第7話



 俺は早速指示されたダンジョンへと向かった。


 街の外れの草原。そのある一箇所に黒い裂け目が浮かんでいる。

 この裂け目が異世界であるダンジョンに繋がっているのだ。


 かつて父親たちと一緒に探索したことはあるが、ソロでダンジョンを攻略するのは初めてだ。

 しかも、ランクはBランク。手練れの勇者パーティが攻略するような難易度のものだ。


 低階層のマッピングクエストとはいえ、気を引き締めていかないといけない。

 俺は気を引き締めて、裂け目の中に入っていく。



 中に広がっていたのは、一般的な迷宮型のダンジョンだった。

 暗い廊下が広がっており、わずかな炎があたりを照らしている。


 クエストは、初めの三階層の入り口までのをマッピングするという内容だった。


「よし、行こう」


 俺は自分を鼓舞して、暗がりを進んでいく。


 Bランクのダンジョンともなれば低階層であっても強力なモンスターが現れる。

 油断は禁物――


 ――と、思っていると、早速モンスターが現れた。



 ゴースト・ファイヤーだ。


 青色の炎が空中に浮かび上がり、その上の方に黒く塗りつぶされたような目がついている。

 魔力を燃やしながら体を維持している。見た目からして流動的で、物理攻撃に強く、切っても簡単に再生してしまいそうだ。いきなり面倒な相手が来た。


 こういうタイプのモンスターは魔法使いが水や氷の魔法を使って倒すのが一般的だ。


 だが、俺は剣士。

 とらえどころがないので、いくら豪腕でも剣一本では勝てないだろう。


 ――いきなり詰んでるぞ?


 俺はすぐさま思考を切り替えて、倒さずに逃げ切る方法を考え始めた。

 しかし、敵はまっすぐこちらに体当たりしてきた。


 あの炎に焼かれたら痛いでは済まない。


 俺はしぶしぶ剣を抜いて、炎の幽霊に向かって斬りかかった。


 体が実体を持たないといっても、物理攻撃が全く効かないというわけではない。

 ステータスが“ゴミ強化”で強化された今なら、攻撃を食い止めるくらいは出来るだろう。


 そう思ったのだが。



 ――一閃。


「ぎゃぁぁぁ!!!!!」


 俺の斬撃を受けたゴースト・ファイヤーは断末魔をあげ、そのまま跡形も無く消え去った。


「あれれ?」


 目の前で起きていることがすぐには理解できなかった。


「普通に……切っただけだぞ?」


 別に何か魔法スキルを使ったわけではなかった。

 それなのに、まるで魔法攻撃を受けたように、実体のないゴーストが倒されてしまったのだ。


 考えられる理由は一つ。


 ――もしかして、俺の剣の攻撃って魔法属性も帯びてるのか??


 俺は魔法使いではないので、魔法スキルは使えない。

 けれど、魔力そのものはがゼロという訳ではなかった。

 “ゴミ強化”で魔力が増加して、攻撃に魔力が付与されているのかもしれない。


 とすると、これは嬉しい誤算だった。


「……もしかしたら、結構楽にクエストをこなせるかもな」


 俺は少し自信を得て、ダンジョンを再び進み始めた。

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