夢と幻想、酒呑みの見る夢 (15分間でカクヨムバトル)

春嵐

01

 なんとなく、誰かに逢いたくて。


 わたしは。夢を巡り続けた。


 生きていた頃のことは。あんまり覚えてなかった。


 たぶん、普通の人生で。普通の仕事で。普通の生活で。横断歩道渡ってるときに、急に記憶が途絶えて。


 そして、今。夢の中にいる。


 走馬燈は、もう見あきた。普通の人生なんて。振り返っても。特になんの意味もない。


 それよりも。


 人の夢を、見るのが好きだった。


 ここには。


 人の夢が、たくさん集まっている。


 たくさんの夢があった。色とりどりの、言葉で表現できなさそうな極彩の夢とか。白と黒の、昔の映画みたいなノスタルジックな夢とか。怪獣とヒーローが戦う夢もあった。動物園でカピパラを眺める夢も。


 たくさんの、夢があって。


 みんなみんな。生きている。記憶を整理して。そして、また今日が始まる。


 わたしだけには。今日がない。


 いつなのか分からない終わりを。たくさんの楽しい夢の中で。待っている。

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