第8話:交易・アーサー視点

 皆の祈りが天に届いたのか、女神様と配祀神様が来てくださった。

 これで大陸から戦争がなくなり、飢えなくてすむと思ったのだが……

 爺さんとライラの話では、女神様は人間などに興味がないそうだ。

 ただライラの話では、配祀神様は俺達を想ってくださって、女神様に色々と提案してくださっているようだが、女神様は取り合ってくださらないという。

 爺さんはそれでも女神様を敬い信じろというが、納得できない。

 一方ライラは、女神様を敬って怒らせないようにしつつ配祀神様を頼れという。


「若衆頭、店が見えてきました」


 俺の率いる戦える若衆は47人、全滅したら村の未来は暗い。

 だが、このままなら年寄り連中が森に入ることになっていた。

 年寄り連中は、自分達が森で死ぬ事で村を生き残らせようとしていた。

 俺達若衆は、長老達を見殺しにするくらいなら、女神様の教えを破って隣村を襲い食糧を奪う心算だったのだ。

 だから、女神様と配祀神様のどちらを本当に敬うかは簡単に決断できた。


「お前達は小麦粉とを塩を護っていろ、交渉は俺と補佐がする」


「「「「「はっ」」」」」


 俺の次席になっている副若衆頭に任せておけば、少々の敵なら撃退してくれる。

 それにここは、大都市ツベカウで一番の大商店の前だ、襲ってくる奴がいるとはおもえない、が、油断は禁物なのも確かだからな。

 これも配祀神様の教えで、力のある大商人を味方に付けろという。

 貴重な荷物を持って往復していると、必ず盗賊団や武装した村の襲撃を受ける。

 多少値段は下がっても、その危険を力ある商人に肩代わりさせろという教えだ。

 確かに死んだ人間はもう帰ってこない、残される家族の生活も厳しくなる。

 命は金に代えられるようなものではないのだ。


 ★★★★★★


「ほう、これは確かに素晴らしい、いい商品になりますな。

 それで、これを幾らで売りたいと申されるのかな」


「この塩と小麦粉は、我が村が女神様と配祀神様に祈り賜ったモノだ。

 安過ぎる値で売ったら天罰を受けてしまう、が、今後仕入れに村まで来てくださるのなら、それ相応の値で売ってもいいと神託を得ている。

 アルフィ殿が、平和と豊穣の女神様と戦いの配祀神様から神託されている以下の値をつけるようなら、ゲーラに行って売れと言われている」


「それはそれは、難しい指示ですな、そんな所まで行くとなると、必ず途中で盗賊や村人に襲われますぞ」


「それは大丈夫だ、私は配祀神様から神器を貸し与えられている」


「ほう、見た事のない武器だと思っていましたが、神器でしたか、それは凄い」


 さて、配祀神様の指示通りにやってみたが、どうなるだろうか。

 まあ、確かに、俺が商人でも、これだけの小麦粉と塩を作る村の場所は確認したくなるだろうし、永続的に取引したくなるのも確かだ。

 神の国で作られた、初めて見る形の金属製武器も気になるだろう。

 少なくとも村に戻るまでは安全が確保できると思うのだが……

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