第62話 朝食と厠と謁見
あまり寝付けないまま夜が明けた。
早朝に訪ねて来た
正殿の前に着くと3人の
「まずは
案内してくれた侍女たちは静かに去って行く。
広い室内に3人と1匹だけが残された時、眠そうなナビーの目がパッと開いた。
「
なんだか修行僧が食していそうなものに感じる。
『
ナビーが嬉しそうにしていたので、どれほど美味しいものなのかと期待してお肉をひとくち食べてみる。
……薄い。味が全然ついてない。
葉野菜を食べた琉美も同じく箸が進まないでいる。
「ねえ、ナビー。この料理、薄味過ぎない?」
「えー! 薄味って言うな。誰かに聞こえるだろ。宮廷料理は
たしか、沖縄では薄味を
特に、品のないおじさんたちがオジー、オバーの食べ物だと馬鹿にするときに使っている印象があった。
「なんで
「薄いって言ったら料理が下手って言ってるみたいさーね? それに、宮廷料理は上等な食材を使っているから、その食材に感謝をして余計な手をくわえないことが良いとされている。素材そのものの味を褒める言葉が
食材に感謝だとか素材そのものの味だとか言われると、何も言い返すことができない。
俺たちは
食事を終えると急に便意がきて、腹と肛門に変な緊張感が芽生えた。
「ナビー。トイレってどこにあるんだ?」
「
「いやぁ、トイレの仕方を教えるって幼児じゃないんだから……」
「言っておくけど、この世界に洋式トイレとかトイレットペーパーなんてものないからな」
トイレ事情なんかまったく考えてなかったが、元の世界と同じはずがないことにいま気が付いた。
「もしかして、ポットン便所だとか葉っぱでケツを拭くってことはないよな?」
「大丈夫。温水洗浄便座より快適にできるさー!」
なんだか嘘っぽく感じるナビーの言葉に不安になりながら、一旦家に戻って俺と琉美はトイレのレッスンを受けることになった。
ナビーが手の平を前に出すと、水飲み蛇口の様な細い水がピュッと出てきた。
「最初に、こんな風にセジで水を出してもらおうかね」
……まさか、それでケツを洗うのか?
ナビーのお手本通り、そのまま真似てみる。
しかし、勢いが弱く手が濡れる程度しか水は出なかった。
「ちょろっとしかでてないねー」
「
「まあ、水が出てはいるからすぐできるようになるさー」
戦闘関係のこと以外でセジを使ってこなかったので、感覚がつかみにくいのかもしれない。
しかし、中二病は伊達ではなく、何度かやっているうちに強弱調整もできるようになった。
琉美は俺よりも早く習得して、おしりとビデの切り替えに加え温度調節までできるようになっていた。
ここまで、俺の肛門は限界の一歩手前で出さない方に踏ん張っている。
我慢できそうにないので、早く次のステップに進むようにナビーに
「次は洗って濡れた
「それはいいから早くしてくれ!」
「わかったよ。まず、手の上に小さい
「
「
手の上に風の渦をいつものようにイメージしてしまい、技として繰り出す普通サイズの
「えー、加減しないと
「わかってるよ! 少し集中させて」
小さく小さくと念をこめて、ナビーの手本通りの大きさにすることができた。
「風が巻き込む力で水を吸って、
俺はすぐに
スッキリして家の外に出ると、先程の
謁見の時間が迫っている様なので、急いで正殿2階の王の間に向かうことにした。
侍女に案内されながら静かに
「ナビー
ナビーが花道を進んだので俺と琉美はそれに続いた。もちろん白虎も一緒だ。
俺たちが異世界から来たことが広まっているのか、
王座の前に着くと、ナビーが正座をして頭を下げたのですぐに真似をした。
「
「ご苦労だったナビー。形式はそのくらいにして、久しぶりに
恐る恐る顔をあげると、貴族の中でも数段豪華なお召し物を着た、
一見、ただの
「会いたかったぞナビー。
「あ、ありがとうございます……」
王様相手に何と返答しればいいのかわからないので、おどおどとしてしまう。
「ところで、
ナビーは白虎の背中に
「はい。この犬は白虎という名前で、このお面型のシーサーを使ってシーサー化させるのです」
ナビーが俺にセジを
「
「私の見立てでは、移動手段にしても戦いにしても、白虎が数段上手だと感じてます」
小さな声で尚巴志に注意をする。
「皆が見ている前ですぞ! 人払いをしてからにしてください」
「うっふん! 話を進めるぞ。聞くところによると、
誰かが始めた小さな拍手が城内いっぱいに広がり、気持ちよく歓迎されていることが伝わった。
ここでの暮らしに不安があったのだが、なんだかんだやっていける気がした。
「それじゃあ解散!」
この場に残った
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