汚した世界
門前払 勝無
第1話
「汚した世界」
黒くて大きな雲が向こうから近づいてきているー。
LEDの信号機が点滅している。老害マークの車がやたらとクラクションをならしている。
僕が山を登り始めたのは昭和で登山ブームの時だったよ。早稲田大学の登山部に入っていて仲間とダルマ持ってギター弾いて山小屋で過ごした日々は青春だったよ…。
俺は白髪のヒゲジジィの亡骸を五合目の土砂崩れ跡に放り投げた。人形のようにコロコロと谷底へ落ちていた。
「梅吉!松五郎に伝えに行け!」
「オッケー!竹彦はこのまま下山しておけ!」
「了解!」
梅吉は若い日本猿で、俺(竹彦)の親友、崖下で待つ松五郎は月の輪熊でアイツも親友だ。
俺は人間だが、俺の一族はこの神の山に暮らしていた。昔に迫害されて山から降りて暮らしていたが俺は5年前に山に入った。
東京の博物館で見た入れ墨の入った猿の剥製を見て衝撃を受けた。なぜ猿に入れ墨が入っているのか、それから細かく調べているうちにこの山に辿り着いたのだ。
梅吉は入れ墨の猿の子孫で、昔この山に暮らしていた人間と共存していて争いごとをしない意志の表れとして人間の入れ墨を代々していたのだという。人間も共存を望んでいて知識を動物に与えて協力しながら暮らしていたと言う。人間は作物を作る技術や道具を使う技術があった。猿は山を知り尽くしていた。熊は平安を保たせる存在出会った。
しかし、都市部からの人間が増えてきて山はゴミだらけになり毒草が生えて土は腐敗していった。
そして、山の民も山から追い出されてしまった。動物たちは狩猟の標的になり 殺戮されていき、それに伴い山も死んでいったのである。
俺は梅吉に会い何故か会話出来て、松五郎に挨拶をして受け入れられた。
そして数万年そこにいる桜の大樹に名を受けた。
「クソッタレの人間共を殺せ!そして山の肥やしにしろ!山を汚した人間共に罰を与えろ!山を汚した人間共の子孫まで罪を償わせろ!」
俺は人間だから、人間を殺す役目を担った。
処理する役目を山の動物たちにしてもらった。
登山ブームで山を汚した人間から殺す事にして、その時期に山登りしていた人間を探しては山に連れて行き殺した。
全ての人間は愚かであり地球の害獣である。
しかし、汚いモノが無くては美しさも無いー。
人間が誕生した理由である。人間を滅ぼすと次にまた害獣が現れる。
地球と言う神から地上を任されている山々は朝陽の中で会議している。
必要なのでバランスであり、排除ではない。人間を絶滅させるのは簡単だが、その後に同じようなモノが現れる。よって人間を排除するのは無意味だ。
今は登山と言う下らない娯楽者だけを排除するだけで良いー。
完
汚した世界 門前払 勝無 @kaburemono
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