死神と子ども

晴れ時々雨

🍀

駄菓子屋のクジはインチキで有名だったが人気だった。1等の豪華さに釣られ、殆どが店の儲けに貢献するだけの品なのに、足もとを見たような、子供には貴重な100円という額を払うのである。

その日も100円で「犯罪シリーズ当」というクジを引いた。1等の人質を狙っていたのだ。クジに☆印があった。店主のじじいに見せると気持ちの悪い満面の笑みを湛え、後日発送と言って店仕舞いした。

数日後、母親が腰を抜かすような大型の荷物が届いた。すぐさまぴんと来て喜びに震えながら箱をぞんざいに開けた。

中身は天使だった。かどうかはわからないが、とりあえず生きていて微かに呻いた。等身大かよ。ナマモノかよ。しかし恐ろしいほど綺麗に整っていて触れるのが躊躇われる。地球上にこんな生き物がいるとは!俯瞰すると梱包された箱にきっちり収まっていて、商品くさく見え、本当に自分に送られてきた物だとじわじわと実感が湧き初め、ほぼ白髪のような銀髪に指を通すとまるで触っていないかの如く軽く、触れているのに感触のない不思議な感覚にしばし囚われ、母が叫び出すまでの間、亜空間に飛んでいたことに気づいた。

人質=天使という図式は自分の中で確固たるものに変容し、天使の瞼が微妙に震えたのをみてその体を担ぎ上げ、駄菓子屋に走った。

母親に言われるまでもなく返品に向かった。

しかし毎日通っていたはずの駄菓子屋がいくら探しても見つからない。いつのも場所を探すなんておかしな話だが探したんだ。でも昨日まで駄菓子屋の両隣だった家がくっついて建っていて家と家とは人一人通れるくらいの隙間しかなく、幼児を抱えたまま呆然とそこへ歩み出すとぐしゃりと何かを踏んづけた。足をどかすと3cm四方ほどの家の模型がぺしゃんこになっていた。靴の裏にクジのカスが張りついている。

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死神と子ども 晴れ時々雨 @rio11ruiagent

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