第26話 新たな出会い
※申し訳ありません。アップする話を間違えてました!差し替えます。
「あ、忘れてたー!」
ギルドを出たところでくるりと方向転換し、再びギルドの中へ。
ファイアバードとスライムの登録を済ませてなかった!
さっそくミリアムに登録してもらい、再びギルドの外へ出る。
この時俺は、ちゃんと確認しておくべきだった。戻った時、まさかの事態になっていることをこの時の俺は知る由もなかったのだ……。
◇◇◇
ギンロウとかけっこしながら、ザ・ワンへ向かった時と同じ道を進む。
昼過ぎにはザ・ワン、街、山へ向かう分岐点に差し掛かり、迷わず山の方向へ舵を切る。
昼は街で買ってきた軽食で済ませ、夜まで歩き続けた。
ずっと動き続けた甲斐があってか、真っ暗になる頃にようやく山のふもとの小屋まで辿り着く。
明確に山の入り口というものはないのだけど、目安となる場所がこの小屋なんだ。
ここは、冒険者や
無料で利用できる施設なのだけど、誰もが利用した後、薪や毛布なんてものを残していく。
こうして脈々と利用者が残して行った物資によって、新たに小屋を建てたり、ボロボロになった小屋の修理が行われたりなんてこともされていた。
俺は大工作業の技術を持ち合わせていないから、前回来た時には竈に使う木炭とか暖炉用の薪なんかを補充していた。
小屋は向かい合わせに二棟並び、間が広場になっている。
広場には竈が四つ組まれていて、誰でも使っていいことになっているんだ。
「誰もいませんかー?」
声を張り上げ、小屋に動きがないか確かめる。
誰もいないようだな。よおっし、貸し切りだー。
荷物を竈の近くに降ろそうとしたら、ファイアバードが飛び上がる。
翼があるんだから、自分で飛んで先行してくれてもいいのに。なんて思わなくもないけど、リュックの後ろが彼の定位置となっている。
特に困ることもないし、別に構わないか。
小屋の上にふわさと降り立った赤い姿を見やり、苦笑する。
『イチゴ』
「さっそくかよ。せっかくだからみんな揃って食べないか?」
『仕方ないナ』
「お、ロッソにしては珍しい」
『たまにはナ』
ロッソは放置してある丸太の上までのそのそと移動し、顎をペタンと丸太につけて目を閉じた。
お座りして待つギンロウを横目に竈に薪をくべ火を起こす。
今日だけは街から持ってきた食材がある。翌日からは狩りをしながら現地調達予定だ。
この大所帯だと食糧を持ち歩くだけで結構な量になるからなあ。その場で補充しつつ移動する方が移動がしやすく楽だ。
何より、ギンロウ達と一緒なら狩りをするのも楽しいからさ!
ギンロウの鼻とロッソの目があれば、すぐに獲物が見つかるというのも大きい。
ガサリ。
その時、小屋の裏手辺りで小さな物音がした。
先客か、それとも俺たちの気配に惹かれてモンスターがやってきたのか。
いつでも動けるように腰を浮かせつつも、いい具合に焼けてきた肉をひっくり返す。
その間にもこちらに気配が近づいてくることを感じとる。
この足音……人間か。
それ以外にもう一体。こちらは獣系の何かだな。
俺もロッソやギンロウほどじゃあないけど、見えずとも近くにいるのなら何となくどんな生物がいるのか分かるようになってきた。
堂々とした足取りで向かってくるところから察するに出会いがしらに攻撃してくることもないだろう。
肩の力を抜き、二つの気配が姿を現すのを待つ。
やってきたのは、変わった格好をしている冒険者らしき獣人と彼の獣魔だと思われる二首の黒犬だった。
紺色のマフラーみたいな布で首元から鼻の上まで覆い、ローブを羽織っている。ローブの下には灰色に染めた革鎧を着ている。
歳の頃は目元しか見えないから判別し難いけど、20歳前後かな?
そんなことより、獣人と言えば獣耳である。
さてそんな注目すべき獣耳だけど、狐の耳のような形をしていている。色はギンロウに似て銀色に黒が混じっていた。ついでに、目の色は黒。
ふさふさしていて、羨ましい……。
何で俺は獣人に生まれ変わらなかったのだろう。獣耳があれば、いつでもどこでもモフモフし放題じゃないか。
一方、彼の連れている犬の種族は実際に見るのは初めてだけど、有名な獣魔だ。あれは二首の犬オルトロスで間違いない。
思ったより大きくは無いんだな。ギンロウより一回りほど大きな体躯で、ドーベルマンのような短い毛をしていた。
あれが、かの有名なオルトロスかあ。テイマーの間では憧れの獣魔だそうだ。
もっとふさふさしていたら、より素敵なのに。
いやでも、毛の長さには貴賎なんぞない。毛皮とは尊いものなのである。
「大声で叫んで何事かと思ったが、のんびり食事とは随分なものだな」
不機嫌そうに腕を組み、出会ってそうそう苦言を呈する狐耳の獣人。
「確かにモンスターを呼び寄せてしまうかもだもんな。ごめん」
念のためにと思って呼びかけたのだけど、正直小屋の中に人の気配は感じなかった。
みんなで一緒に旅に出てテンションが上がっていたことは否めない。モンスターがくるならきたで、肉ゲットだしなんて軽い気持ちだったんだ。
ペシン。
いつの間にか俺の肩まで登ってきていたロッソが、長い舌で俺の頬を叩く。
『(こいつと)いっしょに食べルのだロ』
「ロッソ。あの時から既に気が付いていたんだな」
こ、こいつう。教えてくれてもいいのに。
いやでも、叫んだあとだったのでいずれにしろ一緒のことか。
「喋るペットリザードにそっちはフェンリル。小屋の上に留まっているファイアバードも君の獣魔か?」
「うん。俺の可愛い相棒たちだよ」
「可愛い……とは。まあいい。これほどの獣魔を連れている君ならば、君なりの美学があって当然か」
「お詫びと言っては何だけど、一緒に食べないか?」
「いいのか? さっきから肉の焼けるにおいが溜まらなかったんだ」
「せっかくだから、君の相棒の分も用意しようか?」
「それには及ばない。クレインの分は持ち合わせている。彼の主人として私は私の責務を果たす」
何か心なしかペットに対する気持ちが重いような……。彼は彼で俺の流儀に口を挟まないと言っていたし、俺も彼のやり方には触れずにおこう。
多少の余分な食糧なら持ってきているから、使ってしまってもいいんだけど。
「あ、自己紹介が遅れたな。俺はノエル。こっちはロッソ。それにギンロウだ。ファイアバードはまだ名前をつけていない」
「名前を……いや。私はラージプート。ストライカーだ。こちらのオルトロスはクレイン。よろしく頼む」
「肉は焼きながら、一緒に食べよう。先にクレインの分を用意してもらえるか?」
「食べながら準備をするさ。君にいつまでも待たせるのも悪い」
「ほら、ロッソも一緒にって言ってるし。せっかくだから全員揃って食べ始めようよ」
「ホストは君だ。承知した」
含みのある言い方をしたものの、獣人の冒険者――ラージプートはオルトロスの食べ物を準備しはじめた。
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