第8話

「何事だ!」


「ロボの合体が始まりました!」


「止めろ」


「無理です!」


からくり仕掛けのようなそのシステムは、移送路を伝い落下スピードを利用して、迅速な合体を目的としている。


一度始まってしまえば、誰にも止められない。


操縦室の横を巨大パーツは落下していく。


その轟音が壁伝いに響く。


「あと10分、10分でいい。その間に合体を止める方法を作り出せ」


広場に集まり始めた市民を、警視庁職員が移動させていた。


爆発物処理班を装った部隊が展開するその足元では、すでに合体が始まっている。


庁舎を揺るがす振動に、群衆は冷静さを失った。


「どうすんだよ!」


次々とパーツが通り過ぎてゆく。


その過程が丁寧にモニターされている。


緻密に計算されたそのプログラムは、残り8分での合体完了を告げていた。


各所で始まったパーツの移動は、地下のロボット合体収納庫を目指す。


「……やれと言われれば、出来なくてもやるんだろ……」


そうだ。


やるんだ。


俺は指をキーボードに乗せた。


それに触れた指先が、脳に指示を求めている。


画面に表示されているのは、旧式の操作マニュアルだ。


ページをめくる。


あぁ、隊長の言った通りだ。


どこをどう操作しても、全て弾かれる。


何も言うことを聞いてくれない。


こんなもの、何の参考にもならないじゃないか。


どうして隊長は、あの隊長が、こんな無意味な仕事を俺に……。


ふとマニュアルページの一点に、視力の全焦点は合った。


「隊長! ロボット左足かかと部分、緊急非常停止ボタンがあります!」


「場所は?」


「地下駐車場、2B15のA、壁の中!」


通信が切れる。


「俺たちも行こう」


立ち上がろうとして、アラームが鳴った。


「操縦室、移動を開始します。シートベルトを着用してください」


ガタリと部屋ごと前方に移動した。


合体進行画面に映る操縦室が、オレンジに変わっている。


それはゆっくりと移送路に移動すると、突然落下を始めた。


操縦桿が座席の下から現れる。

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