第42話 今帰仁城跡
キジムナーが白虎を連れだして、もう少しで1月になる。
数日で見つけると言っていたが、長生きであるキジムナーの数日は人間の感覚とずれているようで、まだ報告待ち状態だった。
2019年7月15日。午前11時。
今日は
しょうがないので、タクシーを利用して現場に急ぎ、難なくマジムンを倒した。
名物のタコライスを買って、近くの公園で早めのお昼ご飯を食べていると、キジムナーから連絡が入った。
「みんな、見つけたぞ! ヒンガーホールだ!」
「
ナビーは驚きをあらわにしているが、キジムナーは淡々と続けた。
「
迎えに来た白虎に乗り、
ここは桜の名所で、開花の時期には城内の通路にまっすぐ並ぶ、濃い桃色の桜並木がきれいな場所である。
城内のずっと奥まで進むと、サッカーボール大の黒い
「来たか。お前らが言うヒンガーホールってこれのことだと思うが、あっているか?」
ナビーが近づいて観察し始めた。
「私がこの世界に来た時に渡った空間と、同じ感じがするさー。これがヒンガーホールで間違いないと思うよ」
「でも、これを消すにはどうしたらいいんだ? 攻撃して壊したりできたらいいんだけど」
「異世界をつなげるのは、こっちのセジとあっちのセジを
キジムナーが開けたところに行き、大きなガジュマルを出現させた。
「それならオラたちにまかせろ。マジムンは自分以外のものからセジを吸い取るから、オラたちがセジを
ミシゲーとウッシーも俺たちの役に立てると知り、張り切ってキジムナーと一緒にセジを吸収して、放出し始めた。俺たちの出る幕はなさそうだ。
琉美がつぶやいた。
「在来マジムンと仲良くしていてよかったね。もしかして、アマミンたちはこれを見越していたから友達になるようにって言ったのかな?」
「そうかもしれないねー……」
ナビーの声が弱々しかったので確認してみると、下を向いて少し涙目になっていた。
「ナビー、どうしたんだ?」
「このヒンガーホールがなくなったら、この世界での私の役目は終わるからさー……もう、シバと琉美ともお別れだね」
『!』
ナビーが元の世界に帰ることが頭の中になかったので、俺と琉美は衝撃を受けた。
ナビーがこの世界に来た理由は、この世界に
それに、元の世界は
琉美は目にいっぱいの涙を蓄えている。
「わたし、まだナビーと仲良くなって3か月しかたってないんだよ! もっと一緒に戦いたいし、遊びたいよ!」
「私も、もっとこの世界でこの生活を続けたいと思っているけど、私を育ててくれた人たちがあっちの世界で戦っているから、帰らないといけないわけさー」
俺も何か言わなくちゃと思っていると、ガジュマルの上でセジを上空に放出していたキジムナーが大きな声で叫んだ。
「お前ら、穴を見ろ!
小さくなっていくはずだったヒンガーホールが、だんだん大きくフラフープ大になった。
そして、中からヒンガーセジがあふれ出し、崩れた城壁の石に次々と入っていった。
ナビーは表情をこわばらせ、大声で俺たちを戦いの気持ちに切り替えさせた。
「みんな、戦う準備しておけよ!」
ステータスを確認する。
Lv.51
HP 620/620 SP 550/550
攻撃力 535 守備力 760 セジ攻撃力 390 セジ守備力 690 素早さ 570
特殊能力 中二病
身代わり
特技
ヒンプンシールド Lv.10 セジオーラ Lv.7
崩れた石垣の石が、一か所にどんどん集まっていくと、5mくらいの高さのマジムンが現れた。
「ゴーレムみたいだな。ナビー、やっぱりあれは強いのか?」
「この世界で戦った、
琉美がボソッと言う。
「ミシゲーみたいに弱ければいいんだけど」
「琉美様、ひどいシャモよ! ってウッシー、何するシャモか!?」
「すごいかっこいいモー! ゴーレムだモー!」
ウッシーは
「
石垣ゴーレムの胴体にものすごい頭突きが入った。だが、傷がつくこともなくウッシーは元の位置まではじかれた。それなのにウッシーは楽しそうにしている。
「やっぱりゴーレムは硬いモー!」
ウッシーはゲームなどを知っているので、ゴーレムをみてテンションが上がっている。
体勢を整えて、もう一度ぶつかっていった。
「ウッシーだいぶ強くなったみたいだな。全然効いていないけど……」
ウッシーが2度目の攻撃をしたとき、微動だにしなかった石垣ゴーレムが動き出した。
頭の上で両手を組み、ウッシーめがけて振り下ろした。
「ヒンプンシールド!」
ナビーが設置したヒンプンシールドは粉々に壊されたが、ウッシーは間一髪で逃げていた。
その時、キジムナーが声をかけてきた。
「どうするか? オラがやっつけてもいいぞ」
正直ありがたいが、この戦いが最後になる可能性があるので自分たちで戦いたい気持ちでいる。
俺と琉美が見つめるとナビーがキジムナーに返答した。
「こっちは大丈夫だから、ヒンガーホールの方お願いしていいねー? こいつ倒しても他の奴に出てこられたら大変だからよ」
キジムナーは手で合図をしてセジの放出をつづけた。
ウッシーはミシゲーと一緒に攻撃しているが全く歯が立たないようだ。
「おい、お前たち。後は俺たちがやるから戻ってこい!」
「わかったモー。強いから気を付けてモー!」
俺とナビーが前に出て、琉美と白虎が後ろでサポートする陣形をとる。
相手の特徴を知るために、こっちから仕掛けてみることにした。
遠距離攻撃の
「防御力が高すぎるな。それに、攻撃をしてこないのが不気味だな……」
俺の言葉を理解できるのかわからないが、石垣ゴーレムの手に大岩が現れ、こちらに向かって投げてきた。
俺とナビーは後ろに琉美がいる事が頭によぎり、十分避けられるがその選択をしなかった。
「ヒンプンシールド・
「
俺が設置したヒンプンシールドをすべて壊されたが、失速した大岩をナビーが
ナビーが半分後ろを向いて指示を出す。
「琉美! 私たちはカバーする余裕がないから、白虎に乗って逃げながらサポートしてちょうだい!」
「わかった! 回復はこっちで勝手にやるから、2人は戦闘に集中して」
琉美は白虎に乗り、ムチをもってさらに後方に下がった。
俺とナビーは、
「あいつ、攻撃も守備も半端ないな。至近距離の攻撃じゃないと、ダメージ与えられないのかも」
「そうだね。ダメージ覚悟で距離を詰めて、2人で
左右から回り込みながら走りだすと、石垣ゴーレムはまた大岩を投げてきた。
近づくほど速くなっているが、セジオーラを使っているのでよけることができている。
石垣ゴーレムの腕が届きそうな所まできて2人とも足を止めると、両腕を振り下ろされた。
軽く後ろに飛んで攻撃を避け、すぐにナビーと
『
ナビーの
ダメージを与えられているようで、ほんの少し体の石が減っているように見えた。
「よし、いい感じだね! このまま打ち込むよ!」
ひるんでいるうちに直接攻撃をしようと、俺はセジ刀・
持っていた武器で、各々振り払えるだけ振り払ったが、至近距離でたくさんの石が飛んできたので、2人ともかなりのダメージを食らってしまった。
「うぐっ。いったんひくよ!」
すかさずステータスを確認しておく。
HP 237/620 SP 480/550
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