2日目
目が覚める
顔を洗っていると、黒い影が私におやすみ、と言った
私はいつもそれにおはよう、と返す
これでようやく私に朝が来る
いいや、一度も来た事がないのだったか
まぁ、どちらでも同じ事だ
食事はまるで犬の餌の様であったけれど
私にはそれが相応しいのだといい続けるので、仕方なくそれを平らげた
外に出ると黄色い蛇が道を埋め尽くしていた
そのうちの一匹が私の内に入り込んできたが、 「変わりない」 とそれを無視した
今日はあの場所まで行かなければいけないのだから、そんな事に構ってはいられない
車が蛇を踏み潰しながら通り過ぎる
私はそれを横目で見ながら、急ぎ歩きで進んでいく
内側に入り込んだ蛇が酷く暴れまわっているのが少し気になった
「全く、慣れない事をするものじゃない」
蛇が不満げにぼやく
「今日はお前に構っている暇はないんだ」
私は蛇に言ったが
「今日は?何時だって何にも構ってやしないだろ」
私は少し腹が立ったので、その言葉を無視する事にした
すると暴れていた蛇は大人しくなり、何も言わなくなった
私は、しかし蛇が言った事も間違いではないと思い直し、後で謝っておこう、と思った
今はやはり急がなければいけないのだ
道を埋め尽くしていた黄色が、いつの間にか舗装された黒い道路に変わっていた
向こうには身の丈程もある大きな彼岸の花が咲いているのが見える
「ああ、ダメだ、私はまた道を誤ったのか」
酷い倦怠感に襲われその場に崩れ落ちた私に、それまで黙っていた蛇が口を開いた
「だから言ったんだ、お前は何にも構ってやしないと」
そうなんだろうか、と私は応えたような気がしたが、もしかしたら声が出ていなかったかもしれない
私は今日も辿り着く事が出来なかった
黒い影がおはよう、と言う
それにおやすみ、と返す
そこで私は、まだ蛇に謝っていない事に気付いた
同じ彼にはもう二度と会う事が出来ないというのに
明日も、きっとたどり着く事は出来ないだろう
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