第14話



 俺は早速教えてもらった<剣の遺跡>へと向かった。


 そのダンジョンは、村からかなり離れたところにあった。

 ギルドの受付のお姉さんによると、あまりモンスターも多くなく、放置されているとのことだった。


 ――早速、ダンジョンに入ると、灰色の空と薄茶色のレンガでできた建物の痕跡が目に入ってくる。


 俺は、そのノスタルジックな風景の中を進んでいく。


 時折出てくるモンスターは、あまり強くなく全て瞬殺できたので、テンポよく進んでいくことができた。



 そして、一時間ほど歩いていくと、目当ての場所にたどり着く。

 そこは大きな古代のコロシアムだった。


 かつて人々がボスと戦ったであろうその土地には、まるで墓標のように剣が突き刺さっていた。


 いずれも野にさらされた結果、錆つき、ちょっとやそっと磨いたくらいでは使えないとわかる。


 俺は手近なところに刺さっていた剣を引き抜く。

 そして、スキルを発動する。


「“ゴミ強化”」


 ――錆びた剣が光り輝く。


 俺は鑑定スキルは持っていないので、剣が実際どれくらい強化されたかはわからない。

 だが、今までの経験則からいえば、相当強化されているはずだ。


 俺は強化した剣をマジックポケットの中にしまう。

 そして次から次に剣を抜いては、“ゴミ強化”をかけていくのだった。


 †


 ダンジョンで大量の“ゴミ”を仕入れて、強化した俺は、街に戻りその足で武器屋に向かった。


「いらっしゃい、今日は何の用で?」


 店主のおじさんが元気に出迎えてくれる。


「中古の武器の素材を売りに来たんですが、結構量があるんだけど見てもらえますか」


「もちろんいいが、品はどこにあるんだい?」


 俺はマジックポケットを取り出し、中から剣を取り出していった。


「兄ちゃん、珍しいもん持ってるね――って、なんだいこれ、ゴミばっかりじゃないか」


 取り出した“錆びた剣”を見ておじさんは顔をしかめた。


「素材もただの鉄だな。別に特別珍しい素材じゃねぇし、ここまでボロボロじゃぁ磨く方が時間がかかるだろう」


「いや、そうだと思うんですけど、多分結構ステータスは高いと思うんです。一度調べて見てもらえませんか?」


「……そうなのか。ただのゴミにしか見えねぇが。まぁいいだろう」


 と、おじさんは店の奥から一本の杖を取り出してきた。


「こいつは、触れた杖のステータスを調べられるアイテムだ。素材からステータスまでかなりの精度でわかるぜ」


 おじさんは、俺が机に並べた剣の一本を取り出し、杖で叩いた。


 ――すると、空中に文字が浮かび上がる。



 太古の鋼鉄の剣

 強度1000

 魔法耐性500



 鑑定結果を読み上げたおじさんは、飛び跳ねて驚く。

 

「ど、どうなってんだ!? み、ミスリルの剣よりも硬いじゃねぇか!?」


「え、まじですか?」


 俺も流石に驚く。


 見た目にはただの錆びた鉄の塊なのだが、まさか超高級素材であるミスリルよりも硬く強化されているとは。


「しかも、魔法耐性まであるってのか。これ磨いてちゃんと仕立て直したら、とんでもねぇ一品になるぞ」


 どうやら、ゴミ判定は受けずにすんだらしい。


「それじゃぁ、買い取っていただけますか?」


「ああ、もちろんだ。一本、十万ゴルでどうだ?」


「じゅ、十万!? 一ヶ月遊んで暮らせますよ!?」


「この素材をつかえば俺も名工の仲間入りだぜ。何としても買わせてくれ」


 売れるだろうとは思っていたが、まさかここまでとは思わなかった。


 †


 そんなわけで、結局強化したゴミ剣を売ったら、とんでもない金額になった。


 結局、武器屋の貯金があるだけと言うことで、全部で20本を買い取ってもらえた。

 つまり200万ゴルの収入だ。


 ゴミを拾って来ただけだと言うのに、一年間は遊んで暮らせる金が手に入ってしまった。


 ちなみに武器屋の資金が尽きたので買取は20本までだったが、強化した剣はまだまだ残っている。

 多分他の場所でも売ろうと思えば売れるだろう。


 おじさんから受け取った金貨を両手にして、その重みを感じる。


「――さぁ、どうしよう」


 これで、明日の宿を心配する必要は無くなった。


 だが、せっかく手に入れた金だ、武器を買うとか、何か有意義なことに使いたい。


 ――――と。


 俺は、そこで一人の少女のことを思い出した。



 ――神託の日に見た、あの虫と人間のキメラの奴隷。

 奴隷商人に無下に扱われ、文字通り虫けら扱いされていた少女。


 そうだ、これだけの金があれば、あの子を自由にしてあげられるではないか。


 ――――そうだ。それしかない。


 あの子を助けに行こう。

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