第15話:巫女衆選抜

 石姫皇女に生ケーキとアイスクリームケーキと料理を強請られてしまい、手元にある金が徐々に減ってしまった。

 4万8910円残っているはずの金が、2万円少しになってしまった。

 注文した商品は届くまでの間は、どうしても日本の時間を進めなければいけないし、アルフィが塩と小麦を売る時間も異世界で進めないといけない。

 その所為でドンドンと手元のお金が減ってしまったのだ。


「劣化しそうな商品と、盗まれると困る商品は境内に置いておく。

 もし村が奇襲されるような事があれば、迷わずに境内に逃げ込みなさい。

 いいですね、分かりましたね」


「「「「「はい、配祀神様」」」」」


「「「「「ご厚情ありがとうございます、女神様」」」」」


 配祀神様を演じて言葉遣いが優しい時があるが、基本は河内のおっさんだ。

 長老を筆頭に、廃鶏を運んでくれた氏子衆が一斉にお礼を言ってくれる。

 ライラの提案で、常に女神を立てて俺がやりやすくなるようにしてくれているようだが、そんな事は心の読める石姫皇女はお見通しだ。

 だが、いちいち人間ごときに内心など気にしないのか、まるで愚者のようにライラの思い通りに動きてくれている。

 もしかしたら、本当に慈愛に満ちた女神で、人間の愚行や下劣な内心を許してくださっているのだろうか、よくわからん。


「今日も料理を教えるから、ライラを筆頭に巫女衆は集まってくれ」


「「「「「はい」」」」」


 既婚未婚を問わず、美醜も関係なく、料理のできる女性に集まってもらった。

 毎日三度以上も石姫皇女に料理を作るのは面倒だから、巫女衆に料理を覚えてもらうようにしたのだが、これがなかなか難しい。

 現代日本の料理器具を使わずに、異世界の道具で料理を作るのはとても面倒だ。

 だがライラ以外の巫女衆は、日本の料理器具が怖くて使えない。

 正直とても困っていたのだが……


「ではもっと幼い子にやらせましょう。

 幼い子なら恐怖を感じずに覚えてくれると思いますから、配祀神様」


 ライラの提案は的を得ていたようで、幼い子供達の方が恐れずにやってくれた。

 この世界でも平和な時代には10歳くらいから商家や職人に弟子入りして働いていたようで、村で働いている子供はもっと小さい子ばかりだったそうだ。

 もっとも、森に入って働ける子や農作業を手伝える子は、村に残っている。

 特に戦争が激しくなって都市に働きに行けなくなった子は、貧しい村に残って生きるしかなかったようだ。

 死ぬ可能性の高い交易を行う若衆は、農地のない次男三男が多いのも、それが理由だと聞かされて胸が痛くなった。


「そうだ、鉄製の武器なら無敵になれるよな。

 鉄の斧やノコギリがあれば森を開拓して農地を増やす事もできる。

 次で大儲けできたら鉄の道具を大量に買おう」


 俺は思わず言葉に出してしまっていた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る