのを見抜けないと思う? あたしが?」

「だな。あいつの姉なんだもんなあんた」

「そうよ」

「それにしても良いのか?」

「なにがよ?」

「戦車戦隊(俺たち)のこともデスクロウラーの生き残りのことも」

「……火雪がいったから」

 第三勢力の女幹部でもなく、疾風弾財団総帥でもなく、一人のただの姉の顔となった雪火がぽつりと言う。

「家に縛られるのが嫌で出て行った火雪が、最後の最後になってあたしのところに帰ってきた」

 疾風弾火雪は、最終決戦の前、出たはずの家に戻り、姉に一つの願いを残していた。

「俺にもしものことがあったら戦車戦隊みんなのことを頼むって」

 火雪は戦いが終わってしまった後の銃後のことも考えていたのだろう。

 あまりにも強すぎる力を持ってしまった自分たちは、戦いの後の平和な世界では生きるのが難しいのを。

 火雪は戦い終わって自分が生き残っていたなら、疾風弾の家へと戻る決心をしていたに違いない。その財力を使って自分も仲間も守ろうと。

 しかしもし自分が最後まで生き残れなかった時は――自分の代わりに大吾たちを助けてほしいと。

「そんなこと言い残されたら、その願いを叶えてあげるしかないじゃない、あたしは火雪の姉なんだから」

「すまねえな」

「……その言葉は、弟のために取っておいてよ。地獄の底で再会した時のために」

「わかった」

「じゃあ、あたしはこれで。手土産もなんに持ってこないで悪かったわね」

「気にすんな。あんたが戦闘員を二人とも持ってってくれたからまだ懐には余裕がある」

「あはは、じゃあね」

 雪火はそう告げると来た時と同じように静かに去っていった。

「――寝るか」

 大吾はそう独り語ちると何事もなかったかのようにゴザの上に再び横になった。

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