202010 ジャパロボ 37

渋谷かな

第1話 ジャパロボ37

「わ、わ、私が寝ている間に何があったの!?」

 さとみが目を覚ました頃、関東ブロック代表チームは半壊状態だった。

「分からない!? 本当に寝ていて分からない!?」

 イリスも前回優勝者の優子が病院送りにされ昏睡状態になっていることが理解できない。

「あなたたちが寝ている間に大変なことがあったんですよ。」

 AIロボットの令和ちゃんが寝坊助姉妹に第1試合の詳細を説明する。

「テロリスト!? 何それ!? 強いの!? 戦いたい!?」

 さとみは自分の欲望に素直である。

「情けない。テロリスト如きに前回の優勝者がボコボコにやられてどうするのよ?」

 イリスは冷酷であった。

「私以外に負けるなんて許さない。必ず目を覚まし、戻ってこい。」

 そして情に深かった。

「令和ちゃん、優子の看病をよろしくね。」

「はい。お任せください。」

「バイバイ~! ウホホイ~!」

「さとみちゃん、病院ではお静かに。」

 ここは自衛隊病院であった。


「すずちゃん。」

「さとみちゃん、イリスさん。」

 エース優子が負傷するという緊急事態に見舞われたことにより、すずは全国ジャパロボ大会の他の試合を真剣に観戦していた。 

「優子さんは大丈夫でしたか?」

「うん、生きてたよ。」

 身も蓋もない言い方である。

「あいつはアンドロイドになってでも帰って来るから心配するな。」

 妹が妹なら姉も姉であった。

「ですよね。」

 その友達も友達である。

「ワッハッハー!」

 類は友を呼ぶ。

「で、他の試合はどう? 何かおかしいなことはある?」

「特にありませんね。まず第2試合は中部・北陸ブロックと中国ブロックの戦いでした。10対5の戦いなので、多勢に無勢で中部・北陸ブロック代表が楽勝でした。」

 どこか設定がハンデ戦でおかしい全国ジャパロボ大会であった。

「次に第3試合が東北ブロックと九州ブロックの戦いでした。6対8の戦いで混戦でしたが、やはり数に勝る九州ブロックが勝ちました。」

 数的有利は直接勝利につながると思われた。

「第1回戦第4試合は北海道ブロック代表の勝利です! なんとたった1人で関西ブロック代表の6機を倒してしまいました!」

「え? 見てないよ?」

「いったい何があったんだ!?」

「起きていたのに分からない!? 起きていたのに!?」

 さとみたちは話に夢中で試合を見ていなかった。

「一人だからといって弱いとは限らないのだよ。ジャパロボの数が戦力の決定的な差ではないことを教えてやる! ワッハッハー!」

 不敵に笑う北海道代表であった。

 つづく。

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