第26話 村にて

それから無事に砂漠を渡り


俺達の村に戻ると 彼等の兄ナギ・ナジュアナリは

二人を・・大事な自分の妹と弟を抱きしめた


「兄ちゃん!」「ナギ兄ちゃん!」

「有難う なんて御礼を言ったら・・」

彼ナギ・ナジュアナリの瞳から大粒の涙がこぼれる


「これからは 俺達の部族に君ら兄弟を迎える

今は余計な心配をせず ゆっくり養生してくれ

もし、産まれた故郷の村を捜したいなら協力する」


「そのうち、きっと親父や祖母たちに こき使われるに違いないから

早く体を治した方がいい」俺はぶっきらぼうに言った


するとレーヴが


「ファリの奴 照れてるだよ

とにかく 今は傷を治す事だよ ゆっくり静養しなきゃ」


「・・別に・・」

俺はむくれて 呟く


「ファリは すごかったよ!ね!」

「うん!レーヴ兄ちゃん!」


「ファリ兄ちゃん 次々にあいつ等を倒したんだ!」


「あ・・妹さんや弟さん・・ 

アファイアちゃん とウインダムちゃんは こっちで遊ぼうね!

君達のお兄さんは まだゆっくり寝てないと 駄目なんだから・・ね」


明るく能天気と言える程に笑顔で小さな子供達に笑いかける

レーヴ

「・・・」むっつりとする俺


「レーヴさん いい人ですね」とナギ・ナジュアナリ

「そうだな」

いつの間にか笑みがこぼれた



それから数日後の事


家の近くの水場で 妹と二人 水を汲みに来て

のんびりと話をする


妹のリリーシュは笑う「ファリお兄ちゃん」 

水色の髪 白い肌 虹彩を伴う黄昏色の瞳 体の手の甲には虹色の鱗が少々

時折 生まれる伝説の天空人の姿をした妹リリーシュ


髪は一部を頭の上の左右の両方に 小さくお団子にして 残りは肩より長めにして

ゆるくウエーブを描いている・・祖母が髪を整えてくれたらしい


彼ら天空人の記録によれば 最初には 数十人しか 

俺達の種族と結婚したものはいなかったはず

なのに・・


それでも 何故 俺達の種族の中に 

彼らの言うところの 劣性遺伝子にあたる

異星人(天空人)との混血の子孫が多く出現するのかといえば


天空人・・


つまり 連邦の異星人の中には 

連邦の許可を得て入り込んだ普通の商人達も多くいて 


レアメタルなどを採掘中に 

情報が混乱して宇宙船(天空の箱船)に乗りそびれ


または・・

使命感で ギリギリまで残り 磁気嵐で逃げそびれ

多くが この地で 俺達の種族の中に同化していった者もいたという


使命感で残った連邦の者達のおかげで

有難い事に 

この地の水の塔は守られたのだ

(初期の時代には 東だけでなく 南の塔に西の塔もらしい)


にっこりと・・その子孫・・天空人の姿をした 愛らしい妹は笑う


「リリーシュ? どうした」   「あのね私・・」


「あの天空人・・異星人の子

レーヴ・クリオス・ベネデクト・アレクサンダルと 

今度 近くの水晶の谷に遊びに行く事になったの・・」頬を赤らめて言う


「ああ・・彼ね

正式名は長い名前だよな・・


父親は 

ピエタ・リブラ・ベテルギウス・アレクサンドル

こっちも長い・・・」


妹は 幼い時分に足に深い怪我をして以来

その傷は治ることはなかったのだが 

彼らの一人 医師が 妹の足を完全に治癒した


淡い青色の肌と銀色の髪に長身で素晴らしいプロポーションを持つ 

女性のドクター 

ドクター・ドロシー・スピカ・オズ


肩先までの緩やかなウエーブのかかった銀色の髪がゆらぐ

蜂蜜色の瞳を輝かせて 彼女は 微笑みながら言う


「もう 大丈夫よ リーシュ ご家族の皆さん 」


「怪我をした時に 骨が変形して

そのままになっていたの・・でも治療して骨の継ぎ目に

人工骨を移植したから もうすぐ走る事も出来るわよ」


彼女は 星の箱舟(宇宙船)の医療室で 

そう言って極上の笑みを浮かべて微笑んだ


近くには 先日の生贄騒動の彼

ナギ・ナジュアナリもいた


ナギ・ナジュアナリは俺やレーヴを見ると嬉しそうに笑いかける

彼は最近 よくドクター・オズの手伝いをしている


ナジュアナリの妹や弟


アファイアとウインダム


ウインダム

弟は 俺達と同じ姿で 本来の砂漠の民の姿

黒髪に浅黒い肌・・赤みを帯びた薄茶色の瞳


妹は兄ナギ・ナジュアナリと同じで

天空人の瞳と手の甲に少々の鱗を受け継いだ

アファイア

面立ちは二人とも 兄ナギ・ナジュアナリに似て

素晴らしく

愛らしい上に 綺麗だった


兄と同じ青紫の虹彩のある瞳をした可愛らしい女の子アファイアも

二人とも ずっと兄である彼ナギ・ナジュアナリのそばから 

離れようとしなかった


彼等ナギ・ナジュアナリ達の産まれた村は 探索の結果

南の村の奴らの襲撃と その後の水不足で

生き残った村人は遠くに移動した事がわかった


わずかばかり残った村人は後に 俺達の部族の村と合流する事となる


それから・・ドクター・オズの方だが


他にも 俺の部族や近隣の友好的な村人たち


戦いやモンスターに襲われて 

怪我をしたもの達の治療をしてくれた


中には たいした怪我でもないが 通いづめる者もチラホラ

美しい女性ドクターに気があるらしい


彼女が 彼等の組織(連邦)の一員

この村の部族の戦士の一人と結ばれたのは・・ずっと後の事


彼女とナギ・ナジュアリとの会話を偶然 聞いてしまった事があった


荷物を届けに医務室へ行った時である


「ナギ君は 中性 両性ね 君自身は気が付いてたわね」


「・・・・はいドクター」顔を赤らめてナギが答えてた


ナギが あの綺麗なナギが半分 女の子!

慌てて俺は立ち去った

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