第51話 夢の続き 黄金の穂の波 小さな楽園 第一部 完

潜水服をまとい 水中に潜る 長い地下水路

ところどころに崩れた岩の障害物


そして・・薄暗い地下水路から上がり

その目に見たものは


ドームの透明なガラスファイバーの天井から降り注ぐ

黄昏の光と・・・


ドームの中の 穀物の畑の金色の海だった


そして奥の方では 実をつける木々が植えられて 花を咲かせていた

「これは・・」


「・・・・見事だろう・・ファリ

久しぶりだ 元気だったか?」


誰かが 水路近くの 畑の中に横たわっている


手持ちの服を布団代わりにして その身を横たえ

それから 脚には服が包帯のように巻かれている

赤い血がところどころに染まっていた。


ぐったりとしていた・・。


俺は 慌てて彼に駆け寄り 抱きしめる

「レーヴ!レーヴ!!」

うっすらと瞳を開けるレーヴ


やつれてはいたが・・日によく焼けた顔で にこりと笑う


昔と変わらない笑顔を見せている

「迎えに来てくれたんだ・・」レーヴは笑う


「ああ・・・その脚?脚の怪我 獣にやられたのか?」


レーヴは脚を手持ちの服を包帯代わりにして巻いていたのだが 

包帯代わりのその服は血が滲んでいる


「そうだよ・・完全に覆われたドームだから

獣は紛れ込んでくるはずもないとタカをくくってたら この有様さ

まあ 偶然たまたまだろうけどね・


どうやって潜り込んだかは 

今度調べるけど 穴でも掘ったか 地下水路のどちらかだろうね」

ため息をつくレーヴ


「すごいだろう・・この畑・・麦に

水田を必要としない品種改良した米だよ」


「塔の入り口は壊れてしまったけれど 地下水路は無事だったから

こうして無事なドームで畑やら木々から食物を収穫していたんだ


奥にはオレンジとか柑橘類にナツメヤシ 葡萄 

バナナやパイナップル

トウモロコシやら 胡瓜やトマト・・


カカオやらコーヒー豆に


品種改良タイプのプラム(梅)もある

プラム(梅)は 甘くしたり 地球の日本風に酸っぱく漬け込む

米に合うんだ・・酸っぱくしたものは 

日本風に発音するとウメボシとか言うらしい」


「で・・・話が戻るけどね

獣は倒して 獣の屍骸は 僕のお腹に納まったけど

この怪我ともなると 長い地下水路を渡るほどの体力に自信がなくてね


止血はしたけど 当然傷口が開くだろうし・・

おまけに 通信装置は獣の戦いの最中 壊れてしまって」


「とりあえず ここで休んでいた・・

行きと違って 帰りはゆるやかとはいえ 逆流を泳ぐことになるから・・。」

レーヴはため息をついた


「・・体内に毒を持ってる獣でなくて良かったな」

「え!いるの!ファリ!」とレーヴ


「いるの・・って・・?何年 この惑星に住んでいるんだ?

まったく のん気な奴だ・・」と今度は俺がため息をつく


「あはは・・

まあ・・誰かが迎えにきてくれると思ってたから 

こうして 水路の近くで過ごしていたのさ


水陸両用の乗り物は 今は故障中だから

もっとも 地下水路には岩の障害物もあるから

今は難しいかな


いざとなったら 傷が癒えるまで 荷物を運んでもらって

キャンプしながら ここで過ごす事になるかな・・なんて考えていたけど・・」


「まさか君が・・ ファリが来てくれるとはね・・」

彼は涙ぐみ 両手を広げた


そして 俺は 彼を再び 強く抱きしめた 


「ああ 迎えにきたレーヴ 話したいことも山程ある」

「こっちもだよ・・ファリ」


透明なドームの天井から黄金色の光が注ぎ 奥の木々やこちらを

照らして その黄金色に染め上げる


豊かな実りの麦や米の穀物達の金色の穂がゆらぐ・・。


第一部 FIN  第二部に続きます☆

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