第89話 ハルサー
大和の侍のことは首里城から来た役人に任せることになったので、
次の日、今の
「あ、挨拶が遅れてすみません、中二
物腰の低く気弱そうな40代くらいのおじさんが丁寧にあいさつしてくれた。
「こちらこそ挨拶が遅れてしまってすみませんでした。急に
本人ではなくナビーが横から口を出してきた。
「浦添
「変な略し方するなよ! 失礼だろうが!」
「ナビーさんが言うのなら浦チンで結構ですよ。それより、浦添の事を知りたいのでしたよね? 何から聞きたいとかってありますか?」
……あ! そう言われると、何も考えていなかった。
ただ漠然と浦添の情報を求めていたが、具体的なことを尋ねないと相手も困ってしまう。
とりあえず、重要なことから聞くことにした。
「現時点で1番困っていることって何ですか?」
「困っていることですか……
「食料がなくなるのは困りますね。そういえば、300人の大和の者をもてなし続けてきたのですから、当然そうなりますね」
「それだけが原因ではありません。最大の原因は、
「後継者不足ということですか?」
ナビーがしんみりしながら補足説明してくれた。
「
「そうです。それに、ただの
「ああ!」
いつもは白虎をシーサー化させるために、土が原料の焼き物である面シーサーにセジを籠めることで能力の恩恵を受けていたが、本当は畑仕事に必要な能力だったみたいだ。
ナビーが不敵な笑みを浮かべている。
「シバ。もうわかっているよね?」
「何が?」
「
浦チンは俺が答えるより早く、大げさに反応してきた。
「まさかナビーさん、中二
「恐れ多いのはこっちの方ですよ。浦添の事をずっと考えてきた浦チンさんを差し置いて、俺なんかが
「何をおっしゃっているのですか!
「按司になったばかりの人の前でそんなこと言わないで下さいよ!」
ナビーは苛立ちながら俺に
「あーもー
「わかったよ。やればいんだろ。ってこの
浦チンは俺が仕事を受けると、なんだか嬉しそうな表情になって説明してきた。
「琉球の
深々とお辞儀をした浦チンは、ナビーと2人でコソコソ話をして握手をしていた。
今思えば、浦チンはわざとらしいリアクションだったように感じる。
ナビーと手を組んで、最初から俺に畑仕事を了承させるように演技をしていたのかもしれない。
しかし、ナビーは回りくどいのが面倒に感じ、強引な押し付けになったのだろう。
……別に、畑を耕すくらい頼まれたらやってあげるんだけどな。王から任された土地の事なんだし。
それからすぐに、サッカー場3面分くらいの手つかずで荒れ放題の畑に案内された。
思っていた3倍広かったが、仕事を受けた以上はやってやろうと気合を入れる。
「浦チンさん、これからどうすればいいのですか」
「難しいことはありません。
俺とナビーに気が付いた
「
「浦チン……じゃねーや。浦添
働くことのできるおじーのはるさー8人に、ナビーが
俺も教えてもらいながら
……土が硬すぎて鍬が入って行かない! こんなに大変な仕事だから
それでもやめるわけにはいかなかった。
腰の曲がったおじー達が黙々と鍬を振り下ろしている光景を見ると、弱音を吐くわけにはいかない。
俺たちが耕した後ろからおばー達と一緒にナビーが
どんどん迫るナビーに急かされている気がして、スピードを上げることにした。
……そうだ! これも戦いとして考えればいいんだ!
鍬にセジを流しながら、力を使うときだけセジオーラを発動する。
すると、硬い土をサクサク掘り起こすことができ、身体にかかる負担も軽くなったので調子に乗ってガンガン耕していると、ナビーに大量の水をかけられてしまった。
「えー!
「そうだった。だけど、水はかけなくてもいいだろ……」
「何言っている。
たしかに、今は11月前半くらいだが、今日は真夏のように暑い日だったのでべたついた汗が流されてスッキリしている。
ナビーはそのまま畑の真ん中に立ち、種を植えたところを中心に雨を降らせている。
そこに大きな虹ができて、ナビーが輝いて見えた。
その光景を見た
この清々しい気持ちのまま帰って眠りたかったが、その気持ちをおさえ、招集させている
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