無敵の番長が自称ヨメなる巨乳に陥落させられた

文嶌のと

第1話 突然の告白

 俺の名は新田にった総一郎そういちろう


 この地域でその名を知らない者は居ない。皆、新田様と俺の事を恐れている。その理由は、俺の強さにある。喧嘩で負けた事はこれまで一度も無い。まさに、最強の男というわけだ。


 だが、そんな最強の俺にも苦手なものがある。


 それは、女だ。


 あのひ弱な見た目、嫉妬深い性格、口うるさい言動。どれを取っても鬱陶しい。良い所など一つも無い。外でカップルを見掛けるが、どこが楽しいのか理解に苦しむ。俺は一生独身を貫くと決めていた。


 朝礼の開始を告げるチャイムが鳴る。また、けだるい一日が始まる。


「はーい! みんな、静かに!」


 担任が教室に入ってきた。今年の担任は女。俺は男が良かったんだが。


「今日は重大発表があります!」


 それを聞き、クラスの連中がざわついている。どうせ、下らない発表だろう。全く興味など無い。


「今日からこのクラスに転校生が加わります!」


 転校生という聞き慣れない言葉に、余計周りの声が大きくなる。うるさい奴らだ。転校生など不必要だ。鬱陶しい奴がまた増えるだけだ。でも、せめて男にしてくれ。


「さあ、入って」


 教室の扉が開き、転校生が入室してくる。願いは叶わず、女だった。


「じゃあ、自己紹介してくれる?」

「はい! 姫川ひめかわあおいです。よろしくお願いします」


 男共が歓声を上げている。まるでガキの様だ。


 ――チッ! 名前からして貧相だな。しかも、何だあの胸は。牛か?


 短い髪に整った顔ではある。だが、女なら一緒だ。どれも要らん。


「姫川さんの席は……」


 担任が空いている席を探している。ふと、横を見ると隣の席が空いている。嫌な予感がする。


「新田君の隣ね」


 思っていた通りの結果となる。女が真っ直ぐ歩いて来て、


「よろしくね。新田君」


 俺の方を向いて微笑みながらそう言った。周りの連中は驚いた様子だ。当然だろう。この三年のクラスの全員が俺を恐れ、声を掛ける事すら出来ないのだから。


「ああ」


 無視するのもどうかと感じ、一応愛想はした。女が隣の席に座る。けだるい一日が余計にけだるくなった。朝から最悪な気分だ。




 その後は話し掛けられる事は無く、放課後になる。転校生の女も俺の雰囲気に怖気づいたのだろう。足早に下校しようとすると、


「あのぉ、新田君?」


 女が俺に声を掛けてきた。いい度胸だな。


「ちょっと、体育館裏まで来てくれないかな?」

「はあ!? ふざけんな! 俺は帰るっ!」


 俺が歩き始めてすぐ、女は俺の袖を掴み、


「お願い……」


 周りは怯えた顔をしている。まさか俺にここまで関わろうとする野郎が居るとは。男なら殴っている所だが、


「……さっさとしろ!」

「うんっ!」


 女と一緒に体育館裏へと移動する。誰も人は居ない。


 ――何故こんな所に? まさか、コイツ見た目と違って喧嘩が強いのか? 俺を消す為に呼んだって事か?


「やっと会えたね」


 女が意味不明な事を言っている。だが、その言葉から俺の噂を聞いてきたとも取れる。

 次の瞬間、女が俺の方に真っ直ぐ走ってくる。


 ――チッ! やっぱり喧嘩を仕掛けてきたかっ! 上等じゃねえか!


 相手が女だという事もあり、一発だけは好きにさせてやろうと覚悟を決めた。


「会いたかった! 総ちゃんっ!」

「はあ!?」


 女は俺に抱きついてきた。頭がイカれているのか。


「は、放せっ! 目障りだっ!」

「えっ!? 何で?」


 急いで振りほどき、女と距離を置く。


「お前、一体何者だ?」

「お、覚えてないの?」

「何の事だ?」

「……ヒドぃ」

「はあ!?」

「ヒドイよっ! 結婚してくれるって言ったのにっ! うわあああぁぁぁぁあああんっ!」


 女は泣きながら走り去って行った。


 ――結婚? 意味が分からん……。


 頭の整理がつかないまま、俺は一人呆然としていた。

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